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PRフラグシップAVプリアンプ「AV 10」と最上位AVアンプ「CINEMA 30」との比較も実施

マランツのAVプリアンプ「AV 30」でグレードを卓越したイマーシブサウンドの底力を体感!

公開日 2026/03/19 06:30 小原由夫
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AVプリアンプ「AV 30」(11.4ch) 594,000円(税込)

近年オーディオビジュアル市場に積極進出するマランツから、セパレート型AVプリアンプ「AV 30」がリリースされた。本機はフラグシップ機「AV 10」のエッセンスと機能を伝承しながら、約半分のプライスタグを実現した意欲作だ。

AV 10は、いわば現時点でのマランツの持てる技術やノウハウが結集されたもの。そこに妥協や奢りは一切なく、まさしく贅を尽くしたサラウンド対応プリアンプといえる。一方AV 30は、機能面ではAV 10をほぼ踏襲しているものの、プロセッシング・チャンネル数は4ch減って11.4chとなり、回路も一部簡略化されている。

しかし、スペック上ではほとんど差異がなく、エルゴノミクスもほぼ同じで高級感のある落ち着いた佇まいを纏う。背面パネルを見れば全チャンネルにバランス出力を備えているし、今時アナログからHDMIへのビデオコンバージョン付きのコンポーネント映像入力を備えているという点でも貴重なモデルといえる。

そんなAV 30がどんなパフォーマンスを提示してくれるか。本稿では、前述のAV 10、さらに一体型AVセンターの最上位機「CINEMA 30」も用意し、このニューカマーのポテンシャルを多角的に分析してみたい。

「HDAM-SA2」を2枚の基板に集約しながらもLRチャンネルをセパレーション構成で実現

まるで一卵性双生児のようにそっくりな顔つきのAV 30とAV 10。パネルフェイスは共通で、全高も変わらない。横幅がわずかに異なるのは、AV 30はコの字型の板金ボンネット、AV 10が独立したアルミ製サイドパネルを採用しているから。

それでも電源基板を支えるベースプレートを追加した積層構造の筐体や、銅メッキビスといったマランツ伝統のメソッドはきっちり反映されている。

AV 30のフロントパネルは、AV 10やAMP 10と同一構造を採用。メインシャーシには、メイントランスと電源基盤を支えるベースプレートを追加している

本体の奥行きが10cm異なるのは、アナログ回路や電源回路の規模の違いからなのだが、10cm長いAV 10には回路等がぎっしり詰まっているのに対し、短いAV 30はそれでもまだ筐体前側に余裕がある。質量はAV 30が約6kg軽い。

写真左がAV 10、右がAV 30。筐体の奥行きは10cmほど違いがある

アナログプリアンプ基板は、アナログ入力信号をはじめD/A変換された信号など、最適に増幅させるために処理回路を最短で接続させている

プロセッシング能力は11.4ch。すなわち、Dolby Atmosのベッドchにサラウンドバックを含めた7.4.4ch、あるいはトップスピー カーを6本とした5.4.6chを組むことができる。対応音声フォーマットでは、AV 10では準拠していたDTS:X Proが省かれた以外は同じ。もちろんAuro-3D対応である。

回路面でAV 10との最も大きな違いは、「HDAM-SA2」回路の構成だ。コンプリメンタリー構成の低ノイズトランジスターを採用したディスクリート構成には変わりないが、チャンネル毎に1枚1枚基板が独立していたAV 10に対し、AV 30のHDAM系回路はL/Rチャンネルで分けた2枚の基板に集約。それでも左右チャンネルのセパレーションを考慮した構成になっているのは見逃せない。

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「HDAM-SA2」回路を搭載しており、LチャンネルとRチャンネルの基板を分離して設計されている

アナログデバイセズ社製のDSPプロセッサーや電流出力型DACチップを核としたデジタル基板など、デジタル信号処理を司る回路はAV 10と同一仕様で、この部分もAV 30のハイ・パフォーマンスの要といえる。ここには強力なジッター除去回路も包含されている他、電流ノイズの生じない薄膜抵抗器、DAC専用トランス巻線など、ノイズ対策は万全である。

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DAC部には、精度の高い水晶発振器でクロックを再生成することでジッターを除去。ジッター除去回路をDAC直近に配置することで内部の信号経路で発生するジッターも軽減

専用電源トランスやカスタム大型ブロックコンデンサーなど定評のある高音質パーツを投入

電源回路については、DACアナログ回路専用やHDAMプリアンプ回路専用、さらには電子ボリュームやDACポストフィルター回路専用など、用途毎に分離したフルディスクリート電源回路を配備。それらエネルギーの源となるのが、アルミニウムシールドケース入り電源トランスとマランツのブランド専用にカスタムメイドされた大型ブロックコンデンサーなど、定評ある部材である。

