“オーディオの夢”を叶えるハイエンドスピーカー。PMC、PARADIGM、QUADRALの「200万級スピーカー」一斉試聴!
「オーディオの夢」を叶えてくれる、憧れのスピーカー
昨今、ハイエンドスピーカーの高額化が著しい。名だたるハイエンドブランドの製品となると、一千万円以上はザラ、フラグシップ付近となれば数千万円や億越えすら当たり前になってきた。
筆者が趣味のオーディオに目覚めた頃……つまり20年ほど前は、ペア200 - 300万円あたりに様々なブランドのフラグシップモデルや、それに準ずるモデルが並んでいたことを考えれば、なんとも隔世の感がある。
では、現代のそうした価格帯のスピーカーは、はたして高額化極まるトレンドに「取り残された」モデルなのか?
いや、そんなはずはない。絶対にそんなはずはない。多くのオーディオファンにとってペア200万円〜という数字が持つ「絶対的な存在感」は昔も今もそう変わらず、であるなら、そこに対する夢も、期待する満足度も、依然として極めて高いものがあるはずだ。
さらに言うなら、オーディオファンがいつの日か自宅に迎え入れる「夢で終わらない夢」として、その価格帯のスピーカーの重要性は今まで以上に高まっているのではないかとさえ思える。
そんな思いを抱えていたところ、PMCの「prophecy9」、PARADIGMの「Persona 3F」、QUADRALの「AURUM MONTAN 9」の3機種の一斉試聴を行う機会があった。いずれも現代のハイエンドスピーカーの「スイートスポット」に位置するモデルであり、それぞれどのような「オーディオの夢」を与えてくれたのか、各モデルの内容も含めてレポートしていきたい。
なお、試聴にはエソテリックのネットワークプレーヤー「N-05XD」、アンプにアキュフェーズの「C-3900S」「A-80」の組み合わせを使用した。
PMC「prophecy9」 -全帯域に渡る圧倒的な解像感
まずはPMCのprophecy9から。prophecy9はスタジオ・モニター思想をホームにも適用する同社の最新シリーズ “prophecyシリーズ” のトップモデルに当たるトールボーイで、市場実売価格は税込2,090,000円前後。
ユニット構成は高域に27mmソフトドーム、中域に55mmソフトドーム、低域に125mm超軽量のマイカ(雲母)を充填したLT XLミネラルコーンウーファーを2基の3ウェイ4スピーカー。
このクラスのスピーカーとしてはウーファーサイズが小さく思えるが、PMCのお家芸である独自のトランスミッションライン技術「ATL」と低域用ポートの空気整流技術「Laminair X」を組み合わせ、レスポンスと沈み込みの両立を図っている。
また、高域と中域には新設計された拡散グリルとウェーブガイドを搭載。これは昨今のスピーカー設計で積極的に採用されているアプローチであり、まさしく「PMCらしい最先端スピーカー」といえる内容となっている。
外観やキャビネットの作りは木目仕上げも含めて基本的にシンプルだが、底部には低域用ポートを兼ねたベースが装着されており、これは全体の低重心化や接地の際の安定化を兼ねる非常に頭のいいアイデアだ。スパイクを使う際はこのベースに直接ねじ込む形となる。ウーファーサイズゆえに横幅165mmと非常にスリムであり、これは接地のしやすさにも関わってくる。スピーカー端子はシングル仕様。
prophecy9の再生音を端的に表現するなら、ずばり「全帯域に渡る圧倒的な解像感」。音楽の姿かたちを克明に解きほぐすという点では、間違いなく今回の3機種の中で最高の能力を示した。
強い音である。音の細部が「ビシバシ」という形容が浮かぶほどに力強く描かれる。力強い描写はともすれば輪郭の太さとして認識されるが、prophecy9の描写はいわば「筆圧の強い細密画」の精度が常に保たれる。
中高域はソフトドームを採用しつつ柔らかさよりも切れ味の鋭さが強く意識されるが、耳に痛いとまではならない辺りにソフトドームであることの利点と拡散グリルの効果が出ている。Ionaのライブ音源『Heaven's Bright Sun』はコーラスの描き分けが今まで聴いたことがないレベルで精密だ。
低域に関しては、もしかしたらトランスミッションライン方式ゆえの特徴的な振舞いがあるのかもしれないと注意深く聴いたが、むしろ下手な密閉型を完全に凌駕するレベルで立ち上がりが鋭く、後も引かない。凄まじいキレの良さだ。そしてこれまたATLのおかげか、深々と沈む低域は本当に下の下までよく見え、前述の印象をもたらしている。
筆者が中低域のテスト音源としているNils Lofgrenの『Band Live』から「Bass and Drum Intro」では、生々しく克明な描写とウーファーサイズからはにわかに信じ難いほどの重みが両立されていた。
クラシック/オーケストラの試聴音源としている『易 伊福部昭の芸術13 ピアニズムの深淵』から「ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナータ」では、音の混濁が極限まで少ない、恐ろしく高度にコントロールされた見通しの良い再生であり、このような表現は初めてだと新鮮な感動を得た。空間は前に展開するタイプで、奥行きや横方向の広がりでは特筆すべき点はないが、音源本来の広さはしっかりと引き出せている。
