公開日 2023/03/16 06:40

ASMR=ダミヘ?カナル型じゃない=インイヤー?増加する“現代オーディオ用語”を知る

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第269回】

「カナル=Canal」の基本的な意味は「運河」「道管」など。それが耳周りの文脈で使われたり「Ear Canal」と明示してある場合には「外耳道」になる。なので「カナル型イヤホン」におけるカナルの意味は、「外耳道」つまり「耳の穴」だ。その耳の穴にイヤーピースを挿入することで密閉し、遮音する形状のイヤホンが「カナル型イヤホン」ということになる。

一方で、「カナル型 “じゃない” イヤホン」は、「イヤーピースを耳の穴に挿入して密閉する形 “じゃない” イヤホン」といえる。だがその定義だけだと、そこには、ambie sound earcuffsやSony LinkBudsのような新スタイルのイヤホンや、近年増加の骨伝導イヤホンも含まれてしまうだろう。

Sony LinkBuds。カナル型ではないがAirPods的なスタイルでもない

それも考慮し、今回のテーマでの「カナル型 “じゃない” イヤホン」をより厳密に定義してみたい。そうすると、「イヤーピースを耳の穴に挿入して密閉する形ではなく、そのほかの特殊なスタイルでもない、カナル型登場前から存在する一般的な形状のイヤホン」といったような、何とも長ったらしいことになってしまう。

さて、本題。その「イヤーピースを耳の穴に挿入して密閉する形ではなく、そのほかの特殊なスタイルでもない、カナル型登場前から存在する一般的な形状のイヤホン」の呼び方についてだ。細かなところまで拾えばもっとあるのかもだが、三大勢力はこれらではないだろうか。

インイヤー型(インナーイヤー型)
オープン型
イントラコンカ型

これらの呼び方は、どれひとつとして不適当なものではない。この呼び方の違いは「カナル型じゃないイヤホンの “どの特徴に注目” して呼び表すかの違い」でしかなく、どれもがそれぞれの観点からは適当な呼び方なのだ。順に見ていこう。

まず「インイヤー型」。耳の穴ではなくその手前の「外耳」部分にはめて収めるその形、つまり「イヤーにインする形」を表す名称と解釈できる。イヤホンの「装着方法」「装着部位」に特に着目しての呼称というわけだ。カナル型にも「カナルインナー型」という長めの言い方もあるので、それと対になる呼び方としてもしっくりくる。

また別の解釈もある。実はこのインイヤー型という呼び方に対しては、「そもそもイヤホンとはインナーイヤー型ヘッドホンの略称であり、インナーイヤー型あるいはインイヤー型とは、カナル型も含めた全てのイヤホンを指す言葉のはず。一部の形のイヤホンのみを指す名称とするのはおかしい」という声もあるのだ。

それを踏まえて考えると、次のような解釈や想像もできるのではないだろうか。
「インイヤー型は本来はイヤホン全般を指す言葉であったが、カナル型という新しいスタイルのイヤホンが登場してきた際に、旧来の形のイヤホンのみをインイヤー型と呼称することでカナル型との呼び分けを行う用法が発生。それが慣習化し定着した」

何にせよ、インイヤー型の呼称を使う際には、「インイヤー型はカナル型も含めたイヤホン全般を指す」との考え方もあるということは、留意しておくべきだろう。

次に「オープン型」は、カナル型が外耳道をクローズ=密閉するのに対して、カナルじゃない型イヤホンでは外耳道の部分は開放状態=オープンなままという、その特徴を表した呼び方と言える。外耳道を密閉するか開放しておくかという部分に着目しての呼称だ。

実際、カナル型とカナルじゃない型との違いは、その密閉性の有無に由来するところが大きい。カナル型の遮音性や低音再生能力は、その密閉性によって高められている。一方、カナルじゃない型の持つ、周りの音の聞こえやすさや音の開放感は、外耳道が開放されているからこそ。その特徴を想起させやすい「オープン型」という呼称は、両者を区別するものとして十分に適切だろう。

だがこちらにも、この呼び方を使う上での面倒というか要注意点がある。この「オープン」「クローズ」という言葉、イヤホンやヘッドホンの分野においては、カナル型イヤホン登場より前から別の意味でも使われているものなのだ。

次ページ外耳道を塞がないイヤホンには、骨伝導など耳を塞がない系アイテムも

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