公開日 2026/06/04 06:35

“高音質スマホ”の実力は? 4.4mmバランス出力搭載、水月雨の“オーディオスマホ”「MIAD 01」の音質チェック!

ストリーミングサービスのアプリをインストールできる

“オーディオ特化”のスマートフォンが水月雨から登場

日本でも人気のポータブルオーディオブランド「水月雨(Moondrop)」が独自のオーディオファン向け5Gスマートフォン「MIAD 01」を国内発表して話題となっている。実機に触れる機会があったので、様々なイヤホンとの相性やアプリの組み合わせについて詳しく検証した。

水月雨「MIAD 01」のパッケージ

まず水月雨がMIAD 01を開発した背景として、スマートフォンが複雑になるにつれてスマートフォンからイヤホン端子がなくなっていく傾向が、音楽ファンにとってこれは望ましくない状況であると説明されている。

最近ではApple Musicをはじめとしていくつものストリーミングサービスがハイレゾ・ロスレスに対応している。そのメリットを活かすためにオーディオファンは、スティックDACやDAPなど嵩張るものを他に持ち歩く必要に迫られているが、可能であればそれは避けたいというユーザーも多いだろう。そのためのソリューションとして、“Take beautiful sounds with you(素晴らしい音楽を持ち出す)”ということをモットーに開発した。

水月雨の発表しているスペックシートによると、モデル名はMIAD 01、MIADとは「Moondrop Integrated Audio Device」の略で、オーディオ機能を統合したデバイスを意味している。SoCはMediaTek「Dimensity 7050(MTKD7050)」を搭載している。

これはプロセッサと通信チップの両方の働きをするSoCで、TSMC 6nmプロセスを採用している。「Dimensity 7050」はプロセッサとしては2.6GHz動作のCortex-A78を2基、2.0GHz動作のCortex-A55を6基搭載した8コアのSoCだ。通信チップとしては5G通信の他にWi-Fi 6とBluetooth 5.2に対応する通信機能が統合されている。

電源ボタンとボリュームコントロールボタンを本体右に搭載。オレンジ色がアクセントとなっている

MediaTek製なので、Snapdragon Soundは対応せず、aptX系のサポートもない。その代わりにBluetoothコーデックとしてSBCやAACに加え、LDACにも対応している。

他のスペックとしてはMIAD 01は12GBのメモリを搭載、外部のフラッシュメモリは2TBまでサポートされている。バッテリーは5,000mAhの大容量だ。スクリーンは6.7インチAMOLED(リフレッシュレート120Hz)だ。

カメラ性能はリアカメラが二眼の64MPと8MPであり、サイトには “it’s not good, but it works(あまりよくないけれど十分だ)” と正直に書かれているのがユニークだ。カメラではなくオーディオに振ったスマホだということがわかりやすい。

OSは当初はAndroid 13の搭載がアナウンスされていたが、実機を見るとAndroid 14が採用されていた。ちなみに一般的な話をすると、Android 14ではLC3のサポートやUSBでの排他出力モードが搭載されている。ただしMIAD 01でどのように対応されているかは不明だ。

5G通信回路を遮断するなど音質面にも配慮

基本的には普通のAndroidスマホなので、ストリーミングアプリなどは使いやすい。またMIAD 01では独自の仕組みにより、ミキサーを経由せずにハイレゾ音源の出力が可能としている。

オーディオ性能についてはホームページの記載によるとSN比117dB、ダイナミックレンジ132dBという高性能DAPなみの性能を誇っている。外形的には上部が厚みを帯びたデザインであり、スマートフォンとしては異例なことに3.5mm端子に加え、4.4mmバランス端子も搭載されている。実際に回路はフルバランス構成だ。バランス駆動では4Vrmsのハイパワー出力を実現している(3.5mmでは2Vrms)。

3.5mmイヤホン出力(右)に加えて、4.4mmバランス出力(左)も搭載することが大きな特徴

裏側から見たところ

回路は6層のシールドがなされたもので、強力な電波発信源(ノイズ源)である5G通信回路とは電気的に遮蔽している。DAC部分はシーラスロジックのDAC ICがデュアル搭載されている。またDAC内ボリューム機能を用いて100ステップの細かい音量調整ができるとしている。

また三極管である300Bの音をシミュレートしたような真空管サウンド、独自開発のVDSF+という空間オーディオアリゴリズムなども紹介している。

力強く少し温かみがあるサウンド

次にこうしたスペックが実際の音質や使い勝手にどう影響するのかを実機で確認してみた。実機を手に取ってみると、上部の厚みのある部分がアクセントになっていてモダンでスタイルはとても良い。液晶はラウンドエッジタイプで液晶の端がなだらかに落ち込んでいる。

手に握りやすい段差のあるデザインとなっている

日本語ももちろん使用することができ、初期状態から自分のGoogleアカウントを入力することで普通のAndroidスマホのように扱うことができる。とても軽量で持ちやすく使いやすい。標準のロック画面アートは水月雨らしい。

