公開日 2025/08/27 06:30

Theater & Audio Design、ハイエンドまで幅広くカバーしながら音楽好きの若者に啓蒙を続ける沖縄の老舗

連載「遠藤義人の全国のインストーラーを訪ねて」

わたしにとって沖縄のカスタムインストーラーといえば當山寛人氏。わたしが読者時代から誌面上でのお顔を記憶しており、実際、ホームシアター創生期から40年以上にわたり、1000件以上の視聴室を構築してきた職歴からみても、レジェンドのひとりといっていい。そんな當山氏が現在の新店舗Theater & Audio Design(シアター&オーディオ デザイン)を立ち上げて1年を経たいま足を運び、ホームシアター愛を伺った。

當山寛人氏が立ち上げた新店舗Theater & Audio Designを訪れた

実践&実感でファンを育てていくことが目標

Theater and Audio Design(以下、TAD)では、Hi-Fiオーディオとホームシアターの取り扱いがちょうど半々ぐらい。そんなこともあり、メインの視聴室の機材はイベントに応じて入れ換えている。訪問した日も、ビクターのプロジェクターとParadigm(パラダイム)のスピーカーをつかったシアターイベントに備えて、通常とは異なる配置だった。

TADのメインの視聴室。この日はイベント仕様の機器を配置

TADではLINN「LP12」のようなアナログプレーヤーから最新のストリーミングオーディオ、ホームシアターでもビクターの8K対応プロジェクター「DLA-V800R」やデノンのAVアンプ「AVC-A1H」のようなハイエンドモデルが売れている。これは長年にわたり、ファンを當山氏が育てた成果だと思う。

視聴室のデモ機もハイエンドモデルが中心

とはいえ當山氏は、あまりハイエンドばかりに振りすぎないことも大切だと考えている。常にお客さんのことを考えて親切な提案を心がけているという。

「若い人たちにオーディオ・ビジュアルのよさを知ってもらうことからスタートしたいんです。たしかに高価なモデルは映像も音も高品位ですが、何でもかんでも高いものがいいというのではお客さまが乖離していってしまいます。まずはお客さまにある程度楽しみ方を教えてさしあげた上で、実践して楽しみを実感したユーザーさんを育てていくことを目標にしています」

ものを売るのではなく楽しみ方をレクチャー

その点、最近とみに増えてきたジンバル方式のモバイルプロジェクターについては懐疑的だ。

「最近登場している便利なプロジェクターも、もちろんチェックしています。たしかに綺麗に映りますが、どこか深みがない。パリッとした鮮明な映像なので、初めてオーディオ・ビジュアルに触れる方にはわかりやすいかもしれませんが、結局は使わなくなり、長い目で見ればかえって無駄遣いになるのではないかと危惧しています」

中にはユーチューバーのアフィリエイト動画の内容をそのまま受け取り、150型を野外で投写するために7万円のプロジェクターをネット通販で購入したという人から「暗くて見えないがどうすればいいか」と電話で相談を受けるといったこともコロナ禍の頃にはよくあったという。そうなると残念だが、フォローのしようがない。

そうした経験を踏まえて、當山氏は「プロジェクターを売る」ということよりも「ホームシアターのよさを教えてあげよう」という意識を、これまで以上に持つことにしたという。

「地元の住宅新聞にコラム記事を書かせてもらう機会があり、それを活用してホームシアターの基本と楽しみ方を解説したのです。そうすることで『どれを買ったらいいのか』ではなく『どうやって楽しむのか』を知ろうとするお客さまが、店にもお越しになるようになりました」

店内には体験を補佐するさまざまな製品が

それぞれの好みに対して選択基準を提供する

そうして来店したホームシアター初心者に、當山氏はまずプロジェクターの映像を見せる。初めて映像を観る人には自分の中に基準がないから、まず最高画質を見てもらい、そこから予算や用途に応じて自分の身の丈に合ったものを選んでもらえるように、コントラストや4Kの意義を説明する。地道な啓蒙活動だ。

「最高画質にすごいねと言ってくださる方もおられますが、たいていは価格を聞いて唖然とします。でもそれがスタート地点。仮にほかのお店やネットで買って過去に満足できなかった方でも、自分はいったいどこに満足できなかったのか、なぜ高価なものはその価格になるのかが、すうっと理解できるようになるのです」

いまはお客さんが来るのを待つより、機会があったらこちらから積極的に出向いて行って、話を拡げる活動をしているという當山氏。沖縄の人たちには、日常的に音楽に親しむ文化が根付いている。こうした地道な啓蒙活動によって、ホームシアターとオーディオの文化が、すべからく若い人たちに継承されていく。

Placeholder Image
Placeholder Image
通常、プロジェクターはビクターの8K対応モデル「DLA-V800R」とネイティブ4Kモデル「DLA-Z5」(ホワイト/ブラック)を備えている

Theater & Audio Design最新実例

実例その1。「オーナー憧れのJBL『4344』がメインスピーカーに据え、念願のシアター専用ルームを当店と作り上げました」(當山氏)

視聴位置後方のようす

実例その2。「当店と縁が深い建築会社の若社長宅で先日完成いたしました。建築に携わられているだけあり、スタイリッシュなリビングシアターとなりました。アンプ類はリビング横の小上がりの下に収納したことで、とてもすっきりとまとまっています」(當山氏)

視聴位置後方のようす

壁掛けテレビと2WAY仕様

お問い合わせ先

Placeholder Image

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 レコードの音楽を読み取って光るターンテーブル。オーディオテクニカ「Hotaru」一般販売スタート
2 ダイソンとPORTERがコラボした特別デザインのヘッドホンとショルダーバッグ。全世界380セット限定販売
3 LUMINの進化は終わらない。初のディスクリートDAC搭載「X2」の思想を開発担当者に訊く!
4 Spotif、2025年に最も聴かれた邦楽は「ライラック」。国内外で最も聴かれた楽曲・アーティストの年間ランキング発表
5 DUNU、7ドライバー/トライブリッド構成を採用したイヤホン「DN 142」
6 カセットテープとともに過ごすカフェ「CASSE」。12/17渋谷でグランドオープン
7 Vento、3次元特殊メッシュを採用したハイブリッド拡散パネル「DAP180 / DAP120」
8 AVIOT、最大120時間再生と小型軽量を両立したオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「WA-G1」
9 サンワサプライ、省スペース設置できる木製キャビネットのサウンドバー「400-SP120」
10 アイレックス、ALBEDO/AUDIAブランド製品の価格改定を発表。2026年1月1日より
12/5 10:47 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX