公開日 2026/05/29 06:30

音楽への知的好奇心を満たす。ストリーミング時代に、aurender「A1000」を買うべき3つの理由

DSDを含むハイレゾファイル再生とも両立できる

LINNによって拓かれたデジタルファイル再生が始まり約20年が経ち、今やデジタルファイルはオーディオのメインソースとなり、パッケージメディアを過去のものとした。そして時代は手元にデジタルファイルを残さなくてもよいストリーミングへと移りつつある。

この潮流をふまえ、PHILEWEBでは1か月に渡り「ネットワークオーディオ強化月間」として、ストリーミングサービスをいい音で楽しむための特集を行ってきた。

その締めとなるのが本稿、不肖のaurender(オーレンダー)「A1000」導入記となる。ストリーミング時代に求められるプレーヤーとして aurenderを選んだ理由を、改めてストリーミングサービスがもたらすものは何かを考えながら、読者諸兄にお伝えしたい。

aurender ネットワークプレーヤー「A1000」(599,500円/税込)

ストリーミングサービスがもたらした革命

「ハイレゾ音源1億曲が聴き放題」を謳うストリーミングサービス。読者諸兄は、その裏に隠れた真実にお気づきだろうか。ストリーミングサービスが意味するところは「誰もが同じ音楽のストックリストを有している」という「音楽の平等主義」の誕生であると不肖は捉えている。これはオーディオの歴史上、いや商業音楽の誕生以後の大革命なのだ。

我々は過去、金銭を対価として、パッケージメディアを手に入れたりコンサート会場に足を運んでいた。それゆえ貧富の差により、触れられる音楽の量と質が異なっていた。働かざる者は聴くべからず。資本主義とはそういうモノであり、誰もが納得していた。

だがストリーミングサービスは、誰もが平等に約1億曲の音楽に触れる機会が与えるのだ。今まで諦めていた音楽を聴くことができる。しかもCDを上回るクオリティの音源が瞬時に、だ。聴きたい時に、聴きたい音楽が、好奇心の熱も冷めやらぬ状態で聴ける。アルバムを買いに行く時間が聴く時間に変わる。これを大革命といわずして何と例えよう。音楽を渇望する者にとって、これを無上の喜びと言わずして何といおうか。

1億曲に対し「聴ききれるわけがない」「どうせ聴く曲は決まっている」という声を耳にする。諦めないで欲しい。どのように新しい楽曲と出会うか。検索とタグ以外による不肖の使い方をご紹介したい。

不肖は執筆時、自分の好きな曲はもちろんだが、殆ど「オートプレイモード」で音楽を聴いている。これはストリーミングサービス側が「この人に合うであろう音楽を選択して、かけてくれる」というものだ。これが不肖と新しい音楽との出会いのほとんどである。そして気に入った曲があれば、フェイバリット(ハートマーク)をクリック。こうすることで、後日聴き直すことができる。気に入ればプレイリストに入れ、気に入らなければフェイバリットを解除すればよい。

スマートフォンにアプリを入れておけば、自動車の運転中や電車の中など場所を選ばずにフェイバリットが追加できるし、プレイリストだって編集できる。出先でCDやLPの規格品番をメモに記したり、スマホで写メを撮る必要すらない。知らなかった音楽と次々と出会える。

さらに、レコード店や飲食店、そしてオーディオショウなどで流れている音楽が気になったら、Googleが無料でリリースしているAndroid向けアプリ「Now Playing」を起動し、楽曲の一部を録音すればよい。暫くするとタイトルとアーティストが表示されるので、それをストリーミングサービスのアプリにフェイバリットすればよい。クラシックの場合、奏者までは判別できないものの、ある程度のアタリはつけられるハズだ。外で耳にした音楽がスグに家で確認できる。

記事によっては著者が使用した音源のリンクが埋め込める点も、読者諸兄からしたら嬉しいところだろう。著者を通して新しい音楽と出会えるだけでなく、実際に聴きながら読むとレビューに対して理解がより深まる。これらは書き手だけでなく、オーディオショウなどでデモンストレーションをする者にとって、受け手がスグに同一音源を用いた確認ができてしまう、という恐怖でもある。

インターネットにより実現したストリーミングサービスは、音楽との出会い方にも革命を起こしたのだ。もはや静観できない。そこで不肖はQobuzと契約した。大抵のネットワークプレーヤーで利用可能であることはもちろんだが、そもそもイイ音で聴かなければサービスを利用する意味がないからだ。

ストリーミングとローカルファイル再生を両立できる

音源は平等主義になった。だがコンポーネントの方は資本主義のままだ。何かしらのコンポーネントを買わなければ楽しめない。かといって何でもよいわけではない。何を選ぶべきか。不肖がストリーミング時代に好適と選んだのが、aurenderのA1000である。aurenderA1000と不肖の出逢いは、過去の記事をご覧いただきたい。

