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PR製造工場取材レポート

ホームシアターに欠かせない“高品質”スクリーンはどう作られているのか? オーエスグループ幹部が明かす開発背景

公開日 2026/02/27 06:30 出水 哲
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オーエスグループのものづくりに対する思いやこだわりを確認すべく、株式会社オーエスエム 兵庫工場へ取材にお邪魔した。今回は、その製造現場最前線をじっくり紹介したい。

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壁は映像を「映すこと」はできても、映像を「再現すること」はできない

その前に、最近はスマートプロジェクターが人気で、手軽に大画面を楽しんでいるユーザーも増えている。しかし実際には、壁に映像を投写している方も多いという。そんな状況について、スクリーンメーカーとしてはどう考えているのだろう?オーエスグループ代表の奥村正之氏に聞いてみた。

今回取材に伺った兵庫県宍粟(しそう)市は、神戸や岡山、鳥取から80 - 90kmという交通の要所(日本のほぼ “へそ”)に位置する。兵庫工場には7つの建屋が並び、OSブランド製品の製造や輸入製品の取扱いなど様々な業務を担っている。

「そういったケースが多いことは知っていますが、勿体ないですね。スクリーンは、映像体験の質を決める根本になります。プロジェクターがどれだけ進化しても、最終的に視聴者の目に届くのはスクリーンで反射した光なんです。

壁は映像を “映す” ことはできても、映像を “再現する” ことはできません。スクリーンは、映像の明暗/色/精細感を正しく再現するために作られています。単に映像を見るだけなら壁投写でもいい場合はありますが、コンテンツに込められた意図を読み取り、感動を得るにはスクリーンは必要だと考えます」(奥村氏)

確かに、一般的な家庭の壁面は真っ白ではないから色も正しく再現できないし、光の反射特性(ゲイン)も低いため画面が暗くなりがちだ。コンテンツが持っている魅力、監督やアーティストが作品に込めた狙いをきちんと受け取るためにも、プロジェクターとスクリーンはセットと考えるべきだろう。

スマートプロジェクターと組み合わせてみたい、色々なスクリーン

「パペルマット/SMH-060WN 60インチ」(写真左)「フレピタ/FP-085Z1 55〜85インチ」(写真右)

スクリーンというと、天井に取り付けて昇降するものというイメージをお持ちの方が多いだろう。オーエスグループでは、それ以外にもより手軽で扱いやすいスクリーンを発売している。

「パペルマット」は、100%パルプを基礎にしたいわゆる紙素材のスクリーンで、60インチ/16:10のサイズでわずか580gと軽量なので、ピンなどで簡単に吊ることができる。

もうひとつの「フレピタ」は、プロジェクターのスクリーンでは世界初となる伸縮性のある生地を使ったスクリーンで、付属の磁石式クランパーを使って金属面に貼り付けたり、ロープなどで引っ張ることで、どこでも使用可能。汚れても洗濯できるので、屋外使用も安心だ。40 - 55インチ、55 - 85インチ、85 - 120インチのサイズが可変する3種類をラインナップしている。

では、そんな重要なスクリーンというアイテムについてオーエスグループではどんなものづくりを心がけているのか。兵庫工場での製造工程を拝見しながらお話を伺った。

重要なコーティングの工程のために、独自で専用マシン(名称:シリウス)を開発

兵庫工場は、A - Gの7棟で構成されている。なかでもオーエスグループのスクリーン製造で重要な “コーティング” の工程を受け持っているのがC棟だ。レイロドールやアキレイllはスクリーン生地の表面に独自のコーティングを施すことでそれぞれの特性を付与している。

もちろんコーティングの作業は以前から行われていたが、それらは職人による手作業だった。だが手作業ではコーティングの均一さを確保するのは難しい。サイズが大きくなればなおさらだ。

そこでオーエスグループではスクリーン用のコーティングマシン(名称:シリウス)を独自に開発している。その目的について、生産本部 部長の森下伸也氏が解説してくれた。

レイドロール、アキレイUは1枚1枚輝度測定を実施した品質管理をしている。C棟には測定用のプロジェクターや輝度計も設置されており、出来上がったスクリーンの3度ゲインや半値角などについて、抜き出し検査をここで行っている
(3度ゲイン:スクリーン正面(光軸)から3度ずれた位置で測定した、ゲインの基準値)

