映画『エイリアン』のH.R.ギーガーがデザインした 初回盤の”観音開きジャケット”を再現。 ”ELP”の73年作がMobile Fidelity盤で登場
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作品概要と最新リイシューのポイント
プログレッシブ・ロック界を代表する名バンドの1つ、ELP(エマーソン・レイク&パーマー)の英Manticore(マンティコア)から発表された'73年作「BRAIN SALAD SURGERY(恐怖の頭脳改革)」が、品質に定評がある高音質再発レーベル:米Mobile Fidelityより「通しナンバー」入りの180g重量盤LPとして、2026年盤として新装再発売。9,350円(税込)。
人気・創造性ともに絶頂期を迎えていた名盤
バンド自身が設立したレーベル「Manticore(マンティコア)」からの第1作目であり、セールス面でも前作に引き続き当時英アルバムチャートで2位、そして米チャートでも11位を獲得するなど、バンドがポピュラー性とクリエイティビティの両面でピークを迎えていた時期に発表された、プログレッシブ・ロックの金字塔の一つとして現在でも広く評価されているアルバム。
クラシックと現代電子音楽を融合した超絶技巧サウンド
クラシックとロックの完璧な融合を目指したELPのプログレッシブ・ロックは、イギリスの賛美歌「エルサレム」のロック・アレンジや、アルゼンチンの作曲家アルベルト・ヒナステラ(Alberto Ginastera)の現代音楽「ピアノ協奏曲第1番」を元にした「トッカータ」など、クラシックや現代音楽のアプローチを大胆に取り入れている。
また、キース・エマーソンは本作で、当時まだ開発段階だったポリフォニック・シンセサイザーのプロトタイプ(モーグ・アポロ)をいち早く使用し、分厚く複雑な電子音のアンサンブルを構築した。3人それぞれが持つ圧倒的な超絶技巧の演奏がぶつかり合い、スリリングでダイナミックな展開を生み出している。
トータル性を極めたドラマチックなアルバム構成
攻撃的な楽曲の多い中オアシスの様な働きを見せる、Greg Lake節に溢れたアコースティック・バラード"Still….You Turn Me On"、そしてこれまでのELPの音楽性の集大成と言える、ロック/クラシック/ジャズが融合されたハイテンションな演奏を一貫した緊張感と高揚感の中で聞かせる3楽章構成の大作"Karn Evil 9"(悪の教典#9)に至るまで、ドラマチックな緩急のつけ方、そしてトータル性を有したアルバム構成はまさに非の打ち所がなく、H・R・ギーガーが手掛けた不吉なイメージのジャケット・デザインのも含め、現代でも十分に通用するインパクトと前衛的姿勢が素晴らしい傑作。
マスターはMobile Fidelity独自の新規リマスタリング音源を使用。オリジナルLPの観音開き型変形ジャケットを再現、ジャケット裏面に通しナンバーを印字。
H.R.ギーガーとは
ハンス・リューディ・ギーガー(Hans Ruedi Giger、1940年2月5日 - 2014年5月12日)は、スイス出身の画家、イラストレーター、造形作家である。
SF映画『エイリアン』(1979年・リドリー・スコット監督)のクリーチャーデザイナーとして知られ、映画以外の分野でも幅広く作品を提供している。1980年のアカデミー賞において視覚効果賞を受賞した。
モノトーンで陰影の強い「グロテスクなイメージの絵」を描くことで知られる。頭骨や脊椎などの人間の肉体のパーツと、じゃばら状のチューブなど機械的造形とを融合して構成された、「バイオメカノイド(biomechanoid)、バイオメカニカル(biomechanical)」と呼ぶスタイルの作品が多い。
『恐怖の頭脳改革』のジャケットアートは、人間の頭骨と機械が融合したようなおどろおどろしくも美しいデザインとなっており、アルバムの先鋭的なサウンドを見事に視覚化している。ロック史に残る名盤ジャケットとして高く評価されている。
ギーガーとELPの出会い〜奇才のスタジオで魅了されたメンバーたち
ELPが立ち上げたばかりのレーベル「Manticore(マンティコア)」のマネージャーだったピーター・ズムステグ(Peter Zumsteg)が、当時まだ映画『エイリアン』(1979年)で世界的な名声を得る前だった同郷のスイス人画家、H.R.ギーガーの存在をキース・エマーソンに紹介した。
