PR 公開日 2025/12/08 06:30

B&Wの小型ブックシェルフ「707 Prestige Edition」の魅力は?「オーディオ銘機賞2026」銀賞受賞の実力をクロスレビュー

このサイズにして広々としたサウンドステージが展開
角田郁雄/井上千岳/生形三郎/大橋伸太郎/福田雅光
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 Bowers & Wilkins「707 Prestige Edition」330,000円(ペア・税込) Photo by 田代法生

Bowers & Wilkins(以下B&W)から日本国内1,000組限定のブックシェルフ・スピーカー「707 Prestige Edition」が今秋、発売されたことは記憶に新しい。B&Wのスピーカーの中でも人気の高いモデル「707 S3」をベースとしながらも、音質や仕上げをグレードアップ。

官能的なまでに美しい仕上げと、小型スピーカーの範疇を超えたスケールの大きな表現力が、「オーディオ銘機賞2026」でも賞賛され、銀賞の栄光に輝いた。ここでは、審査委員5名によるコメントを通じて本機の魅力を紹介しよう。

角田郁雄氏による「707 Prestige Edition」レビュー

深い味わいを感じさせるサントス・グロス仕上げ

いつ見ても、美しくスタイリッシュなBowers & Wilkinsのスピーカーたち。その中でも、「800 D4」シリーズに準ずる「700」シリーズは、オーディオファイルの中でも高い人気を誇り、愛用者が多い。

そのシリーズの中でもコンパクトなスモール・スピーカー、「707 S3」が特別仕様のPrestige Editionで登場した。これは、「800 Series Signature」のような特別仕様としては、初めてのこと。

まず、デザインを見てみよう。キャビネットに12回に及ぶ染色とラッカー塗装を施した、光沢のあるサントス・グロス仕上げで登場した。深い味わいを感じさせ、実にエレガント。トゥイーターとミッド/ウーファーのシルバー・リング状のドライブユニット・ポッドが少し浮き上がり、デザインを引き立てるところがある。さすが、Bowers & Wilkinsの特別仕様としてのセンスの良さが反映されている。この仕上げは、透明感のある音、静けさを引き立てる音にも寄与している。

Bowers & Wilkins「707 Prestige Edition」製品イメージ
2018年に発売された「805 D3 Prestige Edition」に採用されていたサントス・ローズウッドにインスパイアされたサントス・グロス仕上げが施されている。通常の「700」シリーズのグロス・ブラック仕上げでは9回のクリアラッカー塗装を行っているが、「707 Prestige Edition」では、それを上回る12回もの塗装工程を丁寧に繰り返すことにより、より深く美しく輝く光沢を実現したという

スピーカーターミナルとグリルメッシュを特別仕様に

本機は、基本的には、707 S3をベースとしている。搭載するトゥイーターは、アルミ・ダブルドームに画期的な改良を加えた、25mmデカップリング・カーボンドーム・トゥイーターで、高硬度で周波数帯域を拡張し、歪み率の低い高速レスポンスを実現した。

ミッド/ウーファーは、130mmのコンティニュアム・コーンで、カラーレーションがなく、スムーズな振幅を実現。楽器や声の中低域をピュアに、透明感のある音質で再生する。不要な風切り音の少ない独自のバスレフ・ポートも搭載。高精度で、音質に優れたネットワーク回路も搭載している。

下から見上げたBowers & Wilkins「707 Prestige Edition」イメージ図
通常版の「707 S3」と同様、コンティニュアム・コーンを採用した130mmコーン型ウーファーと、25mmカーボン・ドーム・トゥイーターを採用する

本機と通常モデルとの違いは、外観の仕上げのほかに2点ある。

ひとつ目は、800 Series Signatureと同じ、開口率の高いグリル・メッシュを採用したこと。FEA(有限要素解析)によって最適化されたデザインになっており、今まで以上に開放的で解像度と空間描写性を向上させている。

FEA(有限要素解析)によって最適化されたトゥイーター・グリルメッシュを導入している。開口率と剛性のバランスの最適化を突き詰めたもので、開放的で、解像度と空間表現の両方に改善をもたらしているという
 

ふたつ目の違いとして、スピーカーへの信号の流れをクリーンにするために、「702/705 S3 Signature」と同じ、高品位な真鍮コアを採用した新型のスピーカーターミナル(バイワイヤ対応)を搭載している。

スピーカーターミナルに使っている真鍮のグレードをより良いものに変更している。具体的には、「702 S3 Signature」と「705 S3 Signature」と同じく、鉛が少ない、ハイグレードな真鍮コアを使った新型のスピーカーターミナルを搭載している

特筆すべきは、本機の周波数特性と高調波歪み率である。このサイズにして、周波数範囲は、45Hz〜33kHzという広帯域特性で、高調波歪み率は1%以下。これは、不要なキャビネット振動が少ないことを意味している。

空間描写性に優れており各楽器の配置までも緻密に再現

そのサウンドは、搭載されたさまざまな技術が、音の透明感、空間描写性、解像度に大きく貢献している。

ヴォーカル曲を再生すれば、声質や声使いがリアルで、それを囲むピアノ、トランペット、ギターなどの楽器配置が良く再現されている。録音場所の空気感などアンビエントまでも伝わってくる。

躍動感のあるピアノ・ジャズトリオでは、しっかりとしたベースラインとともに高い打音のドラムスと鮮烈なシンバルまでも再現。

クラシックでは、広々としたステージが展開され、演奏の臨場感を、このサイズにして満喫させてくれる。

また、ダイナミックレンジが広いことも本機の特徴だ。実際の使用では、ぜひ、バイワイヤリングにし、調整しながら内振りにすると良いだろう。ますます空間描写性と解像度が高まるであろう。