『レイロドール』と『アキレイII』に求められる高品質なコーティングを実現するため、私たちは量産化と品質安定を目指して『シリウス』を開発しました。

この工程で最も重要なのが、塗布直前のコンディション調整です。温湿度のわずかな変化でも塗料の広がり方は変わるため、ノズルの角度や吐出量をグラム単位で微調整し、常にベストな状態を作ってから本番に入ります。

塗装時は生地ごとに最適な回数を設定し、重ね塗りによるムラが出ないよう工夫を凝らしています。加えて、C棟作業場内は空調により温湿度を管理。機械の調整と環境のコントロール、この両輪によって、ムラのない美しい幕面を生み出しています。

以前、特約店の方にこの工程を見学いただいた際には、『レイロドールは高価な製品だと思っていたけど、これだけ手間をかけているならむしろ安いですね。』と言っていただきました」(森下氏)

兵庫工場のC棟に設置されている、独自開発したコーティングマシン。壁一面に組まれたアングルにベース生地を取り付け、その表面に独自開発の塗料を塗布する仕組みだ

吹付け作業を拝見し、品質管理に対する真摯な姿勢に驚いた

さらに同社では、コーティング剤についても自社開発している。その点について、生産本部スクリーン製造部 課長の藤原洋平氏に伺った。

「弊社は、ワイドレンジを追求したホームシアター用モデルとして2000年にピュアマットシリーズのスクリーンを発売しました。その後HDRが登場したことを受け、4 - 5年かけて次の幕面を研究しました。そこでは、回帰型でもなく、拡散型でも反射型でもない、『すべてのいいとこ取り』をしたスクリーンを作ろうと考えました。

まず、ベースとなる生地を選びます。どの生地を選定するかによって映像の印象が変わるので、慎重に行う必要があります。その生地の表面にコーティングを施すことで製品が出来上がりますが、コーティング剤の調合によっても仕上がりが変わります。

ただコーティング剤の調合方法は無限にあり、どれが一番最適かはやってみなければ分からないため、トライ&エラーの繰り返しでした。調合では、反射特性、回帰性などのスクリーンの特性に合わせて様々な素材を混ぜています。

そこでは塗料とビーズの配合バランスがポイントで、さらにビーズの大きさも重要です。『アキレイU』の方が『レイドロール』よりビーズの密度を増やしていますし、サイズも特性によって変えております。

オーエスグループのホームシアター用スクリーンは、織物(ファブリック)のベースにバックコーティングや表面コーティング処理を行っているのも特長とのこと。しかもベースは織り方が特殊なのでモアレも発生しないというメリットを備えている

吹き付け工程において、コーティング剤がすべて生地を覆いつくしてしまうのは好ましくありません。適度に剤を落とし、微細な隙間を残すことで初めて、拡散型スクリーン特有の質感が生まれます。そのため、最適な質感を追求し、吹き付けの圧力や強度の微調整を重ねました。

吹き付け工程における最適な塗布条件は、スクリーン特性によっても変化します。例えば、アキレイIIでは一定の付着量を確保する一方、レイロドールでは付着を抑制する制御が求められます。 こうした塗布量や角度の選定には、1年を超える検証期間を費やしました。現在はこれらのプロセスを数値管理(データ化)することで、歩留まりの改善と品質の安定化を実現しています」(藤原氏)

なおC棟はコーティング作業の他に、完成したスクリーンの検査にも使われており、室内にはそのためのプロジェクターや輝度計も用意されていた。これらを使って抜き出し検査を定期的に行っているそうで、C棟はオーエススクリーンの品質の要とも言えるだろう。

カットマシン(名称:アンタレス)も導入し、生産性をアップ

150インチサイズまで裁断できるカットマシン(名称:アンタレス)も導入されている。CADで設計した形の通りに左の刃部分がカットしてくれるので、あらゆる形状の裁断が可能だ

こうして仕上がったスクリーン生地やその他部品は、隣のB棟に送られ、裁断、組立、そして出荷前検査が行われる。

裁断工程には最新の自動カットマシン(アンタレス)を導入。150インチまではCADデータを基に、平面性を保つためのテンションタブ(耳部分)を含めた複雑な形状も、短時間かつ高精度に切り出すことが可能だ。

