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公開日 2023/04/20 12:00
開発者であるコルグスタッフによる技術解説も

Live Extremeは「ライブ配信の限界を打ち破るかもしれない」。音楽評論家・小野島大が大友良英×小山田圭吾の貴重ライブに感じた“可能性”

小野島大(音楽評論家)/大石耕史(コルグ)

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ハイレゾや4Kにも対応するコルグの配信システム「Live Extreme」。着々と採用事例が増えるなか、先日、同システムとして初めて一般視聴者向けにDSD音声での配信が行われた。大友良英と小山田圭吾という大物2名による即興ライブだ。「DSD音声によるコンサート映像配信」の魅力とは何か? 音楽評論家・小野島大氏によるレポートと、同システムの開発者であるコルグ・大石耕史氏による解説をお届けする。

大友良英と小山田圭吾による完全即興ライヴをDSD音声とともに映像配信

「ライブ配信の限界を打ち破るかもしれない可能性」 by 小野島大(音楽評論家)



コロナ以降、インターネットを介した配信ライブが多くなった。特に観客を入れたオーディエンス・ライブが開催困難だった時期は、観客との接点を求めるアーティストが無人のホールやライブハウスなどで演奏し、それを生中継もしくは録画でインターネット配信するケースが激増した。

最近ではようやく観客を入れてのライブが再開されるようになり、声出しも可能になって、ライブ・シーンはコロナ以前の活況を取り戻しつつあるが、オーディエンス・ライブであっても配信中継を行うケースも多くなった。さまざまな理由で会場に直接足を運ぶことができない場合、自宅にいながらにしてライブを見ることができる配信はありがたいものだ。

もちろん会場で実際のライブを体験することと、モニター越しで映像を眺めることはかなり違う。もっとも異なるのは会場の空気感だろう。モニター越しに実際の会場に流れる雰囲気を感じ取るのは難しい。どこかよそよそしい、1枚も2枚もベールを間にして見ているような「他人事感」を拭えない。現場の生々しいリアリティを配信でそのままお茶の間に届けるのは不可能だということだ。

だが、そうしたライブ配信の限界を打ち破るかもしれない可能性を秘めたイベントがあった。4月8日に東京で行われた大友良英と小山田圭吾の完全即興のデュオ・ライブ『Special Live 大友良英+小山田圭吾』だ。

小さな会場で2セット行われたこのライブはそれぞれ限定30枚のチケットが当然ながら即完した。私はライブ評を依頼されたので幸運にも2セットとも見ることができた。そのライブ評は会場となったRITTOR BASEのウェブサイトに掲載されている。両者の紹介やライブ実現の経緯などはそちらをご覧いただきたい。

当日のライブの様子

そこでは主に実際の演奏や会場で感じたものについて書いているが、このライブはインターネットを通じた生配信も行われた。アーカイブ映像も1週間限定だが公開された。これが凄かったのである。会場で生演奏を見ていた私は当然、配信映像に関しては帰宅後にアーカイブを見て確認したのだが、いろいろな意味でこれまでのネット配信のイメージが更新された。「もしかしたらこれ、現場でナマで見るより生々しいんじゃないの?」という感想さえ持った。

Live Extremeを通して“高音質での”ライブ配信を実施(現場での配信監視ブース)

DSD配信は「音が恐ろしく生々しく実在感がある」



この配信が画期的だったのが、一般向けの生配信としては世界初のDSD形式で行われたことだ。DSD配信の技術的なことについては別途解説があるようなので、シロウトの私が迂闊なことを書くのはやめておくが、「とにかく現状で望みうる最高の音質」での配信だということだ。高音質の配信は当然ながら安定した通信環境の整備が必須であり、高速インターネットのインフラと送り出しの機材などが充実してきた現在だからこそ実現できたということだろう。

「これまでの配信の常識を塗り替えるような可能性があることは間違いない」

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