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PRカスタマイズ性も高いONIXピュアプレーヤーの第2弾

携帯性バツグンの“ブリティッシュ・サウンド”プレーヤー。ONIX「Tocata XM2」レビュー

公開日 2026/02/18 06:30 高橋 敦
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伝統の “ブリティッシュサウンド” をポータブルの分野にも継承するブランド、ONIX(オニキス)。

しかもその個性はサウンドだけではない。大多数がスマートフォン的なインターフェースに収束しつつある現在のDAP分野において、それが唯一の正解ではないはずだと、独自のインターフェース設計で独自の操作感を提案してきている点も意欲的だ。

サウンドも操作感も一味違うブランドとして、ONIXは新たな存在感を確立しつつある。

そのONIXから、ピュアプレーヤー第2弾「Tocata XM2」(以下、XM2)がリリースされた。82W×65H×18Dmm、質量約140gのコンパクトDAPだ。

ONIX「Tocata XM2」(予想実売価格:税込6万4350円前後)

独自の操作感をコンパクトサイズに凝縮

本機XM2の基本フォーマットは、2024年7月に発売のブランド初DAP「Overture XM5」(以下、XM5)のそれをよりコンパクトに凝縮したものと言ってよいだろう。

縦横比1:1のディスプレイ。操作ボタンはディスプレイと並べて前面に、ボリュームダイヤルと出力端子は底面に配置。そのフォーマットを継承して本機が登場したことで「XMシリーズらしさ」が確立された感もある。

ONIXブランドのDAP第1弾「Overture XM5」(左)と共通の外見的特徴を持ちながら、よりコンパクトに
それぞれ専用ケースを装着して手に持つと、特に縦方向のサイズ差が強調される

さらに好ましく感じられるのは、ボタンや端子の配置で独自色を強く打ち出しつつ、決め打ちの操作感を押し付けることはなく、ユーザーによるカスタマイズ性も高められていることだ。

ディスプレイは、スクエア比を活かしてどの向きにも回転させての表示が設定可能。ボリュームダイヤルと出力端子は底面に向けて配置と紹介したが、「自分はやっぱりケーブルは上に伸びてくれた方が扱いやすい」というユーザーはそのような取り回しに変更することもできる。

その際に再生ボタンの刻印の向きこそ反転してしまうが、スキップボタンの向き(早送り/戻し)は画面の向きに合わせて自動で入れ替わる。

画面の向きを4方向に変更可能。机の上に立てたり、ケースやポーチにしまったまま音楽を聴く場合など、使い方にあわせて選ぶことができる

デスク等に置いて使うスタイルではケーブルの取り回し方向に合わせての横向き表示も便利そう。ボリュームダイヤルも横向きの方が回しやすいかもしれない。

ほか、左右どちらの手で持ってどの指で操作するかなどによってもボタンやケーブルの配置の好みは違ってくるが、その違いにも幅広く対応してくれるはずだ。

本体前面に配置された4つのボタンのうち「Fnボタン」には、用意されている中から好きな機能を選択して割り当てられる。現時点では、以下の項目からの選択だ。

・Return To Main Menu(メインメニューに戻る)
・スクリーン回転
・ボタンロック
・画面をロック
・ゲイン(ハイ/ロー切り替え)
・Favorite(再生中の楽曲を「お気に入り」に登録)

例えば「イヤホンとヘッドホンを頻繁に切り替えてリスニングするからゲイン設定をさっと変更できたら便利」など、自身の利用スタイルに合わせて活用できるだろう。

ユーザー好みの機能を登録できる「Fnボタン」をXM5から継承
記事執筆時点のFnボタンは、6つの機能の中から1つを割り当てられる

こうしたカスタマイズ性の高さもXM5から継承の要素だが、「コンパクトでそもそも持ちやすい」という強みも合わさることで、XM2ではハンドリングの優秀さがさらに際立たされている。

そして実際に色々と操作を試してみると、タッチ含めて操作へのレスポンスがとても速いことにも驚かされる。

ボリュームダイヤルの長押しが電源ボタンとなっているが、長押しから操作可能になるまでも15秒程度。その軽快さはAndroidベースではない「ピュアな」システムによって実現されているようだ。

Androidではなく音楽再生専用システムを搭載。電源オンからの立ち上げ速度や操作レスポンスは素早い。メインメニューに表示する項目や並び順もカスタマイズできる
画面の上端から下にスワイプすると、スマートフォンのようにクイック設定を呼び出せる

