VGP2026受賞インタビュー JVCケンウッド
Victorの音響製品が守り続けるフィロソフィー「原音探究」。取り巻く市場環境が目まぐるしく変化するなか、JVCケンウッドが中期経営計画「VISION2025」で掲げたのはメディア事業の「質的転換」だ。
その答えを示すかのように大きな評価を獲得したのは、VGP2026でイヤホン大賞を受賞したフラグシップ「WOOD master」、そしてブランド初のウッドコーンを搭載したサウンドバー「TH-WD05」。
伝統のウッドテクノロジーを現代のデジタル環境に適合させ、他社には真似のできない“情緒的な価値”へと昇華させた。ライフスタイル関連製品を中心に、メディア事業を牽引する江野澤仁嗣氏に話を聞く。

株式会社JVCケンウッド
メディア事業部 事業部長補佐 ライフスタイル販売統括
江野澤仁嗣氏
プロフィール/新卒で入社後、テレビやヘッドホン・イヤホンの商品企画、ドイツ駐在、ライフスタイル関連製品全般の商品企画や海外営業のマネージャー職を経て現職。
想定顧客のニーズへ応えることにとことんこだわる
―― VGP 2026でVictor「WOOD master」がイヤホン大賞を受賞されました。おめでとうございます。
御社の中期経営計画「VISION2025」では、エンタテインメント ソリューションズ(ES)分野における事業の質的転換へ、高価格帯や高付加価値製品の拡充を謳われています。
最終年度にまさにその集大成のように、「WOOD master」はじめ、サウンドバー「TH-WD05」、手元スピーカー「SP-WS10BT」など御社の象徴であるウッドを使われた強力製品が連打されました。質的転換の取り組みの進捗についてお聞かせください。
江野澤 ありがとうございます。まず、ES分野の中にはビクターエンターテインメントという音楽・映像ソフトの制作や販売を手掛ける会社もあり、よりお客様に感動いただけるようなコンテンツの制作を継続して行っています。
また、音響の分野にはイヤホン、サウンドバー、オーディオなどの製品があり、お客様により上質な体験を提供できる商品やサービスの強化を進めています。
さらに、映像の分野のホームシアター用プロジェクターでは、2025年にDLA-V900R/V800Rで行った映像技術「新Frame Adapt HDRビビッドモード」などさらなる高画質を実現するソフトウェアアップデートが、VGP2026で技術賞をいただきました。
これらの分野内の各事業における顧客体験価値を高めていく活動を通じて質的転換を進めている状況です
Victorが音づくりで掲げるフィロソフィーは「原音探求」です。“原音”の定義は、スタジオで収録されたアーティストが想いを込めた音。このフィロソフィーをグループ会社であるビクタースタジオの音楽コンテンツ制作エンジニアとデバイスを作る音響エンジニアが共有する他に例を見ないメーカーであり、他社には真似することができない音づくりは「WOOD master」でも高く評価されています。
イヤホンでは2024年11月に発売したイヤーカフ型の「HA-NP1T」が、アクセサリー感覚で身に着けられるデザインも好評で、特に女性から高い支持を集めています
。5色のカラーバリエーションに加え、昨年8月にアクセサリー感をより高めたる3つのプレミアムカラーを新たに追加しました。
想定した顧客のニーズにしっかりと合致した商品づくりにとことんこだわっています。寄り添えば寄り添うほど、自ずと尖った商品となり、お客様の心に刺さります。それがES分野の目指す“質的転換”です。
お客様に選んでいただける商品やサービスであるためには、お客様のことをなにより知り、理解して商品作りをすることが大切。それが事業としての大きなテーマです。
「空間オーディオ」はボリュームを少し上げるのがポイント
―― 居並ぶ尖った商品のなかでも、イヤホン大賞を受賞された「WOOD master」は、江野澤さんが開発初期から携わってこられた思い入れ深い商品ですね。
江野澤 実はポケットマネーで購入して日頃から愛用しています。
WOODシリーズには2021年11月に発売した「HA-FW1000T」という完全ワイヤレス初のフラグシップがありました。
音質を中心に高い評価をいただく一方、「ボディが大きくて装着感が悪い」「アプリでカスタマイズできない」「ノイキャンが物足らない」といったご指摘をいただきました。
そうした反省も踏まえ、「WOOD master」では機能面もより充実させるため、商品企画の段階から想定顧客を対象としたリサーチと鍵となるような要素開発を徹底して行っています。
ノイズキャンセリングは、専用チップを搭載し大幅に強化しました。ただノイキャンが強ければいいものではありませんから、例えば騒音がある環境下でもしっかり音楽に浸れるノイキャンを追求しています。
実際に聴いていただくと、オン/オフで音質差がほとんど認められないことが分かります。どんな環境にいてもベストなリスニング体験を提供することを目指しました。

