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独自開発のディスクリートDACを搭載

マランツ「SA-10」レビュー - 音の正確さとエモーショナルな表現力を兼備した旗艦SACD

2016/10/26 山之内 正
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マランツ「SA-10」(関連ニュース)は、同社が独自開発したディスクリートDACを搭載したフラグシップSACDプレーヤーだ。コストを度外視してすべて音の入り口から出口までをオリジナル技術で完成させ、マランツサウンドの集大成ともいうべきサウンドを実現した本機を、オーディオ評論家・山之内 正氏が分析する。

「SA-10」600,000円(税抜)

■ディスクリートで構成した独自のD/Aコンバーターを搭載

ディスクプレーヤーの技術は熟成が進んでいるので、もはや本質的な進化は起こりにくいと考えるのが普通だ。だが予想に反して、画期的な技術を新たに導入した製品が相次いで登場し、特にハイエンドのカテゴリーでは話題作が目を引く。そして、それら話題の製品はD/Aコンバーターを中心としたオーディオ回路に工夫を凝らすことで、さらなる音質改善を図った例が多い。ディスクプレーヤーのさまざまな構成要素のなかで、唯一、D/A変換回路こそ、いまも進化し続ける領域なのだ。

マランツが満を持して投入したDAC内蔵SACDプレーヤー「SA-10」も、D/A変換回路に独自のアイデアと技術を集約した点に新しさがある。フラグシップ機にふさわしい音質を実現するために、既存技術の枠組みにとらわれることなく、大胆な手法を投入。その筆頭が、ディスクリートで構成した独自のD/Aコンバーターを導入したことだ。

筐体内部

デジタル信号をアナログ信号に戻すD/A変換回路は、デバイスメーカーが設計した専用チップを中心に回路を構成するのが一般的だ。複数のメーカーが多機能で高性能なDACチップを開発しており、オーディオメーカー各社はその選択肢のなかから製品ごとに最適なデバイスを選ぶことで、目指す音に近付ける努力を重ねてきた。

しかし、既存のDACを使う限り、その努力にも限界がある。DACで音質がすべて決まるわけではないとはいえ、音の支配力はかなり強く、回路設計にも影響が及ぶ。それ故に、もしもDACを独自に設計することができれば、とことん音を追い込むことで、目指す音への距離が一気に縮まる可能性が高い。

背面部

マランツはこれまでもDACの選択に強くこだわってきたし、周辺回路の設計においても、できるだけ自社開発の比重を高めることで独自性を追求してきた。具体的には、汎用DACの内蔵デジタルフィルターをあえて使わず、自社設計の回路で音質改善を図ったり、DACの電流出力を取り出して独自のI/V変換回路に受け渡すなどの手法が音質改善に成果を上げている。

コストや利便性で汎用DACを選ぶというより、使いこなしの自由度が高く、音の良いデバイスを選ぶことを重視してきたわけで、その姿勢が今回の完全オリジナル開発を促したと見ることもできる。

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