しかし、ここでの真の見せ場は、その先にある「溶着技術」だろう。 同社では、継ぎ目のない一枚生地では製造不可能な、200インチはおろか「幅12m(40フィートコンテナサイズ)」をも超える超大型スクリーンの製造を可能にしている。

通常、生地をつなぎ合わせる際は熱を加えるのが一般的だが、それでは溶着部分に「艶(テカリ)」が出てしまい、映像を投写した際に違和感が生じてしまう。そこで同社が採用しているのが、高周波振動による溶着だ。

「熱で溶かすのではなく、分子レベルで振動させて接合しています。これなら艶が出ず、映像への影響もありません。ただ、生地の種類によって最適な周波数や圧力は異なります。長年の経験からこれらを全て数値化し、職人の勘に頼らず標準化できているのが当社の強みです」(藤原氏)

さらに驚くべきは、この高度な溶着技術を「現場」に持ち込める点だ。 小型のポータブル溶着機を使用することで、搬入経路が確保できない高層階や狭小な現場でも、分割して搬入した生地をその場でつなぎ合わせることができる。「入らないから」と大型スクリーンを諦めていた現場にとって、この現場対応力は唯一無二の解決策となるはずだ。

製造方法による幕面の変化にまで注意しているというのも驚きだが、超大型スクリーンの場合は輸送の関係もあり、設置現場で生地をつなぐ場合もあるそうだ。オーエスグループではそのために小型の溶着マシンも準備している。

スクリーン生地を溶着しているところ。写真中央の赤いパーツが高周波で振動することで、重ねた生地を境界が目立たない状態でくっつけることができるそうだ

様々な設置に対応できるよう、スクリーン機構も豊富に揃える

続いて生地をローラーに取り付けるのだが、ここにもオーエスグループならではのこだわりが満載だ。自社の検査基準で選別し精度をあげているローラーを検査するためのマシン(名称:カノープス)で、納入された部品にたわみがないか否かをD棟で検査し、自社の規格(両端から真ん中の誤差が1mm以内)に合わない場合は修正して使っている。

オーエスグループのスクリーンはローラー内部にスプリングやモーターを搭載しているが、ここについてもスクリーンサイズに応じた最適な機構を開発するほどのこだわりぶりだ。

なおオーエスグループの一部のスクリーンには、スクリーンケース本体(筐体)を取り付けたままローラー部分を入れ替えることで工事が完了する、特許取得済みのオーエス独自のカートリッジ式が採用されている。

また、レイドロールからアキレイIIといった生地種類の交換にも対応。メンテナンスも簡単になり、交換したカートリッジはリユースできるのでエコにも繋がる。

大画面ホームシアター愛好家に嬉しい提案として、ぜひ多くの読者にも知っていただきたい。

徹底した品質管理が、オーエスブランドの信頼の高さに繋がる

組み立てや検査が完了した製品は、G棟からユーザーのもとへ送り出される。特筆すべきは、その背後にある基幹システムだ。オーエスでは、部品の調達、受入から組み立て、完成検査、出荷に至るまでの一連の工程を、ERP(基幹システム/AmeiosNaviシステム)を中核としたトータルシステムで統合管理している。

このERPは単なる生産管理にとどまらず、営業、調達、生産、品質、物流、在庫、出荷、さらには請求・会計に至るまでを横断的につなぐ共通プラットフォームとして機能しており、事業全体をリアルタイムで可視化する “業務の中枢” を担っている。

各工程ではバーコードによるデータ取得が行われ、部品単位の情報が工程を跨いで連続的に紐づけられる。どの部品が、いつ、どの工程を経て、どの担当ラインで組み上げられたのか。その履歴はERP上に時系列で蓄積され、完成品のシリアル番号と結び付けられることで、製品ライフサイクル全体を追跡可能な状態が構築されている。

つまりオーエスのERPは、現場の作業実態と経営判断を分断することなく結びつける仕組みであり、購入後の製品トレーシングにまで対応できる高い完成度を備えている。この点も、ユーザーにとって大きな安心材料と言えるだろう。