メニュー画面等のソフトウェアインターフェースのグラフィックは簡素であるがそれも、ハードウェアデザインとも合わせて、クラシカルDAPのフィーリングを演出。

そのシステムであるが故にストリーミングアプリの追加等はできないが、自宅環境では無線LANでのDLNA/AirPlay再生に対応するので、ストリーミングはそれ経由で楽しめる。専用スマホアプリ「Eddict Player」から本機のリモート操作も可能だ。

無線周りでは他に、Bluetoothは送受信両方向に対応し、高音質コーデックとしてはLDACをサポートする。

USB-DAC機能も搭載。スマートフォンの動画やストリーミング音源を、有線イヤホンで楽しむための高音質アダプターとしても活躍できる
マグネットを内蔵する別売の「マグネティックケース」(予想実売価格:税込4,950円前後)を装着すれば、MagSafe対応スマートフォンの背にピッタリと添わせることが可能だ

「Tocata XM2」音質チェック:
演奏の陰影を際立たせる “ブリティッシュサウンド” 

オーディオ設計としては、DAC回路にはCirrus Logic社のフラグシップチップ「CS4308P」を搭載、独自I/V変換段にはTI社「OPA1612」、アンプ回路にはSG Micro社「SGM8262-2」を採用している。

回路構成や採用チップにおいて本機とXM5の共通項は意外にも相当に少ない。“ブリティッシュサウンド” の肝はそこではなく、チューニングにあるのだろう。

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シーラス・ロジックのDACチップ「CS4308P」と、「OPA1612」オペアンプ2基を用いた独自のI/V変換ステージ “Brighton” アーキテクチャーが、XM2のサウンドの土台となっている

温かみを演出するアナログメーター表示も楽しみつつ、実際のサウンドを確かめてみた。4.4mmバランス駆動で、イヤホンとしてはqdc「Tiger」をセレクト。

様々な楽曲を聴いて総じて印象的だったのは、やはり特にボーカルであるが、楽器が明るく抜けて朗々と歌ってくれること。

ボーカル帯域重視の表現はまさに “ブリティッシュサウンド” のイメージ通りかと思うが、「明るく」と言われるとそこには解釈違いを感じる方もいるかもしれない。

であるが明るいと言ってもカリフォルニアの日差しのように明るいのではなく、舞台上での照明の当て方が巧いおかげで姿の見え方が明るいといった、そんなニュアンスで明るいのだとお伝えすれば、なるほどブリティッシュな雰囲気だと納得してもらえるのではないだろうか。

その印象は音像描写や全体の雰囲気作りにおいても共通だ。パキッと立体的にではなく、渋みのある陰影描写で浮かび上がらせるような音像表現。

音場においても、脳内にバーチャル空間を生成とかではなく、心中に絵画を描き出すような方向性での描写が持ち味。

でありつつ、最新スペックDAPでもあるので、解像感や情報量といった要素が不足するわけでもない。それらも当然クリアして、そこに上乗せの個性としてのブリティッシュサウンドというわけだ。

 “ブリティッシュサウンド” らしい充実したボーカル表現と、演奏のメリハリや抑揚を際立たせる “明るさ” が特徴的なサウンドだ

現代の高音質録音にも不足なく対応するが、歴史的名盤、特にケイト・ブッシュさんのデビューアルバム『The Kick Inside』の再生は圧倒的に素晴らしかった。

歌においては、声の抜けを完璧に引き出すことで声の張りを抑える瞬間との抑揚、ダイナミクスの大きさも見事に再現。その押し引きが心を揺らす。

主役がボーカルからサックス、サックスからボーカルへと渡されていくところでは、それこそ巧みな照明で舞台上の主役を切り替えるように、滑らかな場面転換を見せてくれた。

前提として音源がそのように作られているからではあるが、それをまさにそのように再現できるのは、ダイナミクスも含めた様々な階調表現、陰影の豊かさがあってこそと言えるだろう。

そんなこんなで、「ブリティッシュならケイト・ブッシュさん聴いてみるか」と安易に聴き始めたらアルバムを通して聴き終えてしまった。それほどの満足度だ。

このサウンド。そして前半で述べた操作感。現在のDAPジャンルにおいて稀有な個性が光るモデルだ。

比較的に高価ではなくコンパクトでもあるので、ポータビリティに優れたサブ機としても注目されるかもしれないが、その際にもメイン機とのキャラ被りはないだろう。

ブランドの主張が詰め込まれた1台に仕上げられている。


(協力:MUSIN)

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