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公開日 2020/10/22 10:39

コードレス掃除機などで非純正バッテリーによる事故がネット購入を中心に増加。安心・安全な商品を見極めるポイントとは

ネット通販購入に潜む落とし穴
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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■事故が多く報告されたのは充電式の掃除機と電動工具

最近、非純正のリチウムイオンバッテリーによる事故が急増している。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の報告によると、18年度は13件だった同事故が、19年度は12月31日までの集計時点で49件にまで急拡大。中でも目につくのが、うち35件を占める充電式掃除機と11件を記録する充電式電動工具によるものだ。

2014-19年度 非純正バッテリーが関係するリチウムイオンバッテリーの事故件数(NITE)

掃除機は、かつて主流だったキャニスタータイプが年々構成比を下げ、スティックタイプはじめ、ロボットタイプやハンディタイプなど多様化が進んでいる。中でも人気が高いスティックタイプは、GfK Japanによると、2020年上半期に掃除機の数量構成比で過半数を突破し、販売台数の85%をコードレス式が占めている。

コードレス式スティックタイプ掃除機といえば、代名詞ともいえる存在がダイソンだが、実は、19年度の充電式掃除機による非純正リチウムイオンバッテリー事故の多くは、ダイソンのコードレス掃除機への互換を謳った非純正バッテリーによるものだった。

2019年8月9日、経産省は「ネットモールで充電式掃除機用として販売されたSHENZHEN OLLOP TECHNOLOGY社製バッテリーパックの使用を中止してください」と次のようなニュースリリースを発信し、注意を促した。

「ダイソン株式会社からの報告によれば、ネットモールで充電式掃除機用として出品・販売されていた純正品でないバッテリーパックをダイソン株式会社のコードレス掃除機に組み込んで、充電中に出火したとみられる火災が発生しています。同様の火災は、今年の3月以降、重大製品事故として8件発生し、うち、5件は7月に発生しており、事故件数が急増しています。詳細な事故原因については、現在調査中です。

火災事故の調査で確認された純正品でないバッテリーパックには、複数のブランド名が確認されましたが、いずれもバッテリーパックの内部構造が同一であることから、同じ製品が複数のブランド名で販売されているとみられています。また、これらの他社製バッテリーパックには、製造事業者として、SHENZHEN OLLOP TECHNOLOGY CO.LTDの表示が確認されています。

ダイソン株式会社は、上記の火災事故を予防するため、純正バッテリーの使用を呼び掛けています」。

コードレス式スティックタイプの掃除機には、これまで主流だったキャニスタータイプの掃除機とは異なり、“バッテリー交換”というランニングコストが新たに発生する。交換用紙パックなどとは異なり、決して安価ではない想定外の出費とも言えるだろう。

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター 広報担当・佐藤秀幸氏は、上記リリースでも主な購入先として挙げられたネット通販の普及を事故拡大の大きな要因のひとつとして指摘する。「インターネットで気軽に買い物を楽しむ人が増えていますが、品質まできちんと確認できないまま、単に安いからと手を出してしまうケースは珍しくありません。互換バッテリーのケースでも、非純正品だけれども自分は大丈夫だろうという過信に落とし穴が潜んでいます。事故が増えてくれば、ニュース等で知って用心することもできますが、このケースでは急拡大したため消費者の対応が間に合いませんでした」。

独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)製品安全センター 広報担当・佐藤秀幸氏

経済産業省では当時、アマゾンジャパン合同会社、株式会社メルカリ、ヤフー株式会社、楽天株式会社、auコマース&ライフ株式会社、株式会社リクルートライフスタイル、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社モバオクのネットモール事業者8社に対し、対象製品の販売自粛と購入者への使用中止の注意喚起を行うよう協力要請を行っている。

■周囲の物や建物へと火災が広がる危険性も

互換バッテリーによる事故の被害について佐藤氏は「バッテリーはセルを何本も使っていることが多く、そのうち1本でも不具合があれば、他のセルも連鎖的に燃えたり、破裂したりすることになります。火災など拡大被害におよぶ可能性が高く、当該商品だけでなく、周囲の物や建物へと被害が広がる危険性もあります」と忠告する。

コードレスクリーナーや電動工具で、非純正のリチウムイオンバッテリーが原因となる火災などの事故が急拡大している。注意が必要だ(写真提供:NITE)

