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公開日 2025/11/04 06:35
アメリカの豊穣さの象徴

厚みと疾走感、マッキントッシュのカーオーディオ。Jeep「グランドチェロキー」の卓越した世界観

栗原祥光

アメ車の人気ナンバーワン・Jeep


第2次トランプ政権発足以後、話題を集めるアメリカ車。その中で人気を集めているのがステランティス N.V.の四輪駆動車ブランドJeepだ。昨年の新車登録台数9721台は、アメリカ車トップ。本格オフローダーの姿を街でもよく見かけるのも納得する。今回そのJeepのフラグシップモデル「グランドチェロキー」と、それに搭載するマッキントッシュのカーオーディオシステムを紹介する。



Jeep グランドチェロキーL SUMMIT RESERVE


記事を進める前にお断りしなければならない点がある。それは本稿で紹介するグランドチェロキーの日本向け生産は完了し国内在庫のみであること。なかでも2種類あるボディサイズのうち、3列シートのロングボディ仕様(L LIMITED、L SUMMIT RESERVE)は、かなり数が少ないようだ。


ちなみにL LIMITEDとL SUMMIT RESERVEの違いは乗車人数。具体的にはL LIMITEDの2列目シートは3人掛けベンチシートであるのに対し、L SUMMIT RESERVE は2人掛けキャプテンシートだ。


「アメ車は燃費が悪い」のウソ・ホント


さて、アメリカ車について耳にするのが「日本には大きすぎるボディサイズ」と「燃費が悪い」という2点だろう。これらは「当たっている」部分と「そうではない」部分がある。折角の機会なので、多くの方が抱く固定概念を解きたいと思う。



全幅1980mm×全高1795mm


まず大きさについて。今回、取材で借用したグランドチェロキーL SUMMIT RESERVEは、全長5200 mm×全幅1980mm×全高1795mmと、「日本には大きすぎる」という声も納得の、Jeepラインアップでも屈指の大柄ボディだ。



全長5200mm、ホイールベースは3090mm


ちなみに2列シート仕様なら全長が5mを下回る上に、Jeep全体のラインアップをみれば、よりコンパクトなモデルが用意されているのでご安心頂きたい。


この2メートル近い車幅は、細い路地よりも車庫で困ることになる。というのも都心の商業施設で見かける高さ2.1メートルのハイルーフ対応の時間貸し駐車場でも、車幅で入庫を断られる場合があるからだ。2トンを超える車重もしかりだ。それゆえ入庫できる駐車場はかなり限られる。さらに車庫幅や隣接して停車する車種によってはドアの開閉が困難なことも。写真のようにどちらかを開けて停めるのが理想なのだけれど、都合よくそのような場所があるわけではない。



少し広めの時間貸し駐車場に停めたグランドチェロキー


盲点なのが洗車である。ガソリンスタンドに機械洗車をお願いすると、洗車機を通すことが困難という理由で断られ、手洗い洗車のみとなる。ガソリンスタンド等で手洗い洗車を頼むと5000円は超えるので、洗車場に持ち込み自らの手で行うと、天井に手が届かないといったことが起こる。このように大型の車両は細い路地以上に、日常面で苦労することがあるのだ。


この「日本には大きすぎる」ボディはJeepに限った話ではない。ドイツ御三家の中堅グレードは、車幅約2メートル、全長約5mが当たり前になりつつある。よって「アメリカ車は大きすぎる」というより「自動車そのものが大型化している」というのが正しい。そして道幅や車庫幅は昔も今も変わらない。結果「日本のサイズには合わないクルマ」となる。


次に「燃費が悪い」について。エンジンは3.6リッターV型6気筒で、公称値は7.7km/リッター(WLTCモード)。国産ハイブリッド車に慣れた目からすると驚く数字だが、車体の大きさとガソリンエンジン車としてみれば特段悪い数字でもない。さらにレギュラーガソリン対応車なので、ハイオク専用車である欧州のライバル達よりも燃料費は少し安く抑えられる。



