公開日 2025/05/16 18:46

オルトフォン、“新定番MCカートリッジ”「MC Xシリーズ」。ステンレス一体成型フレーム&新磁気回路採用

MIM製法で高剛性&軽量フレームを実現
編集部:杉山康介
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オルトフォンジャパンは、“新時代の定番” を目標に開発したというMCカートリッジ “MC Xシリーズ” 4モデルを5月より発売する。ラインナップと価格は以下のとおり(価格は全て税込表記)。

MC Xシリーズ
・MC X40:179,300円(針交換価格:107,800円)
・MC X30:125,400円(針交換価格:75,900円)
・MC X20:89,100円(針交換価格:53,900円)
・MC X10:53,900円(針交換価格:33,000円)

これまでオルトフォンでは、1950年代末のステレオレコード登場にあわせてリリースした “SPUシリーズ” を皮切りに数多くのMC型カートリッジを発表してきたが、中でも驚異的な生産数を誇るのが「MC 10/20/30」の名を冠するシリーズだと説明。この定番シリーズに新たにフラグシップの「40」を加え、新時代の定番として生まれ変わらせたのが、この度発売する “MC Xシリーズ” だという。

トッププレートとフレームには、MC 10/20/30のシリーズとして初めてステンレス素材を採用。トップフレーム天面にはハニカム形状のリブが設けられており、フレームまで一体成型することでレコード再生時の不要共振を徹底的に排除した。

ステンレス素材は重質量による高い制振効果を持つ一方、複雑な形状での加工や、さまざまなトーンアームの対応自重に適合する重さに収めることが難しく、同社ではこれまで「MC Xpression」などハイエンドカートリッジのみでの採用に留まっていた。

そこで今回、金属粉末に可塑剤を練り合わせたペーストを高精度な金型に射出成型し、脱脂後に加熱することで元の金属粉末を焼結させる「MIM(Metal Injection Molding:金属粉末射出成型法)」製法を採用。“MC Windfeld /Cadenzaシリーズ”などの上位モデルのアルミハウジングに使われてきた、高密度と高強度を両立しつつ、質量も均一に揃えられる製法だという。

これによってステンレスでの複雑なハニカム形状の成型を可能にし、剛性を保持しつつ軽量化することに成功。先代 “MC Qシリーズ” は従来型アルミフレームと磁気回路の組み合わせで自重9gだったのに対し、MC Xシリーズは8.6gの軽量を実現している。

MIM製法によってステンレス素材のハニカム形状リブ成型を行い、剛性を確保しつつ軽量化を実現した

 

MIMは極めて高精度な金型などが必要になるため、製造コストが嵩んでしまうところ、MC Xシリーズでは全モデルのフレームを共通化させることで量産効果を発生させ、精度と質を落とすことなくコストダウンしたとのこと。

磁気回路も新開発のものを搭載。加工技術の進歩によって部品点数を減らすことに成功し、構成部品の一体化と高精度化をさらに進めたことで、カートリッジのチャンネルバランスや、定位感に大きく影響する磁気回路の組立精度を格段に向上させたとする。

さらにマテリアルのコストを度外視し、全モデルで高純度銀線のコイルワイヤーを採用。銀(Ag)は音声信号の伝送速度が最も速く、信号劣化も最小限で済むことから微弱信号の伝送には極めて理想的な金属導体だという。このコイルワイヤーは軽質量な十字型アーマチュアに巻きつけられるとともに、背後の各モデル専用ダンパーゴムによって振動系が適切に支持され、不要共振の制動も行われているとしている。

ハウジングは上位MC Cadenzaシリーズ、およびその祖となった「MC Jubilee」からヒントを得て、トップから針先方向へと向かうにつれて狭まっていく特徴的な形状となっている。この形状により針先先端方向の実行質量を小さくし、音溝をトレースして動作する際の質量バランスを最適化しているとのこと。

シリーズ最上位モデルの「MC X40」には、かつてのフラグシップであるMC Jubileeと同じボロンカンチレバー/無垢シバタ針を搭載。同社がこれまでに培ってきた施工の技術を惜しみなく投入した、高性能かつコストパフォーマンスに優れたMCカートリッジの決定版だとしている。出力電圧(1kHz、5cm/sec)は0.4mVでチャンネルバランス(1kHz)は0.5dB、チャンネルセパレーション(1kHz)は26dB、周波数特性は±1dB。

フレームの共通化によって質を担保しつつコストダウンを行っている(画像はMC X40)

 

セカンドフラグシップの「MC X30」は、原点に立ち返るべく初代30モデルと同じ無垢ファインラインのスタイラスチップとアルミカンチレバーを踏襲。銀線コイルも含め初代機と近似したコンセプトを持ちつつ、新型磁気回路とハニカムリブステンレスフレームでリファインされた “ネオ・MC30” だとする。出力電圧(1kHz、5cm/sec)は0.4mVでチャンネルバランス(1kHz)は0.5dB、チャンネルセパレーション(1kHz)は26dB、周波数特性は±1dB。

「MC X20」では無垢楕円針とアルミカンチレバーを採用。重質量なステンレス一体成型フレームの採用で再生音の重心位置が下がったことにより、SPUシリーズの重厚さとも異なる、腰の据わった低音を魅力とするカートリッジになったとのこと。出力電圧(1kHz、5cm/sec)は0.4mVでチャンネルバランス(1kHz)は0.5dB、チャンネルセパレーション(1kHz)は25dB、周波数特性は±1dB。

エントリーモデルの「MC X10」は、王道のアルミカンチレバーと楕円針をあわせることで新時代のオルトフォン・サウンドを体現する存在になったと説明。MC初チャレンジのアナログファンのみならず、再びアナログを楽しみたいベテランも十二分に楽しめるとしている。出力電圧(1kHz、5cm/sec)は0.4mVでチャンネルバランス(1kHz)は0.5dB、チャンネルセパレーション(1kHz)は24dB、周波数特性は±2dB。

シリーズ共通の仕様として、適正針圧は2.0gで内部インピーダンスは6Ω、推奨負荷インピーダンスは50Ω以上となっている。

 

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