公開日 2026/02/28 07:00

神は細部に宿る、音は軸受に宿る。リン「LP12」、KAROUSELとCIRKUSの音質聴き比べを体験

3/7よりダイナミックオーディオ5555にて聴き比べイベントも開催
編集部:筑井真奈
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手のひらに収まる小さな円柱形のパーツが、どれほどレコード再生を豊かなものにしてくれるのか。オーディオの深い世界に踏み込むまで私はそんなことを知りもしなかった。

50年以上生産され続ける稀有なアナログプレーヤー

リンのLP12というのは、特異なアナログプレーヤーである。50年以上変わらずに生産され続けているオーディオ機器、という意味でも世界に稀なる存在であるし、何より“パーツを自在に組み合わせて”システムを組み上げる、という点でも独自の理念に貫かれている。

リン アナログプレーヤー「LP12」

元来オーディオというのは、アンプやプレーヤー、スピーカーを組み合わせて時間をかけて自分なりのシステムを構築していくことにこそ、かけがえのない喜びがあった。(忙しい現代においては、MNGとつぶやくことがオーディオの楽しみになっているかもしれないが…)。だが、その組み合わせをパーツ単位で実現していることに、リンの独自性がある。

アナログ再生のグレードアップというと、多くの場合、カートリッジやトーンアームを想像するだろうが、リンの考え方は全く違う。

「軸受」と呼ばれる、長さ7cm程度、直径2cm程度の小さな円柱。この小さなパーツの中に、リンが考える「良質な音」のエッセンスが詰まっている。

LP12に搭載される最新の軸受「KAROUSEL」

スピンドルの裏側で、回転するターンテーブルを支えている。軸受とサブシャーシが接続され、ひし形のサブシャーシのもう一つの頂点はトーンアームの軸受に接続される。

ダイナミックオーディオ5555の上遠野さんは、「KAROUSELは、LP12のグレードアップにおいて、最も費用対効果の高いパーツと言えます」と断言する。

50年を超えるLP12の歴史において「軸受」は2回しかアップデートされていない。オリジナルのLP12に搭載されていたものを始祖として、1993年に登場したCIRKUS、そして2020年に登場したKAROUSELである。

3つを並べてみる。一番古いものはアルミ、2番目の黒いCIRKUSは鉄、最新のKAROUSELはステンレスと、素材もそれぞれ異なり、質量も少しずつ重くなる。

左から「KAROUSEL」、「CIRKUS」、オリジナルの軸受

微細な信号を扱うアナログプレーヤーは、どこに手を入れても音が変わる…わけだが、ことにリンは、この外観からは見えない軸受、そしてサブシャーシの重要性にこだわり続けている。それこそ、カートリッジやトーンアームよりも重視しているのではないか、と思うほどに。

KAROUSELとCIRKUSの音質比較

今回は、3月7日からダイナミックオーディオにてスタートするLP12三部作イベントに先駆けて、CIRKUSとKAROUSELを聴き比べるという貴重な体験をさせてもらった。MAJIK LP12を2台、(プリンスの仕上げと)軸受以外、全て同一のパーツを使用したものを用意し、聴き比べを行った。

プリンスの仕上げと軸受以外、共通の部材を使った

LP12からはMAJIK DSM/5の内蔵フォノイコライザーに入力、スピーカーはEXAKT AKUDORIKというシステム。カートリッジはKOIL、トーンアームはKRANE、スタンダードサブシャーシ、電源は内蔵型のMAJIK LP12 P/Sである。

メインスピーカーは「EXAKT AKUDORIK」

井筒加奈江の『Laidback2018』から「雨の鼓動」。CIRKUSにおいても、その透明感の高さや見通しの良さは存分に感じられるが、KAROUSELに変更した途端、世界が一変する。音像はぎゅっと引き締まり、ベースは低く深く降りてゆく。パーカッションの皮の響き、ウィンドチャイムの流れるようなさざめきに心奪われる。

