公開日 2011/11/09 11:54

声の帯域はエネルギーが集中し、表情豊かな音色を堪能できた − 「T-50」を山之内正がレビュー

厚みと密度の高さを求める聴き手に、十分な満足感を与えてくれる
山之内正
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出力管にEL156を搭載したプリメインアンプ「T-50」は、CAVの真空管アンプのなかでもひときわ個性的な製品だ。EL156は、ノイマン製カッティングマシンのドライブアンプに使っていたというエピソードから信頼性や安定性の高さを連想するが、この真空管を出力管に使った本機の再生音もその期待を裏切らず、重心の低い安定したサウンドを繰り出してくる。


T-50

T-50のサイド/リア(写真はクリックで拡大)
ボーカル、ピアノ、ベースなど、どの楽器を聴いても音調はウォームで高密度。特に声の帯域はエネルギーが集中していて、期待通りの表情豊かな音色を堪能することができた。しかし、ボーカルの音像が必要以上にふくらむということはない。むしろ声の輪郭は鮮明で揺らぎがなく、安定したイメージが左右スピーカー中央、やや前方にせり出してくっきりと浮かび上がる。

オーケストラを聴くと、安定感の高さにスケールの大きさが加わり、トゥッティの押し出しの強さやティンパニーの音圧感にトランジスターアンプとの違いを聴き取ることができた。細部を詳細に描き出すHi-Fi調の描写ではないが、厚みと密度の高さを求める聴き手には十分な満足を与えてくれるだろう。残響の広がりや余韻の伸びやかさなど、空間再現にはゆとりがあり、音場の見通しがいい。ノイズフロアが低く、精妙な響きを忠実に再現していることがうかがわれる。

シャーシの構造を吟味したうえで十分な剛性を確保した設計が功を奏しているのか、かなり大きめの音量で聴いても音の重心がぶれず、安定したサウンドを再現することにも感心した。定格出力はチャンネル当たり45Wと余裕があり、大編成オーケストラに代表されるダイナミックレンジが広い現代のデジタル録音を聴いても、強弱の幅の広さに不満を感じることがない。やや大きめのフロア型スピーカーとの組み合わせも十分視野に入る。その意味でコストパフォーマンスはかなり高いと思う。

<山之内正 プロフィール>
出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

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