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PR開発者であるコルグスタッフによる技術解説も

Live Extremeは「ライブ配信の限界を打ち破るかもしれない」。音楽評論家・小野島大が大友良英×小山田圭吾の貴重ライブに感じた“可能性”

公開日 2023/04/20 12:00 小野島大(音楽評論家)/大石耕史(コルグ)
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この仕掛け人の一人が、当時「サウンド&レコーディング・マガジン」の編集長だった國崎晋さんなのだが、國崎さんはこれを単発の配信として終わらせない仕掛けーー Premium Studio Live ーーも用意していた。これは、レコーディング・スタジオでのDSD一発録り(マスターレコーダーには KORG MR-2000S を使用)を有観客のライブとして公開し、後にOTOTOYからDSD音源をダウンロード配信するという画期的な試みであり、2010年8月から2015年まで全9回に渡り行われた。

DSDダウンロード配信は、2010年12月に「e-onkyo music」で、2015年1月には「mora」でも開始され、オーディオ愛好家の間ではごく一般的なものとなった。当初、再生機はKORGのレコーダーや、SONYのDSDディスク・プレイヤーなどに限られていたが、2012年以降は KORG DS-DAC-10 をはじめ、DSD対応のUSB-DACが各社から販売されるようになり、DSD再生のハードルもかなり低くなってきた。

コルグ「DS-DAC-10」

DSDライブ・ストリーミングへ



DSDダウンロード配信やDSD-DACが普及してくると、次に視野に入ってくるのがストリーミング配信だ。2015年4月、コルグはIIJ、ソニー、サイデラパラディソの3社とともに、DSD 5.6MHz(音声のみ)をインターネットでライブ・ストリーミング配信する実証実験を行った。まずは4月5日に「東京・春・音楽祭」のコンサートを東京文化会館から、続く4月12日にはベルリン・フィルの演奏会をドイツから生中継し、無事成功させている。

コルグは、この日のためだけに、ライブ配信用エンコーダー・ソフトウェアと、ストリーミング・プレイヤー(Win/Mac)を開発・提供していたが、IIJが同年12月に開始したハイレゾ・ストリーミング・サービス「PrimeSeat」にも、このソフトウェアを提供している。

その後、ハイレゾのオンデマンド配信としては、2019年9月に「Amazon Music HD」が対応したのを皮切りに、2019年11月に「Mora Qualitas」(2022年3月サービス終了)が、2021年6月には「Apple Music」が対応し、もはや珍しいものではなくなったが、DSD配信やハイレゾでのライブ配信はいまだに実現していない。

PrimeSeatは惜しくも2023年1月をもって終了してしまったが、サービス開始当初はDSD 5.6MHzが毎日インターネット生配信されているという、今の時代においても非常に前衛的な内容であった。

Live Extremeの登場



2020年9月、コルグはPrimeSeatで培ったハイレゾ配信技術に4K映像の配信機能も付加した「Live Extreme」技術を発表。同年10月25日には、IIJとキングレコードの協力を得て、キング関口台スタジオからライブ配信の実証実験を行った。配信フォーマットは、4K映像+192kHz/24bit音声に加え、4K映像+DSD音声も含まれていたが、一般公開されたのは前者のみ。DSD配信はキング関口台スタジオに招待されたメディア関係者のみに披露された。

次ページ技術解説 PrimeSeatとLive Extremeとの違いは?

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