以前の記事に書いた通り、拙宅のアナログプレーヤーEMT950に通じる音触に惹かれた。不肖が求める音楽表現とA1000が奏でる世界感に共通項が見いだせたからだ。またコンパクトな筐体に、黒色仕上げが用意されている点も気に入った。コンポーネントは、所有する歓びを与えると共に、音楽に対しての奉仕者、黒子に徹するべきと不肖は思う。

ストリーミング時代に於けるaurenderの技術的メリットは、データを一旦本体内のSSDに蓄えるキャッシュ機能である。当初は懐疑的であったが、その効果は絶大だ。それはaurender専用アプリとキャッシュ機能が使えないQobuzアプリ(Qobuz Connect)で聴き比べれば分かる。明らかに静寂度、音の密度が大きく異なるのだ。

ストリーミングサービス利用がメインであるなら、音源を保存するためのストレージは不要だ。と言いたいのだが、残念ながらそうはいかない。それはDSD形式のハイレゾファイルは、ストリーミングサービスで配信されていないからだ。

でもNASを新たに用意する必要はない。A1000は本体内に最大8TBまで対応するストレージ用2.5インチベイを備えているのだ。昨今ストレージの値段は高騰しているが、4TBのモデルを購入した。

取り付けは簡単で、手回しネジでトレイを引き出し、SSDをパカッとはめてリアパネルに戻すだけだ。ドライバーの類は一切使わない。あとはA1000側でフォーマットした後、同じLANに接続したPCからデジタルファイルをコピーするだけだ。

オススメポイント1 -セットアップがカンタンかつ早い

A1000は、紙製の段ボールではなくプラスチック製のダンボール、いわゆるプラ段に納められて届いた。プラ段は紙製に比べてコストがかかるし、箱を残す際に場所をとるものの劣化進行が少なくて助かる。まるでサンタクロースから玩具を貰った子供のように梱包を解き、我が玩具箱であるオーディオラックの最上段にセットした。

aurenderの外箱

電源を入れ「aurender A1000」という表示に心が躍る。早く音が聴きたい。だがネットワークプレーヤーの多くは、何かしらの設定を擁し、もどかしさを覚えるものだ。

しかしaurender A1000は、設定という概念を過去のものとした。あらかじめスマート端末にインストールしたAurender ConductorにA1000が表示されていれば完了の合図になる。ここまで届いてから3分とかかっていない。そう、A1000は音が出るまでの時間が他社に比べて簡単かつ圧倒的に早いのだ。この起動の早さは、都度電源を入れる方にとっては嬉しいことだろう。

ストリーミング再生の準備は、Aurender ConductorにQobuzのアカウント情報を入力するだけだ。アカウントが通れば、あとは検索窓にアーティスト名を入力し、好きな曲をタップすれば音楽が流れ出す。

Aurender Conductor アプリからQobuzやTIDALに連携できる

さて何を聴こうか。不肖は「オリバー・ネルソン」と入力し、名盤「The Blues and The Abstract Truth」(邦題:ブルースの真実)から1曲目「Stolen Moments」を選んだ。なぜそれを選んだのか、実はよくわからない。普段から聴く曲でもない。何にしようかと思案している頭に反して指が勝手に動いていた。

オリバー・ネルソン、エリック・ドルフィー、ジョージ・バローの3本のサックスが奏でる主題がスピーカーから溢れ出した途端、勝手に動いた右手人差し指を褒めた。このスモーキーでありながら透き通ったホーンの音色と厚みが聴きたかった!

その後にフレディ・ハバードのトランペット、エリック・ドルフィーのフルート、オリバー・ネルソンのテナーとソロパートが続き、aurender A1000はこれら多彩な音色と音触を描き分けていく。そしてエヴァンスの美しいピアノ……。

いい買い物をしたなぁと、またまた自分を褒めたくなる。そのまま2曲目の「ホー・ダウン」でゴキゲンになってしまい、気づけば最後の「ティニーズ・ブルース」まで一気に聴いてしまった。あっという間の充実した時間――。オーディオに取り組まれている方なら、この気持ちがお分かり頂けるだろう。

Qobuzが販売するDSD音源のラインアップの中に、キース・ジャレットのマスターピース「The Köln Concert」がある。96kHz/24bitのストリーミングも魅力的だが、2.8MHz DSDは、静寂と静寂の間にさらなる闇があることを知る。またPCMが隈取りを立たせた硬質な表現であるのに対し、DSDはアタックの中に確かな柔らかさを覚えた。より演奏に没入するなら断然DSDだ。

オススメポイント2 -アプリの安定度が高く、反応もよい

ネットワークプレーヤーとのタッチポイントであるスマート端末の操作性は重要な要素だ。インストール時に感心したのは、画面サイズに合わせてタブレット版とスマホ版の両方が用意されていることだ。タブレットでも小さな画面や文字が見づらい場合は、スマホ版をタブレットにインストールするという方法もある。