初搭載の「パーソナライズサウンド」は、人それぞれに聞こえ方の特性が異なることに着目して開発した新技術です。簡単な測定でそれぞれの聞こえ方に沿った最適な音質をご提供します。ハイレゾ相当の高音質が楽しめる「K2テクノロジー」も搭載しています。
―― 新開発の「空間オーディオ」も話題を集めています。
江野澤 ビクタースタジオと共同でチューニングを行い、同スタジオのエンジニアルームの臨場感ある自然な広がりと奥行きのある音響空間をそのままに再現します。独自の立体音響再現技術「EXOFIELD(エクソフィールド)」を応用することで実現しました。
この空間オーディオを楽しむ上で、是非知っておいていただきたいポイントがあります。それは、普段聴いている音量より“少し”だけ上げていただくこと。皆様に十分に説明が行き届いておらず申し訳ございません。これにより抜群の臨場感を体験いただけます。
また、ビクタースタジオの5名のエンジニアが創った5つのPROFESSIONALモードも搭載しました。違いは少しずつなのですが、それぞれの個性が際立つ、「音楽って本当に楽しいな」と思えるサウンドモードです。
―― 音質面についてはいかがでしょう。
江野澤 心臓部となるドライバーユニットをゼロから作り直しました。従来の振動板は樹脂に薄膜の木製シートを貼り付ける手法ですが、今回はパルプとアフリカンローズウッドという少し硬めな木を混ぜた素材を振動板にしています。
音質のコンセプトは「木が奏でる、音の極み」。ずっと聴いていたくなるような心地よい響きを追求しました。
デザインも大きなポイントです。ウッドシリーズのコンセプトは「スピーカーも楽器でありたい」。楽器の木が持つ美しい響きへのこだわりが、原音探究につながると考えています。
イヤホンも楽器でありたい。そこで楽器そのものをモチーフに、木で作られた楽器で馴染み深いピアノとギターを、イヤホンの形として昇華させました。
ケースも楽器のケースを模した革調の仕上げや真鍮調およびシルバー調のアクセントなど遊び心を効かせています。
さらに、このようなこだわりの詰まった商品をお客様に長くご愛用頂きたいという思いから、今回初めてイヤホン本体の傷が時間とともに目立たなくなる自己修復塗装や3年間の長期保証を採用しご好評をいただいています。
テレビの音を聞き取りやすくするソリューション「TH-WD05」
―― ウッドコーンを採用したサウンドバー「TH-WD05」がコンセプト大賞を受賞、天然木デザインの手元スピーカー「SP-WS10BT」が審査員特別賞を受賞しました。
江野澤 サウンドバーにはかつてウッドではない商品はありましたが、一時撤退していました。しかし、テレビが薄型化・大型化し、その過程で音響に対する不満の声が多くあることは認識しており、解決するための提案の検討をずっと続けていました。
我々にはウッドコーンという非常にユニークな技術があり、心地よいリスニング体験をお届けすることができます。
それならば、テレビの音ももっと聞き取りやすくできるソリューションが提供できるに違いない。そうして開発されたのが「TH-WD05」です。
「SP-WS10BT」はウッドコーンではありませんが、テレビの音の課題解決を追求した商品です。
両者に共通するのは、オーディオ的な音作りをベースにしていること。「TH-WD05」は3.1ch構成で、L/R/センターにサブウーファーを内蔵、センターにフラットスピーカーを採用して、テレビの音やセリフを聴きやすくしています。
さらに、「はっきり音声」をONにすると、音量を抑えたままでもニュースやドラマのセリフが明瞭になります。Dolby Atomos対応で、コンパクトながら幅広いソースで臨場感あふれる立体サウンドが楽しめます。
「SP-WS10BT」はウーファー1基、トゥイーター2基、パッシブラジエーター1基を備え、天板の天然木は音響面にも寄与しており、手元スピーカーながら、本格的なBluetoothスピーカーとしてもしっかりとした音が楽しめます。両モデルともにインテリアに馴染むデザインにも力を入れました。
―― Victorブランドとしてリビングシーンをどのように思い描かれていますか。
江野澤 Victorブランドは生涯にわたる音のパートナーでありたいと考えています。いろいろなお客様がいて、いろいろな課題や欲求があるなか、それを解決していくのはメーカーの使命です。
日本のリビングではオーディオを置くスペースも限られていますが、そうした住環境やライフスタイルの変化に合わせたソリューションを、Victorらしさを生かしながら提案して参ります。
Sマーク取得のポータブル電源新製品は“普段使い”を提案
―― ES分野ではポータブル電源も展開されています。2月6日には「JVC Powered by Litheli」より、Sマーク認証を取得した新製品「BN-RL410」「BN-RL230」を発表されました。