スムーズで精度の高い回転は、明快なS/Nの良さ、それに伴って見えてくる細部の情報量の豊穣さとして立ち現れるのかと改めて思い知らされる。

新作アニメシリーズの始動で、阿鼻叫喚がネットに溢れる宇多田ヒカルの「One Last Kiss」。KAROUSELではギターの止め跳ね払いがより精緻で、明朝体のようなくっきりとしたサウンドを描き出しながらも、声の質感はどこまでも艶かしく耳に届く。10代に受けたアニメの洗礼からは逃れられないし、忘れられない人は、おそらく死ぬまで忘れられない。

オーディオとは本質的に“ノスタルジー”ではないか。過去に流れた時間、2度と現前しないその時を、黒い板の中に閉じ込めて、いま-ここに再現するものである。

だがそれは決して後ろ向きなものではなく、過去をみとめ今を生きるエネルギーになる。

ディープ・パープルの日本ライブ盤から、「ハイウェイスター」。1972年、私は生まれてもいない。だがその音楽は、何十回の繰り返しの果てにも新鮮に心を満たす。タイトなドラムの響きにガツンと全身が熱くなる。

そうだ10代の私は、ラジオとヘビメタだけが友達だったのだ。「一度きりのライブ録音で、よくもここまでの熱量を収めたものだ」と、14歳の私を41歳の私が冷静に見つめ返す。

そうだった、ダイナミックオーディオで開催されるLP12の三部作イベントを盛り上げるために書いてくれ、と言われたのだった。すっかり己のノスタルジーに浸っていた。

なので最後に言っておこう。KAROUSELはいいぞ。自分が愛してきた音楽に、新鮮な発見をもたらしてくれる。

2020年以降に新しく発売されたLP12には、すべてKAROUSELが標準搭載されている。しかし、日本にはおそらく“1万台ほどの”、それ以前に発売されたLP12があるでしょう、とリンジャパンの山口さん。

LP12はとても完成度の高いプレーヤーで、まさに生涯を共に過ごせるパートナーである。だが、どれだけ昔に生産されたLP12であろうとも、KAROUSELは装着できる、そうだ。50年も前の機械に現代のアップデートの可能性を残しているなんて、リンの先見性の高さに恐れ入る。

あなたのLP12に、あらたな息吹を。

そんなもので変わるはずないと思うなら、ぜひダイナミックオーディオのイベントに来訪を。

ダイナミックオーディオ5555 LP12三部作イベント

LP12三部作イベントは、ダイナミックオーディオ5555の「スプリングフェスティバル」のひとつとして、3月7日(土)、3月14日(土)、3月21日(土)の3週にわたって開催される。

3月7日は軸受やサブシャーシの聴き比べ(担当:上遠野さん)、3月14日はモーターや電源といった駆動系の聴き比べ(柴田さん)、3月21日は最上位グレード「KLIMAX LP12-BEDROCK」で探る「レコード再生の頂点」。単独で楽しめることはもちろん、すべて参加することで、よりLP12の多彩な音楽世界を知ることができるだろう。

<テーマA>「KAROUSEL & KOREその驚愕の効果を聴く」

場所:ダイナミックオーディオ5555 3F
日程:3月7日(土) 14:00 - 15:30
担当:上遠野 健氏

<テーマB>「モーター/電源でそんなに違うのか? 静かに回すことで見える真実」

場所:ダイナミックオーディオ5555 3F
日程:3月14日(土) 14:00 - 16:00
担当:柴田学也氏

<テーマC>「レコード再生の頂点 音楽に近づく究極のLP12とは」

場所:ダイナミックオーディオ5555 3F
日程:3月21日(土)14:00 - 16:00 
担当:トレードセンター 厚木繁伸氏

ダイナミックオーディオ5555
〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-18
予約・お問い合わせ : 03-3253-5555

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