公開日 2014/10/10 10:59

【第101回】“当世ポタアン事情” <前編> ポタアンって何? 基礎知識を総まとめ

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
高橋敦
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▼補間ハイレゾ化再生機能

統一された名称がないのでここではとりあえず便宜上「補間ハイレゾ化再生機能」とでも呼んでおく。非ハイレゾの音源ファイルに含まれる音声情報を解析し、各社独自のアルゴリズムで「本来の音には他にどのような成分が含まれていたのか(もしもハイレゾだったらどういうデータが含まれているのか)」を推測し、その成分の補間を含めてサンプリング周波数と量子化ビット数の拡張を行う。

つまりはCDフォーマットの44.1kHz/16bitとかの音源ファイルを192kHz/24bitのハイレゾ相当とかに引っ張り上げて高音質化して再生するという機能だ。映像でのDVDソースからBD(2K)相当やBDから4K相当へのアップスケーリングの際に利用される機能を想像してほしい。なお、元からすでに96kHz/24bitあたりのハイレゾなデータもさらに192kHz/32bitとかに補間する場合もある。

その効果は、「変化のあり/無し」で言えば「ある」。ただその変化を好ましいものと捉えるかはその人の感覚や考え方次第。聴いた印象が好くてポジティブに「理屈はさておき、いい音だ!」と思う方もいれば、聴いてみて「何か不自然」と感じたり、「補間とはいえ音源に加工を加えて聴こえを調整するのは違うし、ハイレゾとは別物」という考え方の方もいるだろう。そのあたりは各自の判断で。

またポタアンにおいてのこの機能は、例外はあるがデジタル接続でのハイレゾ再生が一般的ではないiPhoneとのLightning接続で「非ハイレゾ音源を非ハイレゾ接続なんだけれどハイレゾ風に再生できる」を実現できることもポイント。これに該当する各社の機能としては主なものでは、

JVC「SU-AX7」搭載のNew「K2テクノロジー」

Denon「DA-10」搭載の「Advanced AL32 Processing」

…だ。これらはすでにポタアンに搭載され製品化されている。

他に同種の技術としては、ソニーがハイレゾウォークマンに搭載しており、ハイレゾ対応となる次期Xperiaにも搭載し、後述のポータブルヘッドホンアンプ「PHA-3」にも搭載する「DSEE HX」がある。

注意点として、この類いの機能は処理能力を要することでバッテリー消費が早まる場合もある。ただSU-AX7のK2は、機会があってメーカーの方に聞いてみたところ、バッテリーへの影響は意外と小さくて気にならないレベルだったそうだ。

▼バランス駆動

バランス駆動とは何か?を詳しく説明すると文字数を食い過ぎるのでそれは回避するが、ここでは簡単に説明しておこう。ただし、わかりやすさ重視で話を単純化したのでやや不正確な部分もある。詳しく正しく理解したい方は各自でより詳細な情報を探してみてほしい。

一般的なヘッドホンアンプ回路とイヤホン&ヘッドホンでは、「ケーブルで伝送される音声信号は左の+、右の+、左右のーの共有の3本の信号線での伝送」であり「左右のドライバーは同じ1組のアンプ回路で駆動される」という構成。

対してバランス駆動システムは「ケーブルで伝送される音声信号は左の+、右の+、左のー、右のーの4本の信号線での伝送」であり「左右のドライバーはそれぞれ1組=計2組のアンプ回路で駆動される」という構成だ。そのおかげでバランス駆動では、左右の信号の干渉が排除される上に、左右それぞれのドライバーがより力強く正確に駆動される。これはもちろん音質向上の大きな要因になり得る。

そのバランス駆動だがその実現には、「左右のーの信号線を独立させたバランス駆動用ケーブルへのケーブル交換が可能なイヤホン&ヘッドホン」を「バランス駆動対応ケーブル」を使って「バランス駆動対応のヘッドホンアンプ」と組み合わせて使用することが必要だ。

またバランス駆動の接続端子にはいまのところ業界統一規格というものが存在せず、様々な端子の長所短所(例えば耐久性や省スペースさ等)を判断してこれがベターと各社それぞれが判断したのであろう端子を各社それぞれが採用している。なので互換性というものは低い。ここは今後の大きな課題だ。さて、ポタアンでバランス駆動対応の製品というと、

ALO audio「Rx MK3-B+」

RATOC「REX-KEB」シリーズ(写真はREX-KEB02iP)

…あたりがメジャーどころだろうか。さらに、先日ソニーから発表されたばかりの「PHA-3(関連ニュース)」は、バランス駆動、DSD再生、DSEE HX搭載というてんこもりっぷりで注目せざるを得ない。なお本機の場合、バランス駆動出力は3.5mmステレオミニ端子を2系統用いた独自規格を採用している。

Sony「PHA-3」

バランス接続したところ。バランス駆動出力は、3.5mmステレオミニ端子を2系統用いた独自規格を採用

■まとめ

ということで今回は、「ポタアンの基本とポイントのまとめ」的な記事とさせていただいた。そして次回は今回のポイントを踏まえた上での「いまどきのポタアンの代表例をまとめてレビュー」記事の予定。タイプや注目ポイントをばらけさせた製品をピックアップしたので、参考になればと思う。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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