エンジンは最高出力286PS、最大トルク344N・mを発する3.6リッターV型6気筒DOHC


いっぽう毎年納める自動車税と、購入時または車検時に納付する自動車重量税はかなり高額なので覚悟しなければならない。ちなみにロングボディ仕様には用意されていないが、5人乗り仕様のPHEVモデルなら、2リッターターボエンジンなので、自動車税はグッと下がる。また燃費も10.4km/リッター(WLTCモード)な上に、PHEVなので税制の優遇処置が受けられる。


以上、「アメリカ車は……」というのは昔の話であることをお伝えしたところで、本稿の主題であるオーディオについて話を進めよう。


 


深い音色と濃い味わい、空間全体で音楽を届ける


車内は、本木目のパネルに繊細なメッキパーツ、そしてダッシュボードやドアポケットのすみずみまでレザーがていねいに張られるなど、じつに手の込んだ仕立て。シート表皮は上質なパレルモレザーで、かなり質感が良い。



運転席の様子


レクサスやBMWといったライバル達のハイエンドSUVと比較しても遜色ない設えであるばかりか、壮大な空間とインテリアにアメリカの広大さと豊かさを想起する。自動車のグローバル化により、メーカーの個性はあれど「お国柄」を感じさせることは少なくなったが、Jeepのグランドチェロキーには色濃く残っている。


ダッシュボードに目を向けると、McINTOSHのロゴが入ったユニットが天を向けて取り付けられている。フロントガラスに音を反射させ拡散させることを目的としているのだろう。マッキントッシュのカーオーディオシステムはグランドチェロキーのみに与えられた標準装備された特権で、他のJeepモデルには用意されていない。



ダッシュボードに取り付けられたトゥイーターユニット


公表されている搭載ユニット数は18基。サブウーファーはラゲッジルーム左側に10インチユニットを配置されていた。アンプの総出力は950Wで、17チャンネル分用意しているようだ。



ダッシュボード中央のセンタースピーカー




運転席側ドア




運転席側ドアのウーファーユニット


選曲や設定は、センターのタッチパネルディスプレイで行う。とはいうものの、設定は前後左右のバランスと3ポイントのイコライザー、そしてサラウンドのオン/オフ程度。他社に比べて、機能はそれほど多くはない。



バランス/フェーダー設定画面




入力設定画面




サラウンドのオン・オフを設定できる


入力はUSBやブルートゥースと豊富。スマホ連携はApple、Googleともに対応しており、Appleのみワイヤレス接続が利用できる。ソニーのハイレゾウォークマンとブルートゥース接続したところ、車両側から選曲はできなかったので、音源をスマホに入れてCarPlayを使うのが一般的だろう。いっぽうUSBは手持ちのメモリにFLAC音源を入れて再生を試みたが認識しなかった。



メディアタブの中にマッキントッシュというアイコンを発見


マッキントッシュ製アンプのアイコンである「ブルーアイズ」は、ディスプレイで再現。日本向けでは当初、この機能がなく後のファームウェアのアップデートで使えるようになったという記憶がある。最初は笑ってみていたが、見ているうちに「マッキントッシュにはブルーアイズがないと……」と思うから不思議だ。



インフォテインメントディスプレイでブルーアイズを再現!


深い音色と濃い味わい。マッキントッシュならではの音世界が車内を充たす。音像や音場、情報量で聴かせるのではなく、空間全体でリスナーに音楽を届ける。標準状態では低域過多なので、3バンドのイコライザーで低域を3ステップ分レベルを下げ、逆に高域を3ステップ分レベルを上げてバランスを取った。


テキサス州を拠点に活動する4兄弟のロックバンド「KONGOS」のセカンドシングル「Come with Me Now」から試聴を始めた。強烈なベースラインがグランドチェロキーを揺らし、サンルーフ周辺からビビり音が聴こえる。いうまでもないが、グランドチェロキーの建付けが悪いのではない。マッキントッシュのシステムが放つエネルギーが勝っているのだ。まさにパワー・イズ・ジャスティス。アメリカそのものである。