課題と指摘される「安心安全」や御社ならではのメディア事業の強みや親和性を活かした展開についてお聞かせください。
江野澤 当社は「感動と安心を世界の人々へ」を企業理念としています。ES分野ではメインとなる感動体験をお客様に提供していくと同時に、「安心」に対してもしっかり取り組んでいます。
ポータブル電源は、2014年の広島土砂災害や2018年の西日本豪雨災害で、被災された方が電気を使えずに大変困っている話を販売店からお聞きしたことを契機に、2019年に初号機を発売しました。
安心・安全を常に考え、当初はエネルギー効率が高い三元系のリチウムイオン電池を使用していましたが、2022年に発売した新シリーズからいち早く、エネルギー効率は劣りますが、安全性・耐久性に優れたリン酸鉄を使ったリチウムイオン電池に切り替えています。
電気製品の安全のための第三者認証制度である「Sマーク」も、2024年にポータブル電源が対象製品となって以降、次に商品を出すときには必ず取得しようと進めていました。
―― Sマーク認証を取得された新製品「BN-RL410」「BN-RL230」では、モバイルバッテリーを2個付属し、専用スロットで同時に充電ができ、スマートフォンなどの充電用に日常使いできるユニークなアイデアを採用されています。どのような背景があるのでしょう。
江野澤 ポータブル電源所有者の7〜8割が災害時の備えとして保管し、普段は全く使わないという調査データがあります。いざ使おうとしたら充電が切れていたなどの課題も見受けられ、普段使いできるひとつの解決策として提案しました。
「Litheli」ブランドのスティッククリーナーをはじめとする家電5製品の駆動用バッテリーとして共通で使用できます。
なお、本製品はモバイルバッテリーの充電が可能なため、モバイルバッテリー部分についても審査対象となり、Sマーク取得には苦労しました。
今発売している商品は充電が完了した後もコンセントを挿したままでの使用が可能で、バッテリー性能を劣化させない過充電や過放電を防ぐ機構が備えられています。
ポータブル電源の価値は理解していながらも、普段使いするものではなく、価格を見て購入を躊躇されていたというお客様が、購入を決断するきっかけになればうれしい限りです。
「ニッパー」が若い人からも「可愛い」と人気上昇中
―― 魅力あふれる商品の価値を伝えていく上で、SNSやコロナ禍明けに価値が再認識される店頭など、どのような伝え方が大事だとお考えですか。
江野澤 お客様とのコミュニケーションは、フィジカルとデジタルの両方をしっかりやっていきたい。フィジカルでは流通法人さんとタイアップした店づくり・売り場づくりに取り組んでおり、一方のデジタルではオウンドメディアからの発信を基本に、お客様にもっと知っていただけるコミュニケーションにさらに工夫を凝らしていきます。
Victorではロゴマークにデザインされた犬のニッパーが、若いお客様からも「可愛い」と人気を集めています。Victorというブランドを若い人にもっと身近に親しんでいただけるように積極的に活用していきたいと考えています。
また、「WOOD Master」など近年発売の製品にはスマホやパソコンにも貼れるVictorブランドのロゴステッカーを同封しています。
―― 従来の音楽を聴く道具としてのデバイスから、ライフスタイルを豊かにするエンタテインメント・ソリューションへ。新年度には新たな中期経営計画も発表となります。ES分野のさらなる躍進へ意気込みをお聞かせください。
江野澤 Victorブランドはこれからも、上質で心地よいリスニング体験を生活の様々なシーンに提供して参ります。お客様にその価値をきちんと理解いただき、商品を選んでご満足いただければ、業績もよりいい方向に向かっていくと確信しています。
様々なライフスタイルや価値観があり、トレンドの変化を見極め、適切なソリューションを提供していく。そこへウッドによる音響技術をベースにしたVictorらしさを生かし、いかにお客様のライフスタイルの体験とマッチさせられるかを追求していきます。
また、2026年はケンウッドの前身である春日無線電気商会の発足から80年の記念すべき年になります。
Victorの音作りの思想は「原音探究」、対するKENWOODは「原音再生」です。KENWOODの“原音”はVictorのそれとは異なり、しっかり音響設計されたコンサートホールのS席で聴く音と定義しています。
考え方が異なれば、自ずと音づくりも異なってきますが、音の世界は情緒的で、好みも人それぞれです。
来年2027年にはVictorが創立100周年、2028年はJVCケンウッドが創立20周年を迎えます。Victor、KENWOODそれぞれに、アニバーサリーモデルをはじめ、皆様に素晴らしさを発見していただける商品を連打して参りますのでどうぞご期待ください。





































