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公開日 2023/03/01 06:35

【特別インタビュー】アヴァンギャルド最新ホーンスピーカー「TRIO G3」誕生の背景を本国スタッフに訊く

これからの30年を見据えた製品展開を計画
角田郁雄
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昨年5月のミュンヘン・ハイエンドでグローバル発表され、秋の東京インターナショナルオーディオショウでも登場し話題を集めたavantgarde(アヴァンギャルド)の最新ホーンスピーカー「TRIO G3」。そのサウンドの魅力はどこにあるのか、インターナショナル・セールス担当のジェローム・アンドレ氏に、オーディオ評論家の角田郁雄がインタビューを敢行した。

アヴァンギャルド INTERNATIONAL SALES担当 ジェローム・アンドレ氏 photo/君嶋寛慶

なぜアヴァンギャルドはホーン型スピーカーにこだわったのか?



以前に、私はアヴァンギャルドの第3世代のスピーカーシステム「TRIO G3」を試聴する機会に恵まれた。そこでは一般的なコンベンショナルスピーカー(以下、箱型スピーカーと略す)では体験したことのない壮大な空間性に満ち溢れた音と生演奏を思わせる音楽の臨場感に深い感動を味わうことができた。さらにドイツの「バウハウスの芸術」を彷彿とする美しいフォルムにも強いインパクトを受けた。

そんな矢先、同ブランドのインターナショナル・セールス担当であるジェローム・アンドレ氏が2022年秋の東京インターナショナルオーディオショウに来日し、私は僥倖にもインタビューすることができたので、その内容を紹介しよう。

東京インターナショナルショウにて展示されたAvantgarde TRIO G3

お会いしてすぐに、私は「TRIO G3」を試聴した時の印象についてお話した。ワーグナーの「ニーベルングの指輪」を再生して、あたかも生演奏のような広大な空間とリアルな音楽が体験でき、感銘を受けたことを真っ先にお伝えしたかったからだ。

その上でまずは最初の質問に入った。アヴァンギャルドはなぜ創業当時から一般的な箱型スピーカーではなくホーン・システムを開発したのだろうか?

「創始者のホルガー・フロムとマティアフ・ルフはライブ音楽が好きであると同時に、スピーカーはホーン型に関心があり、特にクリプシュのスピーカーが好きだという共通項がありました。そこで両人は意気投合し1991年にアヴァンギャルドを創業。3つのホーン(高/中/低域)が揃ったTRIOを構想したのです。

ここにはドイツならではの歴史的な背景も影響しています。会社が設立する前年の1990年に東西ドイツは統合されました。そんななか、統合以前から旧西ドイツ側には先進の技術と生産性がありましたが、その一方で旧東ドイツ側にはいくつかの極めて的確なホーンの理論書が存在したのです。

しかし、これらの理論書どおりにホーンを製作する技術が東側にはなかったのです。二人はこれらの書をもとに学び、研究開発を進め、そこから現在に至るまで31年の歳月をかけてホーンスピーカーを進化させてきたという経緯があります」

ホーン誕生の歴史にも迫る興味深い話である。次にホーン型ドライバーの優位性について質問してみた。

「箱型スピーカーと比較するとダイナミックレンジは8倍の特性で、歪み率は90%低減でき、解像度も10倍高くなります」

これは音圧の土台となるキャビネットが存在しないからだ。「箱型スピーカーはパッシブ・クロスオーバー(ネットワーク回路)の存在が重要になりますが、ホーン型はクロスオーバーの設定が難しいですし、クロスオーバー自体の個性が露骨に出てしまうので、その存在を消したくなります。

そこでカットオフ周波数をメカニカルに決める方式を考えました。それはホーンの形状によってクロスオーバーを決定する方式です。ドライバーの振動板にホーンの根元を若干被せる方式(ロールオフ方式)で、例えとしては、口元に両手のひらを少し被せ、声を出すと、高域がやや減衰しますが、これと同じ原理でクロスオーバーを決めるというメカニカルな方式です。

しかしながら、これを実現するには高い音圧が必要となります。そこで一般的な8Ωのドライバーよりもコイルを多数に巻き、インピーダンスを上げています。ミッドレンジではコンパウンド・ソフト・メッシュ振動板を採用して、振動板の振幅幅を±0.5mmに設定しています」

私の知る限り、ホーン型スピーカーでは一般的なネットワーク回路を搭載していたが、回路を最小限とし、ホーン形状でクロスオーバーを決めていることは驚愕の事実であった。

電流アンプiTronをフル活用。今後はさらに下位グレードにも展開予定



次に最新のG3において苦労した点や、今回アップデートされたiTron(アイトロン)電流アンプについても質問してみた。

「今回は3年間の歳月を費やし、全てを見直しました。3つのドライバーのアラインメントを揃え、3つのドライバーのボイスコイルの位置が縦に一直線に揃うようにリニアフェイズ化しています。トゥイーターは20kHzから28kHzに再生帯域を拡張しましたし、ホーンのサイズも長くしました。

また、振動板のドーム形状も変更し、ホーンとの接合部の被せ具合(ロールオフ)も新規設計です。ネットワークにはハイグレードなコンデンサを高域、中域、低域にたった4式使っているだけです。

すべてのドライバーが正確に同一平面上に配置されているTRIO G3の様子。それぞれの音の発生ポイントが完全に揃っており、トゥイーター、ミッドレンジ、ウーファーの各ユニットから発せられた音がそれぞれバランスを崩すことなく、非常に正確なタイミングで耳に届く

オプションのiTron電流アンプはインピーダンスが高く、振幅が少ないTRIO G3のウーファーを駆動するには非常に理想的な増幅が可能です。結果として今まで以上に歪みが少なく、より透明度の高い音質が実現できます」

TRIO G3の顔ともいえるスフェリカルホーンは実に美しい形状である。どこで作っているのだろうか?

「ホーンの設計や金型はもちろん自社ですが、製作に関してはドイツの本社周辺には自動車関連の製造メーカーがありますので、ここで生産しています。成型時にはトゥイーターホーンは18t、バスホーンでは2500tもの強力なプレスが必要となります」

最後に今後の展開について質問してみた。「この30年を振り返ると、音楽を楽しむ人々のニーズも大きく変わってきています。そんななかでこれからの30年を見据えて、フルアクティブ型のスピーカーを構築し、モデル展開していきたいと考えています。その際にはクラスD駆動ではなく、今回のiTron電流アンプをフル活用していきたいです。例えば、エソテリックのN-05XDと組み合わせたシンプルかつスタイリッシュなシステムが構築できるようにしたいですね」

今回のインタビューでは、どこにも類を見ない独創的なホーンスピーカーの技術的な仕組みの一端を聞くことできた。現在日本で販売されているG3のラインナップは最高峰のTRIOに限られているが、近々にはその下位にあたるDUOやUNOシリーズもブラッシュアップモデルが登場するはずである。アヴァンギャルドは今、最も目の離せないスピーカーブランドのひとつと言えるだろう。今後の展開が楽しみだ。


本記事は『季刊・オーディオアクセサリー187号』からの転載です。

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