同社では自社製品に限らず、輸入製品についても国内の安全基準を満たしているかを国内の検査基準で検査を行うことや、電気製品に関してPSEで要求されている検査基準で受け入れを実施した一貫した管理・出荷している。こうした品質管理と情報管理のレイヤーを重ねた体制こそが、「オーエス」というブランドの信頼性を下支えしている。

取材の最後、兵庫工場の会議室でピュアマットIII Cinema、レイロドール、アキレイII、ホワイトマットの4種類を用いた映画のトレーラーや夜景の4K映像を視聴した。明かりを残した状態でも、レイロドールとアキレイIIが示すピークの明るさと空気感のクリアさが特に印象に残った。

一方で部屋の照明を落とすとピュアマットIII Cinemaの自然な発色、見通しの良さが際立ってくる。前編の藤原氏の話にあった通り、自分の視聴環境に合わせてスクリーンを選ぶ意味が大きいことが確認できた。

兵庫工場では、納品される部品をすべてシステムで管理している。膨大な数の部品を使用頻度やサイズによって分類し、保管場所もわかりやすくすることで、作業効率を向上させた
出荷前の製品が並んでいるエリア。スクリーンはもちろん、輸入販売製品も同じように扱われている。大型スクリーンを保管するための可動式ラックも特注したそうだ

工場内では、2台のAGV(無人搬送車)が休むことなく行き交っている。名前はカペラとポルボックス。かつては製造棟から物流部門まで、作業員が重いカートを引いて広い構内を往復していた。

しかし現在は、このAGVが搬送業務を完全に代行。スタッフが本来の「造り込み」に専念できる環境が整い、広大な工場を歩き回る労力は過去のものとなった。黙々と荷物を運ぶその姿は、スマート工場の進化を象徴する風景だ。

ホームシアターの大画面は、映画ファンに限らず、ライブなどの音楽愛好家、アニメ好きまで夢中になれる素晴らしい趣味だ。スマートプロジェクターをはじめとする再生環境が整っている今だからこそ、多くの方にきちんとしたスクリーンとの組み合わせで体験して欲しいと思う。

次回以降では、オーエスグループが手掛けるホームシアターのための様々な取り組みについて、さらに詳しく紹介します。

業界初IP制御と新機構を搭載し、定評ある保守性も継承した次世代電動スクリーン!

正面左側には、制御基板や無線操作用の回路を内蔵。現在の動作状態を確認するLED(写真中央で緑色に点灯している)も準備されている。もちろんローラーはカートリッジ式で、交換も可能
スクリーン機構(筐体)を天井や壁に取り付ける金具も改良され、ドライバーを使わなくても固定できるようになった

今回、オーエスグループが新たに開発した次世代の電動スクリーン「EZシリーズ」を見せてもらった。

最大の注目点は、電動スクリーンとして業界で初めて、LANポートを標準搭載し「IP制御」による直接操作を可能にしたことだ。PCやタブレットのWebブラウザから、専用ソフトなしで昇降操作やステータス確認(昇降回数や動作状態)が直感的に行える。さらにWi-Fiによるワイヤレス操作にも対応しており、スマートなAVシステムの構築において、まさにゲームチェンジャーと言える進化を遂げている。

また、本シリーズは実用面での完成度も極めて高い。同社のTP/EPシリーズ等で定評のある「生地カートリッジ着脱機構」を継承。天井や壁に設置した状態のまま生地の交換ができるため、将来的なメンテナンスや生地のアップグレード時も本体を取り外す必要がなく、作業効率が非常に高い。

さらに、設置後の平面性や水平レベルを微調整できる新機構や、経年変化による生地のしわを簡単に整えられる「テンション調整ノブ」も装備。前面パネルでブラケットを隠すシームレスな外観設計と相まって、プロの施工現場から求められる高い要求に、最新のネットワーク技術と熟成されたメカニズムの両面で応える仕様となっている。

現在は業務用としての展開だが、この革新的な機構を搭載した家庭用モデルの登場も検討中とのこと。ホームシアターの利便性と信頼性を劇的に変えるであろう続報を、ぜひ楽しみにしていただきたい。

(提供:オーエスグループ)

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