本機は、このように、長年培ってきた高音質技術の妙があり、それを高く評価した。

審査委員4名が語る「707 Prestige Edition」の魅力

井上千岳 / 芯まで詰まった密度の高い音

これはもう小型スピーカーの鳴り方ではない。スタンドに乗ったフロア型と言ってもおかしくはない再現力で、ソースに対する把握力が圧倒的に強い。その結果音数が極めて多い。同じソースを聴いても芯の方まで音がみっしりと詰まり、質感の密度が2倍ぐらいになっているように感じる。

当然エネルギーも強力だが、レスポンスが均一でどこかに偏ることがないため音楽の流れは至って滑らかで澱みがない。要するに大型スピーカーを良好な状態で鳴らしているのと同じ出方をするのだ。

バロックのような室内楽並みの小編成ソースでも、楽器ひとつひとつの厚みがずっしりとした手応えを感じさせる。重いのとは違って力が詰まっているのだ。またピアノでも響きの骨格が強固で、一音々々のタッチが表情に富んだ音色を描き出す。きめ細かく彫りが深いのである。

オーケストラは空間のスケールが雄大で、楽器それぞれがその中に正確に点在している。音色が混じり合わないし、ハーモニーもふくよかで瞬時の大音量も強靭。まるでお手本のような再現性である。

生形三郎 / 空間再現性や透明感が向上

日本市場向けには眼定1,000ペアという特別なモデルとして誕生した本スピーカーは、小型ブックシェルフの魅力が詰まった逸品だと言える。通常モデルとなる「707 S3」との違いは、塗装の違いやトゥイーターのメッシュグリルなど極めて細かい差となっているが、比較するとの音質差には歴然たる違いがある。

B&Wは、この707がそうであるように、シグネチャーといったアップグレード・バージョンが各シリーズの特定モデルに用意されるが、そこでの入念かつ着実なクオリティアップには毎度驚かされる。

今回は、シグネチャーシリーズヘのアップグレードと異なり、スピーカーユニットやネットワークの変更など大きなモディファイではないにも関わらず、特別エディションと言えるリファインを聴きとることができる。

それは主に、空間再現能力の拡大や透明性のアップにある。塗装に加えて、やはりメッシュグリルの開口率アップの効用が大きいのか、空間の見通しや音像の立体感が向上している。また、それに伴ってか、高域描写の質感自体もアップしたように感じられるのだ。

大橋伸太郎 / 音場表現に歴然とした差

本機はディーアンドエムホールディングスの提案を受けて英B&Wが開発した日本発の製品である。ストリーミングという追い風が吹いているのにハイファイスピーカーの高額化に歯止めがかからない現状に一矢を報いるべく登場した。

13cmウーファー、25mmドームトゥイーターの2ウェイ、高さ300mmのリアバスレフはベースの「707 S3」と変わらずだが、エンクロージャーの仕上げが違う。日本の家庭のインテリアになじみやすいサントスレッドのグロス仕上げは、ピアノブラック9回塗りに対し12回の工程を経るという。

ドライバーやネットワークのチューンナップは行っていないが、トゥイーターのグリル開口率が2%程度高くなり、縦長パターンに変わった。ターミナルに不純物(鉛)の少ない真鍮が使われるなど、細部がヴァージョンアップされた結果、ベースの「707 S3」比で音場表現に歴然とした差が生まれている。

奥行きが増し、音場がひと回り大きく深くなった印象だ。この小さなスピーカーがエアボリュームを従えて朗々と鳴るのに感銘を覚える。時宜を得た企画が高く評価され、オーディオ銘機賞2026銀賞を受賞した。

福田雅光 / 解像度の高い爽やかな音

B&Wの「707 S3」にはレギュラーモデルがあるが、それを強化発展させたバージョン、それがPrestige Editionである。ウーファーは13cm口径、トゥイーターはアルミ振動板表面にカーボン皮膜を溶射により形成。入力端子は「702/705 S3 Signature」と同じく、豪華な真鍮コアにニッケルメッキの美しいもの。光沢のあるサントス・グロス仕上げのエンクロージャーも素晴らしい。

試聴すると、高音の切れ味が良く、トランジェントに優れ、透明感と解像度の高い爽やかさがある。音の輪郭精度は極めて高く、音像はすっきりしている。高域特性に優れていることが、魅力を引き出しているのだろう。低音は締まりを効かせ分解力が高い。総じて写実基調の精度の高いサウンドを引き出す。

レギュラーモデルよりも約10%程度価格が高く設定されているが、日本のオーディオファイルのために誕生した特別なモデル。サウンドは価値あるものと、銘機賞候補に強力に推薦した。

製品情報・スペック

スピーカーシステム:Bowers & Wilkins「707 Prestige Edition」

Bowers & Wilkins「707 Prestige Edition」ペアの製品イメージ
Bowers & Wilkins「707 Prestige Edition」 

SPEC ●型式:2ウェイ・バスレフ型 ●使用ドライバーユニット:25mmデカップリング・カーボンドーム・トゥイーター×1、130mmコンティニュアム・コーン・ミッドレンジ/ウーファー×1 ●再生周波数特性:45Hz〜33kHz ●感度:84dB(2.83Vrms/1 m) ●インピーダンス:8Ω ●外形寸法:165W×300H×284mm(グリルとターミナル含む) ●質量:6.2kg

(提供:ディーアンドエムホールディングス)


※本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 199号』からの転載です。

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