プリアンプ部/ボリューム部/セレクター部/DAC部ごとに独立した専用巻き線を用意して、相互干渉をなくしたアルミニウムシールドケース入り電源トランスを採用

プリアンプ用電源には、サウンドマスターによる音質評価で選定したカスタム大型ブロックコンデンサーを導入している

現在は “D&M” というひとつ屋根の下に、マランツとデノンの製品が仲良く同居しているわけだが、それぞれが異なる歴史を歩んできたブランドだけに、ノウハウやアプローチは異なる。前述の電源トランスや筐体/部品の銅メッキ処理など、それぞれの製品哲学に基づく仕様の違いがいくつか見て取れるのは興味深い。

リアパネルを眺めると、アンバランス/バランス出力が上下に並んだプリアウト端子が壮観に映るAV 10に対し、AV 30のプリアウトのアンバランス/バランス端子は、やや離れてレイアウトされているのがわかる。バランス入出力端子の数自体もAV 30は少ない。

AV 30の背面端子部。HDMI端子は入力を7基、出力を3基備え、eARCにも対応する。11.4chプリアウト出力はRCA/XLRの両方を設置している

映像入力として、コンポーネント入力を搭載していることも注目ポイント

また、HDMIの入出力端子数や8K対応といったHDMI系は共通しているが、ビデオコンバージョン機能を有したコンポーネント信号入力は、AV 30のみの機能だ。加えて処理速度の速い最新世代のHEOSモジュールを搭載しており、ネットオーディオ機能も上位機同様に充実している。

ネットワークオーディオ機能「HEOS」に対応。音楽配信サービスでは、Spotify ConnectやQobuz Connect、Roon Readyをカバー。AirPlay 2もフォローしている

以上のことからわかるのは、AV 30が要所でAV 10の回路や部品を流用することで効率的なコストバランスを図っていることだ。翻れば、AV 30はAV 10がなければ生まれることのなかった製品といえよう。

チャンネル間の繋がりから定位感まで的確で細かな効果音も丁寧に描写する

AV 30の試聴は、音元出版の試聴室で実施。5.1.4chシステムにてクオリティをチェックした

試聴に際し、スピーカーはBowers & Wilkinsのハイグレードクラスである “700 Series Signature”を中心とした5.1.4構成で実施した。マルチチャンネル・パワーアンプは同社の「AMP 10」である。ちなみにAV 30の音場補正機能「Audyssey MultEQ XT32」を事前に計測・設定した上で実施した。

スピーカーシステムには、Bowers & Wilkinsの“700 Series Signature”から、「702 S3 Signature」 719,400円(税込/1台)、「705 S3 Signature」 719,400円(税込/ペア)、「HTM71 S3 Signature」 519,200円(税込/1台)をリファレンスとした

写真左は、AVパワーアンプ「AMP 10」(16ch) 1,100,000円(税込)。リファレンスのパワーアンプとして、AV 30と組み合わせた

まずはCDによるステレオ再生から。S/Nが良好で、くっきりとしたボーカルの音像フォルムの向こう側に楽器群が並ぶ様子と、そのパースペクティブがすっきりと見通せるのに感心。エネルギーバランスも安定している。

『フォードvsフェラーリ』(4K UHD DB)のCH17、映像のフレーム外から響くエキゾーストノートのつながりのよさに舌を巻く。コースを周回するその音が、チャンネル間を跨いで切れ目なくつながっているのが実感できたのだ。その爆音の中で、シェルビーやフォード首脳陣の会話がかき消されずに明瞭に聞こえてくる。その様子が実に精密だ。

写真上がAV 30、下がAMP 10の背面端子部

『TAR/ター』(BD)の廃墟に迷い込むシーンでは、場面の転換に合わせて歌声の定位方向が変わるのを的確に追従。滴が室内に反響する音やその高さもクリアに描写し、野良犬が水溜まりを歩くベチャベチャという音や呻き声がリスナー後方で怪しく響く様子にも、シーンの不穏さがリアルに伝わってきた。

『F1/エフワンF1』(4K UHD DB)のCH5、英国シルバーストーン・サーキットでのレースの序盤シーンでは、場内アナウンスや歓声が頭上で響き渡る様子と共に、ハイブリッド・エンジン特有の甲高いエキゾーストサウンドの爆音の中で、スイッチの切替え音やタイヤの軋む音、ブレーキノイズやスピンした時の砂利の音など、細かな効果音が実に丁寧に描写された。

自動音場補正機能「Audyssey MultEQ XT32」を採用。ハイトスピーカーは、トップフロント/トップリアだけでなく、フロントハイト/リアハイトやイネーブルドスピーカーを組み込んだフロントDolby/バックDolbyを選択できる

サブウーファーは最大で4台に対応。モードもLRを認識した「指向性」を選べる

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