非純正の互換バッテリーによる事故の発生状況では、入手方法では「インターネット購入」が92%を占めているのが大きな特徴だ。事故時の使用状況では、「充電中」が83%を占め、次いで「使用中」10%、「保管中」5%となる。充電中の事故での使用回数・期間では、「初回」が8%、「1年未満」が62%と両者で7割を占める。

NITEでは、非純正バッテリーによる事故として、次のような具体例を紹介。注意を喚起している。

【事例1】インターネットで購入した電動工具用バッテリーパック付近から充電中に出火。床を焼損し、足にやけどを負った。
【原因】非純正バッテリーのバッテリーパックに、バッテリー間の電圧のアンバランスを検知したり、バッテリーの異常を検出したりする安全装置の機能がない構造であったため、過充電によって異常発熱し、焼損したものと考えられる。

【事例2】充電中の掃除機付近から出火し、周辺を焼損した。
【原因】非純正バッテリーのバッテリーパック内部でショートして異常発熱し、焼損したものと考えられる。

【事例3】ネットオークションで購入した中古品のノートパソコンを充電中、バッテリーパックから出火し、周辺を焼損した。
【原因】非純正バッテリーのバッテリーパック内のバッテリー6本のうち1本が内部ショートして異常発熱し、焼損したものと考えられる。

■販売事業者の連絡先が確かなことを確認する

非純正バッテリーによる事故をどうすれば防げるのか。佐藤氏は「リチウムイオンバッテリー搭載製品の正規ブランド事業者が指定する純正バッテリーは、製品本体及びバッテリー双方の制御機能で安全に動作するよう設計されています。一方、非純正バッテリーは制御機能が正常に働かず事故に至る恐れがあるものもあり、購入する際はバッテリーの販売事業者に安全性について確認を行ってください。また、非純正バッテリーの中には品質の悪いバッテリーが使用された製品も確認されています」と安全性に対する確認の重要性を訴える。

特に問題となるのは、入手方法で92%を占めるインターネットでの購入だ。「インターネットで購入した製品で、事故発生後に事業者に問い合わせしようとしても、連絡先が不明であったり、海外の連絡先しか表示されていなかったりするものもあります。こうした製品はまず疑ってみること。製品を選ぶ際には、販売事業者の連絡先が確かなことを確認するようにしてください。また、中古品を購入した場合には、非純正バッテリーに交換されていないか確認することも大事です」。NITEでは、危険なブランドや製造事業者が判明した際には、協定を締結しているネットモール事業者へ情報提供も行っている。

事故を防ぐためには正しい使い方も重要だ。「使用中に熱くなるなど異常が認められたときは、ただちに使用を止め、事業者に相談すること。夏場に直射日光があたる高温になる場所や、冬場に極端に寒くなる場所に放置しないこと。また、ぶつけて衝撃を与えたり、水没させたりしないように気を付けてください」と説明する。

コロナ禍のステイホームで、ネット通販の売上構成比はさらに拡大する。消費者庁の有識者検討委員会では、ネット通販の運営者に対して出店業者の身元を特定できるように求めるなど、特定商取引法や預託法の見直しが進められ、ネット通販のさらなる規制強化に向けた法整備も急がれている。しかし、違反者とのいたちごっごの面も否めず、ネット通販事業者自らが、出店者に対する審査をもっと厳密に行って対処していくなど、その姿勢も問われるなど、ネット通販そのものの安全に対する根本的な対策の見直しが求められている。

そして、事故を未然に防ぐためには、消費者自身も当然、自ら安心、安全な電気製品を見極めていくことが必要だ。聞きなれないブランド、また、ブランドやメーカーさえわからない商品も増えている。そうした状況下での商品選びに、消費者を手助けをしてくれる力強い味方が、電気製品に表示されているPSEマークやSマークだ。

とりわけSマークについては「第三者認証機関が公平・中立な立場から、厳しい検査により安全性を客観的に評価し、認証を与えるものです。商品選びの際のひとつの目安として、ぜひ、注意して確認してほしい」と呼び掛ける。メーカー各社においても、より複雑になる商環境のもとで、消費者に対してどのように安心・安全を担保していくのか。その目印ともなるSマークに改めて目を向けていきたい。

家電製品の品番や電圧が記されたシールにSマークは表示されている

本体にSマークが刻印されたドライヤー

メーカー、ネット通販を含めた販売事業者、そして消費者の間での情報共有がますます大事になっている。その土壌を築くためにも欠かせない、製品事故に関する情報を調査・分析し、再発防止やリスクの低い製品開発に向けて必要な情報を発信するNITE。「何より正しく伝えていくことが大切」と佐藤氏は力を込める。

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