毎日使って感心するのが、Aurender Conductorの完成度と使い勝手のよさだ。どんな些細なトラブルや使いづらさでも、起きれば心がスッと音楽と機械から離れてしまうものだ。だが、iPad(iOS)とAndroid OSのいずれも、直感的かつストレスフリーで使えるし、再起動を求められるようなトラブルが1度も起きていない。完成度の高さには拍手を贈りたい。

UPnP再生やRoonにも対応。使いこなしの幅は広い

先程書いたとおり、不肖は出先で気になった楽曲をスマホのQobuzアプリのプレイリストに登録し、帰宅後にAurender Conductorで再生している。このようなアプリ間を横断したプレイリストの共有は、他のアプリでも使えるのだが、意外と見つけ出すのが難しかったり、色々と触っているうちにアプリが落ちることがある。この点もAurender Conductorは見つけやすく、また問題なく動作をしている。

オススメポイント3 -豊富な設定で好みの音が追い込める

A1000は音楽的満足度だけでなく、オーディオ的な知的好奇心をも満たすコンポーネントだ。というのも、オーディオマインドをくすぐる様々な設定が用意されている。広く知られているのが、フロントパネルのディスプレイをはじめとする各所の電源供給を止めて……というクリティカルリスニングモードだろう。オンにすると余韻や空気感がガラッと変わる。

クリティカルリスニングモードはアプリから設定できる。フロントディスプレイが消灯する他、再生に関わらないバックグラウンドの動作が停止する。またDACフィルターも選択可能で音質を追求できる

バッハのゴルトベルク変奏曲といえば、グレン・グールドの個性的な演奏が頭に浮かぶ人が多いだろう。だがシモーヌ・ディナースタインの演奏もまた素晴らしい。木漏れ日のような暖かさを覚える柔らかで穏やかで丁寧なピアニズム。聴き手の心を捉えて離さない演奏を聴けば、なるほどビルボードのクラシック・チャートで1位を獲得したという話も納得できる。

クリティカルリスニングモードをオフにした状態は、しっかりとした前に出てくる表現で、グールドの演奏を参考にしたという本人の弁がよく伝わる。だがオンにしたらどうだろう。ノイズフロアが下がり、鍵盤と指が触れる瞬間までが見えるかのよう。それゆえ、しっかりと左手で進行しながら、右手で歌う演奏であることが伝わる。聴こえなかった音が聴こえることにオーディオの喜びを覚えるが、かといって細かな音を出せばよいというわけではない。楽曲に必要な機微として細かな音が求められるのだ。

Aurender Conductor5からは、DACの動作モードとデジタルフィルターの選択ができるようになった。デジタルフィルターの変更は他機種でも見たことがあるが、動作モードの変更は不肖の記憶にはない。クリティカルリスニングモードほどではないにせよ、スパイス程度の変化は感じとれる。前出のゴルトベルク変奏曲では、ピアノの響きに違いが表れやすく、結果楽曲全体に印象の変化につながる。

Aurender Conductorからの再生中のみ、音楽データを一旦内蔵のM.2 SSDに蓄えてトリートメントする同社のコアテクノロジー「キャッシュ機能」は利用できる。先述の通りキャッシュ機能の効果は絶大で、再生中にLANケーブルを抜いても、プレイリストにある音楽は演奏し続ける。

さらに驚くべきことは、オーディオ的な効果も感じられたことだ。「キャッシュで再生しているのだから変わることはないだろう」という軽い気持ちでLANケーブルを抜いたことを後悔した。さらに一段、S/Nが下がるなど、明らかに音質に変化がみられたからだ。おそらくグラウンドループなどのノイズや、LANのコマンドが影響を与えているのだろう。

だからといって演奏の度にLANケーブルを抜き差しするのは現実的ではない。よって不肖はLAN環境の見直しを考えている……。

音楽に対する知的好奇心を満たしてくれる

Qobuzによって灯された音楽に対する知的好奇心を、aurender A1000は見事に応えてくれる。なにより感心するのは、楽曲の得手不得手がないことだ。なんでもこなすオールラウンダーで、今まで聴くことが少なった曲に対しても、より耳を傾けるようになった。

先日、別記事の原稿を入稿した際、担当編集から「〇〇〇を聴かれるのですね」と驚かれた。確かに今までは聴くこともなかった。だが聴いてみると愉しく、試聴曲に加えた。それは、単に見つけただけではなく、aurender A1000によって心地よく聴くことができたからだ。

単に1億曲があっても、音がよくなければ耳を奪われることはない。1億曲を相手にするに相応しいコンポーネントでなければ、ストリーミングサービスは十二分に楽しめないのである。

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