ちなみに今回聴いた3機種の中で、再生音に関して筆者宅のメインスピーカーであるDYNAUDIOのブックシェルフ「Confidence 20」に最も似た感覚があったのはprophecy9だった。これはスタジオとホームの両方を手掛ける製品ラインナップや、高域にソフトドームを使用するといった共通点のゆえだろう。
とはいえ、総体的に穏やかで嫌な音を出さないConfidence 20に対し、prophecy9はよりスタジオ的な厳格さを志向しているのか、全帯域に渡ってかなり「強い」音を出すという印象があった。無論それはオーディオ的なスリルに直結している要素なのだが、オーディオファンが自分の求める音の方向性を考える際は参考として捉えてほしい。
PARADIGM「Persona 3F」 -長くリラックスして音楽を聴ける
次に、PARADIGMのPersona 3F。Persona 3Fは同社のフラグシップ“Personaシリーズ”のトールボーイの末弟で、定価は税込2,420,000円。
ユニット構成は高域に25mmベリリウムドーム、中域に178mmベリリウムドライバーを採用し、この中高域にベリリウム振動板を使用するという構成がPersonaシリーズ最大の特徴。トゥイーターとミッドレンジそれぞれに、Paradigm独自の音響レンズ「PPA」が搭載されている。そこに178mmX-PAL(アルミ)ウーファーが2基加わった3ウェイ4スピーカー構成となっている。
Personaシリーズはブックシェルフ「Persona B」が全帯域をベリリウム振動板が担うという唯一無二の構成で大きな注目を集めているが、内容と価格設定からすると、Persona 3Fは同シリーズにおける戦略モデルとして位置づけられていることがわかる。
Personaシリーズの外観やキャビネットはラグジュアリーと呼ぶべきもので、細かいラメの入った光沢仕上げは本当に美しい。プレミアム仕上げも含めれば非常に多くのカラーを選択可能なこともポイントだ。
底部にはアルミベースが装着されており、脚部は金属とラバーを組み合わせたフットか、非常に太く精密に作られたスパイクを選択可能。なお、Persona 3Fはリアバスレフだが、上位機種はベースの形状が異なり、ダウンファイアリングポートが搭載されるという点で差別化されている。スピーカー端子はバイワイヤリング仕様。
Persona 3Fの試聴メモにはニュートラル、広がり、耳当たりの良さ、ボーカルの潤いというキーワードが並ぶ。ソフトドームを採用しながら下手なハードドームを凌駕する切れ味を実現したprophecy9に対し、Persona 3Fは金属製振動板を採用しながら本来であればソフトドームに期待されるレベルのしなやかさや滑らかさを実現しているという点で好対照をなす。
全帯域で突出する部分がなく非常にバランスがいい。prophecy9と比べると低域の解像度や輪郭の硬質な描写でわずかに甘さが感じられるものの、この点についてはprophecy9が優秀すぎるだけであって、Persona 3Fもまた十二分に優れた低域の再生能力を持っていることに疑いはない。力みを感じさせない音離れの良さと、スムーズで広大な空間も本機の大きな魅力である。
特筆すべきはやはり中高域で、金属製振動板らしい明晰さ・透明感・ディテール描写力を最高レベルで備えながら、特に高域で時折ハードドームのデメリットとして表出する過剰な硬質感や耳当たりの悪さといった要素がことごとく払拭されている。デメリットが取り去られ、音源本来の状態を真に透明度高く描写するがゆえに、高域はやわらかく、みずみずしくさえあり、ボーカルには潤いが宿る。
そして、筆者が聴いたPersonaシリーズに共通する印象だが、とにかく「うるさくない」のである。ベリリウムという素材の力と、PPA搭載による相乗効果で付帯音や歪みが限りなく抑えられた結果、これらの印象をもたらすのだろう。とにかくハードドーム的な強調感が一切ないニュートラルな再生音なので、人によっては「地味」とすら感じてしまうかもしれない。
筆者は自宅でPersona Bを使っており、それとの比較を踏まえると、Persona 3Fは単にPersona Bに低域を足しただけのスピーカーではない。Persona Bのストイックすぎるほどの「無色透明感」はわずかに薄れ、より音楽の色彩が強く感じられる方向に仕上げられている。
これはウーファーの搭載によりベリリウムドライバーが中域に専念することで、より高度な楽曲の再現が可能になった結果だろう。純粋な低域再生能力の強化とダイナミックレンジの拡大もあわせて、様々な音源への対応力は明らかに向上している。