「KONGOS/Come with Me Now」再生中のApple CarPlay画面


定位感より音色で聴かせる傾向で、アコーディオンの音色、ペダルスチールギターの響きが、汚い(失礼)コーラスを引き立たせ車内に包み込む。サラウンドモードもあるが、それよりオフにした時の再現の方が好ましかった。


マッキントッシュはニューヨーク州ビンガムトンに拠を構える。そこでニューヨークをテーマにしたペット・ショップ・ボーイズのシンセポップ「New York City Boy」を聴くことにした。軽快な「四つ打ち」のリズムにキャッチーなメロディラインが乗る、ニュージャックスイングのお手本ともいえるこのヒットチューンは、リズムにキレがないと聴いていて面白くない。Jeepとマッキントッシュは粘り気を帯びたリズムでリスナーをグイグイと引っ張る。シンセサイザーやドラムマシンといった電子楽器を主体とする音楽とマッキントッシュは相性が良さそうだ。



「ペットショップボーイズ/New York City Boy」再生中のJeepオリジナル画面


アメリカの音楽史において、ニュージャックスイングと共に、ミネアポリス・サウンドも忘れてはならないカルチャーだ。その開祖といえるプリンス・ロジャーズ・ネルソンが、愛の本質を説く「Sexy M.F.」は、気が狂いそうなほどのワントーンが印象的な楽曲。マッキントッシュはその、うねるベースラインとぶ厚いブラス、そしてクールなジャズギターを、グルーヴィーかつファンキーに再現する。放送禁止用語を連発するプリンスとコーラス隊、ラッパーの掛け合いが、車内で溶け合う様は実に楽しい。



プリンスのアルバム「ラブ・シンボル」の2曲目「Sexy M.F.」再生中のApple CarPlay画面


手持ちのDAP、ソニーのハイレゾウォークマンNW-A300シリーズと車両をブルートゥース接続し、香港の映画音楽作曲家、エリオット・レオンによる現代の交響曲「The Metaverse Symphony」(96kHz/24bit)を聴いてみた。この楽曲の魅力である疾走感はそのままに、厚みと説得力のあるプレイバックに圧倒。こういう再現を待っていた! と心が浮き立った。現代曲もクラシックも、マッキントッシュとJeepは何なく乗り越える。曲を選ばない、それがこのシステム最大の魅力だ。



ソニーのハイレゾウォークマンNW-A300とBluetoothで接続



見た目と走行性能、そしてカーオーディオの世界観の一致


高級車に求められる要素は何か。目を惹くエクステリア、卓越した運動性能、絢爛豪華な内装、リセールバリュー、そして誰もが羨むブランドネーム。だがそれらは高級車がもつ魅力の一部でしかない。筆者は世界観を求めたい。見た目とインテリア、走行性能。そして車内エンターテインメント、つまりカーオーディオの音質の一致してこそ世界観が語られる。


Jeepのフラグシップ「グランドチェロキー」は、世界観という点で数多ある高級車の中でも群を抜く個性と存在を示している。それがアメリカ車は不人気と呼ばれる中で、年間約1万台のセールス、つまり支持を受けているのだろう。筆者は今回、グランドチェロキーに触れ、一目惚れした。多少の不便があったとしても手に入れたい! そう思わせる説得力がある。


掘れたとはいえ、やはりこの大きさと1000万円を超える価格は現実的ではなく、高嶺の花だ。と思い、他のモデルに目を向けると、マッキントッシュのカーオーディオシステムは搭載されていない。ここまで完成度なのだから、他のモデルにも標準搭載して欲しい。そうすれば高嶺の花に手が届くかも……。そう想いながら、愛しの君に別れを告げた。



Jeepのアイコンである7本のグリル


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