標準のロック画面もヘッドホンをした美少女のイラスト

最近の海外製のAndroidスマートフォンはMicroSDカードスロットを排する傾向にあるが、本機もMicroSDカードスロットが搭載されていない。これは試聴曲を格納しようとするとやや不便であった。もちろんクラウド経由での楽曲の格納は問題ない。

試聴はセルラー通信ではなく、すべてWi-Fiを使用した。本機は普通のAndroidスマートフォンなので、まず自分のGoogleアカウントで初期化するところから開始する。

一応はオーディオ機材なのでしばらくエージングしてから使用したが、エージング期間に確認すると、電池の減りは4.4mm使用時、12時間で25%程度減る程度であった。普通のスマートフォンよりは電池消費がさすがに大きいが、DAPなどよりはだいぶ小さい。

本機はプリインストールの「水月雨アプリ」のような音楽再生アプリというのはないので、アプリをインストールするところから行う。本機ではGoogle標準のPlayストアからダウンロードした。

今回は自分でもよく使うストリーミングアプリの「Apple Music」と高音質プレーヤーアプリの「Neutron Player」などをインストールした。

音はとても力強いサウンドで少し温かみがある。オーディオ機材を感じさせるサウンドだ。最近試聴した水月雨のハイエンドポータブルCDプレーヤー「DISC DREAM 2」にも似たサウンドだと感じた。一方でマルチドライバーイヤホンなど高感度イヤホンでは少しボリューム位置が低くなるので扱いづらい点はある。ただし背景のホワイトノイズはあまり感じない。高感度イヤホンよりはヘッドホンやダイナミック型イヤホンに向いたサウンドだ。

マルチBAドライバーのqdc「WHITE TIGER」で聴いてみると、だいたい40%前後のボリューム位置となる。適度に温かみの乗る聴きやすいサウンドで、実際の設計はわからないが良質のアナログアンプのようなオーディオ機らしい音質を楽しむことができる。いわゆる「スマホ直差し」の音とは一線を画している。

ジャズのウッドベースはタイトだがシャープすぎず、低音の量感は適度で誇張感は少ない。高音域は伸びやかだが刺激的な音が少ないので耳に優しく感じられる。解像力に関しては標準的なスティックDACくらいではないかと感じた。

qdc「WHITE TIGER」と組み合わせて試聴

次にダイナミックドライバーのハイエンドモデルであるDITA Audio「PERPETUA」で試してみた。この組み合わせは極めて優れている。低音のパンチが力強く迫力があり、ドラムやパーカッションのアタック感が実に心地よい。またヴォーカルが艶やかでかつ歌詞がよく聞き取れる。バックバンドのサウンドとヴォーカルの音が混ざらずに極めて鮮明に分離して聴くことができる。

DITA Audio「PERPETUA」とも組み合わせてテスト

複雑な音を立体感豊かに見事に再現するサウンドで、PERPETUAの音質の高さとMIAD 01の音の力強さが見事に調和している。

平面磁界型ヘッドホンのSENDY AUDIO「Peacock」でも試してみた。ボリューム位置は60%程度で十分に音量が取れる。音を聴いてみると余裕のあり深みがあるサウンドを楽しむことができた。ヘッドホンアンプ並みではないが十分な実力はあると感じた。

オーディオファンむけアプリもインストールできる

アプリの使用感を検証してみると、まずApple Musicは問題なく使用できた。Android搭載DAPと比較しても、やはり画面が大きいのでストリーミングアプリが使いやすいと感じた。

ストリーミングの醍醐味は気分に応じて曲を次々と切り替えていくことで、そのためには大画面の操作性が必須だ。Android搭載DAPでは画面が小さいので、ストリーミングしても曲を自由に選ぶ快感が制限されてしまうが、MIAD 01のように大画面ならば快適にストリーミングの自由さを享受できる。スマホとしてのスクロールや画面遷移も早い部類だと思う。

マニア向けのNeutron Playerアプリも試してみたが、これが音質的には一番のオススメだ。普通の音楽再生アプリよりも細かい音の表現が向上し、音のレベルが一段上がったように感じられる。設定のポイントは「64bit処理」をオン、「オーバーサンプリング」を二倍に設定、「リサンプリング」の項目でオーディオファン(Audiophile)を選択、「ディザ処理」をオンにするなどだろう。

まとめると、MIAD 01の音質はあきらかに一般的なスマホ内蔵のアンプとは一線を画するような高音質で、特にダイナミック型ドライバー機と合わせた時の力強さや躍動感が気持ち良い。スティックDACでもここまでの力強さを感じられるモデルはなかなかないだろう。今回は手元になかったので水月雨のイヤホンは使わなかったが、水月雨のイヤホンとヘッドホンにはよく合うだろうと感じた。

なによりストリーミング音楽を大画面で楽しめるのは楽しく、4.4mm端子を直接スマホにさせるのは気持ち良い。水月雨はオーディオマニアのためのブランドだが、まさにマニアのための痒いところに手が届いた製品と言えるだろう。

 

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