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公開日 2026/01/22 06:35
制作者の意図に反するフレーム補間を防ぐ

<CES>Dolby Vision 2、その進化を体験!制作者の意図を視聴者まで届ける“画質確保プログラム”

麻倉怜士

今回のCESでは、昨年秋に正式発表されたDolby Vision 2についての詳細も明らかにされた。アメリカのメジャー配信サービスPeacockが、Dolby Vision 2のサポートを表明。コンテンツ制作者の意図を視聴者に届けるその技術の詳細を麻倉怜士氏が解説する。



ラスベガスのカジノホテル・パークMGMの敷地内にある劇場「Dolby Live」にてDolbyのデモンストレーションが行われた


新世代のHDR技術Dolby Vision 2の意義


昨年の9月に発表された新世代のHDR技術Dolby Vision 2を、ようやく体験できた。現行のDolby Visionから約10年が経過、その改良版として登場した。VHS、DVD、BDなどのパッケージメディアは約10年ごとに新フォーマットが出るのが恒例になっていたが、HDRフォーマットも同じ道を辿った。


つまりこの間に普及が進み、それと同時にさまざまな改善点が、そのフォーマットを使うコンテンツ側、メーカー、そしてユーザーから要望として寄せられる。それを蓄積して、このタイミングで第2世代に進化したということである。


CESでのDolbyのプレゼンテーションでは、アメリカのメディアコングロマリット・NBC Universalのスポーツ配信サービス「Peacock」の発表が注目を浴びた。現在Peacockはスポーツ中継をDolby VisionとDolby Atmosで配信しているが、Dolby Vision 2に惚れ込み、今年の後半にDolby Vision 2に対応すると発表したのである。



NBC Universalのグローバルビデオエンジニアリング担当シニアバイスプレジデント、David Bohunek氏(中央)は、「Dolby Vision 2はスポーツ番組に多大なアドバンテージをもたらします」と語った


そのココロは何か。まずDolby Vision2とはなにかを解説しよう。


Dolby Vision 2は、コンテンツとテレビの間を有機的に結ぶ、コンテンツ正確性の再現を追求するためのフォーマットだ。これまでのDolby VisionはHDRのフォーマットだったが、Dolby Vision 2は、もっと幅広く、家庭内のテレビまで巻き込んだ、総合的な画質確保プログラムである。


Dolbyはカセットテープ用のノイズ・リダクションの時代から、エンコード/デコードや送り側/受け取り側の相関関係でクオリティを改善してきた。


そのDolby的な送り/受け取りの関係を強化したのがDolby Vision 2だ。もっとも特徴的な機能が、カラーグレーディングでの制作者の制作意図をリビングルームでのテレビ視聴まで貫徹させるための統合ソフトウェア「Content Intelligence」(コンテント・インテリジェンス)である。




テレビ側のDolby Vision2 処理回路「Dolby Image Engine」有り/無し。左が無し、右が有り。やはり階調性、ディテール、色再現が違う




右は制作側のプログラム「Content Intelligence」が「有り」。左の「無し」は盛大に黒つぶれしている。


これまでは、あまりにテレビ側が勝手に絵づくりするので、それをいっさい禁ずる「FILMMAKER MODE」というものが設けられていた。しかし、これは画質調整を厳禁するだけで、デフォルト値をキープさせるものにすぎない。しかし、Dolby Vision 2は、テレビで積極的に狙った画調にするためにアクティブに調整する。つまりリモート・イコライジングだ。


内訳は「Precision Black」「Authentic Motion」「双方向トーンマッピング」「ゲーム/スポーツコンテンツ最適化」など個々のプログラムで構成される。簡単に言うと、コンテンツ側が意図した画調を、リビングルームのテレビにて正確に再現するシステムだ。


例えば「黒レベル」。制作側のカラリストは暗い環境でグレーディングする。でもせっかく設定した黒レベルも、リビングルームなどの明るい環境でのテレビ視聴では浮いてしまう。そこでカラリストが、自分が設定した黒レベルを、再生するテレビ側がどんな照明環境にあっても、同じ見た目を実現するようにテレビを制御する。これが黒のレベルを定義する「Precision Black」だ。


「Precision Black」のメタデータはDolby Vision 2信号として、テレビ側に渡される。テレビに組み込まれた「Dolby Image Engine」が働き、内蔵センサーで読み取った環境の照度データと照らし合わせ、このシーンでは黒が浮くから、もっと黒レベルを下げようと調整させる、という具合だ。


送り側の「Precision Black」とテレビ側の「Dolby Image Engine」が協働で、カラリストが指定した黒レベルを、さまざまな環境下であっても、元通りに再現するのである。設定項目は黒レベルだけでなく、コントラスト、階調、色にも及ぶ。


ここでPeacockの登場だ。NBC Universalのグローバルビデオエンジニアリング担当シニアバイスプレジデント、David Bohunek氏は「暗部の問題が、コンテンツ側でコントロールできるのは喜ばしいことです。特にスタジアムの試合で、屋根の下の影の部分と、フィールドの明るさのバランスを確保できるようになるのは大歓迎です」と、スポーツ専門局の立場からコメントした。



Peacockはアメリカのメジャーなスポーツ配信プラットフォーム。バスケットボール、フットボール、ウィンタースポーツなど幅広いスポーツ中継を手掛けている


制作者の意図に反するフレーム補間を防ぐ




もうひとつ「Content Intelligence」の中で面白いのが、「Authentic Motion」機能だ。24コマの映画を30もしくは60コマにフレーム変換する場合、パンをすると映像がガタつく。それを見た目にスムーズにするフレーム補間機能は、多くのテレビに入っているが、それは常時ONかOFFなので、動きの不自然さや、まるで宇宙遊泳をしているような違和感が発生することもある。



ゲーム画面。ディテール、白側の階調性は、右の「Content Intelligence」が「有り」が圧倒的


「Authentic Motion」は、制作者側が“テレビ側で補間機能を効かせたい時だけ”効かせる機能だ。これにより、制作者の意図を反映しない処理がテレビ側で勝手に実行されるのを防ぐのである。逆に言うと、これまでテレビ側の勝手な補間により、どれほど映画コンテンツが本来意図した動きと異なっていたかということでもある。


テレビ側にはふたつのグレードがある。スタンダードの「Dolby Vision 2」、高級機の「Dolby Vision 2 Max」だ。どちらも「Content Intelligence」「Dolby Image Engine」は共通する。MAXはそれに「Authentic Motion」に対応するモーション処理機能、照度センサーなどが必要だ。


話をPeacockに戻すと、今年の後半に対応するのはDolby Vision 2だけでなく、次世代デジタル放送用の音声フォーマット、Dolby AC-4にも対応する。すでにアメリカ、フランス、スペインなどの放送局で運用されている。圧縮効率が高く、オブジェクトごとに音声を取り出すなど機能もある。


サッカー中継では、アナウンサーの声だけを取り出したり、スタジアムの歓声のみを流す、チームごとの応援アナウンスをするなどが可能。まさにPeacockの業態に最適な音声方式だ。


コンテンツとハードウェアが揃って新しい規格は普及していく。Dolby Vision 2の登場がいまから待ち遠しい。



コンテンツ制作への手厚いサポートもDolbyの強みだ


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