ズムステグの勧めで、スイスのチューリッヒにあるギーガーの自宅兼スタジオを訪れたキース・エマーソンは、足を踏み入れたギーガーの家で異様な世界を目にする。床から天井まで独自のエアブラシ技法で描かれた世界、ガスマスクが飾られ、トイレには点滴器の刺さった腕の立体オブジェが飛び出しているなど、この圧倒的でダークな世界観にエマーソンは完全に魅了された。
興奮したエマーソンは、翌日すぐにグレッグ・レイクとカール・パーマーに「絶対に彼がやっていることを見るべきだ!」と説得し、彼らをギーガーのスタジオへ連れて行った。最初は少し乗り気でなかった他の2人も、ギーガーの生み出す「バイオメカニクス(機械と肉体の融合)」のアートワークを目の当たりにして圧倒され、満場一致で彼にアルバムジャケットを依頼することが決まった。
タイトルを巡るエピソードとアートワークのコンセプト
実は、このアルバムの初期の仮タイトルは『Whip Some Skull On Ya』という、オーラルセックスを意味する少し下品なスラングだった。ギーガーはこのコンセプトをすっかり気に入り、「頭骨(スカル)」「唇」「男性器」などを組み合わせた不気味でエロティックなデザインの制作を進めていた(実際、オリジナル盤のジャケットには巧妙に男性器のモチーフが隠されている)。
その後、キース・エマーソンから「タイトルが『Brain Salad Surgery』に変更になった」と告げられ、ギーガーはコンセプトが変わってしまうと一度落胆するが、エマーソンが「心配ない、実はその言葉も同じ意味の隠語なんだよ」と説明したことでギーガーは納得し、結果として歴史に残るジャケットデザインが完成した。
レコード会社による物議と原画の修正
ギーガーが最初に完成させた原画(作品名『ELP I』)には、女性の唇の下のあごから首にかけての部分に、ハッキリと男性器が描かれていた。しかし、これを見た配給元のレコード会社(アトランティック・レコード)の重役たちが「あまりにも直接的で猥褻すぎるため、このままでは店頭に置けない」と難色を示した。キース・エマーソンたちは「アートなのだからこのままでいこう」と反発したが、結局はレコード会社の意向に従わざるを得なくなる。
ギーガー自身も修正には非常に不満であったが、最終的にはその部分にエアブラシで光の帯(ハイライト)を描き足し、発光しているようなデザインにぼかして修正した。そのため、現在私たちが目にする流通盤のジャケットは、実は「修正後」のデザインである。ただし、修正後も全体のフォルムとして非常に暗示的でエロティックな雰囲気が残されている。
盗難に遭った幻の原画
『恐怖の頭脳改革』で使用されたジャケットおよびインナーの原画二枚は、プラハでギーガーの個展が開催された会期中の2005年11月5日に盗難に遭い、未だ所在不明のままである。ギーガーの公式ホームページでは高額の懸賞金を提示して、情報の提供と捜索・発見を呼び掛けている。
オリジナル盤「観音開きギミック」の再現性
また、「オリジナル盤のジャケット」にはデザインの修正以外に「物理的な構造」の違いも含まれる。1973年に発売されたオリジナルLPレコードのジャケットは、中央から左右に開くことができるポスター仕様(観音開き・ダイカット仕様)になっていた。
- 閉じた状態: ギーガーの描いた不気味な頭骨と機械のデザイン。
- 開いた状態: 左右に開くと、中から機械に繋がれた美しい女性の顔(ギーガーの当時のパートナー、リー・トブラーがモデルと言われている)が現れるという、非常に凝った仕掛けであった。
後年、CD時代になると、標準的なプラスチックケース(ジュエルケース)ではこの複雑な仕掛けを完全には再現できず、紙ジャケットCD以外では単なる1枚の絵として印刷されることが多くなっている。
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【パーソネル】
キース・エマーソン(キーボード)
グレッグ・レイク(ボーカル、ベース、ギター)
カール・パーマー(ドラムス、パーカッション)
【収録曲】
SIDE 1-1.Jerusalem
SIDE 1-2.Toccata
SIDE 1-3.Still....You Turn Me On
SIDE 1-4.Benny the Bouncer
SIDE 1-5.Karn Evil 9: 1st Impression - Part 1
SIDE 2-1.Karn Evil 9: 1st Impression - Part 2
SIDE 2-2.Karn Evil 9: 2nd Impression
SIDE 2-3.Karn Evil 9: 3rd Impression