総じてPersona 3Fはパッと聴いてこれ見よがしに「凄い音」を叩き付けてくるような方向性とは一線を画し、むしろ凄みを感じさせないところに真の凄みがある。音楽の姿を圧倒的な解像度で提示するprophecy9に対し、Persona 3Fはその透徹した再現性をもって音楽に寄り添う。今回の3機種の中で「一番長くリラックスして音楽を聴けるスピーカー」を選ぶなら、それは間違いなくPersona 3Fということになる。
QUADRAL「AURUM MONTAN 9」- 威厳あるスケール感
最後に、QUADRALのAURUM MONTAN 9。MONTAN 9は同社のフラグシップ“AURUM 9シリーズ”の中間に位置するトールボーイで、定価は税込1,870,000円。
ユニット構成は高域に自社開発のリボントゥイーター「quSENSE」、155mmの独自金属素材「ALTIMA」ミッドレンジドライバー、同じくALTIMAの180mmウーファーが2基という3ウェイ4スピーカー構成。というわけで奇しくも今回取り上げた3機種はすべて同じ構成である。素材レベルからこだわり抜いた自社開発ユニットの搭載という点ではPARADIGMとも共通する。
スペック上の再生周波数帯域は26Hz - 65kHzと広大で、無論この数字で音を判断できるものではないにせよ、ユニットの能力の高さは伝わってくる。
MONTAN 9のキャビネットはピアノブラック仕上げで、様々なメーカーの数ある同様の仕上げの中でも上位に位置する美しさ。本機は1本あたり39.7kgと今回の3機種の中で最も重量があり、投じられた物量を端的に示している。
底部には四隅にフットが標準で装着されており、スパイク等は使わずそのまま設置することが前提となっているようだ。スピーカー端子はバイワイヤリング仕様で、高域の±2dBのコントロールが可能。
MONTAN 9をはじめ、AURUM 9シリーズの上位モデルは「プレッシャーチャンバー型」となっているが、これは空気圧を利用してウーファーをダンプすることで、低域のインパクトと引き締まりを両立させる構造を指す。MONTAN 9はウーファーがバッフル面に設けられた窪みの中に配置されており、ここで空気圧がかかる仕組みとなっている。
漆黒の石柱のごとき佇まいのMONTAN 9が聴かせる音は、喜びに満ち溢れている。そしてそれは、「いいオーディオで音楽を聴く喜び」という、オーディオ趣味の原点そのものである。
とにかく聴感上のレンジの広さが圧倒的だ。先にスペック上の周波数帯域だけでは音を語れないと書いたが、MONTAN 9(そしてAURUM 9シリーズ)においては、数字は聴感上のレンジの広さそのものだと言っても過言ではない。筆者は同シリーズのブックシェルフ「GALAN 9」「SEDAN 9」やフラグシップ「TITAN 9」も聴いたことがあるが、この印象は共通している。
高域はリボントゥイーターならではの繊細さや空気感にくわえて切れ味の鋭さも併せ持ち、実に気持ちよく突き抜ける。中域はパーカッションを筆頭にトランジェントの再現が極めて優秀、ボーカルは溌剌として輝くような質感が宿る。広大な空間と、それを満たす情報量もユニットの優秀さを証明している。
そして、重厚、強靭、量感のすべてが揃った圧巻の低域。prophecy9もPersona 3Fもそれぞれ素晴らしい低域を聴かせたが、基本的に細身の表現だったそれらに対し、MONTAN 9の「威厳」とでも形容すべきスケール感と体の芯を揺さぶる体験は巨大な魅力を持つ。広大なダイナミックレンジも相まって、大編成のクラシックとの相性はまさに抜群だ。
各帯域の主張の強さはprophecy9とも通じるが、中低域の振動板素材がALTIMAで統一されていることもあってか再生音はまとまりがよく、オーディオ的快感と音楽的快感を混然一体に浴びることができる。
MONTAN 9は決して色付けが先行する個性派だと言いたいわけではない。スピーカーとして非常に優れた性能や工学的精度を持ちながら、それを無機質なHi-Fi追求ではなく、音楽を聴く喜びのために使っている、そんなイメージだ。
実際、MONTAN 9はprophecy9とPersona 3Fに比べれば明らかにメーカーとしての主張がはっきりした音作りがある。それは正しく絢爛にして豪華な再生音であり、前述の通り、オーディオ趣味の原初的な喜びを直撃して余りある。quadralが「いい音で音楽を聴けばこんなに楽しい」という原点を忘れていないことはMONTAN 9の再生音から明らかで、いちオーディオファンとして感謝と畏敬の念を抱かざるを得ない。
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PMCの「prophecy9」、PARADIGMの「Persona 3F」、QUADRALの「AURUM MONTAN 9」、今回取り上げた3機種は、いずれも各ブランドの総力が投じられた真に「スイートスポット」と呼ぶにふさわしいスピーカーだった。
昨今のハイエンドスピーカーは無闇やたらに高くなってしまって、もはや手が届かない……などと嘆かなくてもいい。かつてオーディオファンの夢だった価格帯では、今でも夢見るに足るスピーカーが、あなたに聴いてもらう日を待っている。

