公開日 2017/06/14 10:23

ラズパイオーディオで手軽に実現!Moode Audioで “I2Sの” 384kHz/32bit再生

海上忍のラズパイ・オーディオ通信(32)
4月末に開催されたヘッドホン祭から1ヶ月が経過し、「あの件」はどうなったのか?と多数の問い合わせを頂戴している。あの件とは、もちろん「ワンボードオーディオ・コンソーシアム規格準拠(予定)のケース」のこと。その後情報は発信していないが、時間をかけて細かな、しかし重要な修正を多数加えたことにより、機構的な部分が大幅に進化している。

ケースの試作品たち。3Dモデリングソフトと3Dプリンタを駆使した改良作業も、もうすぐ終了

たとえば、側面に配置されたmicro-B端子。ヘッドホン祭で展示した試作品は、デザインを重視したために端子開口部と側面一帯がフラットだったが、ケーブルによっては端子の刺さりが甘くなるという欠点があった。それを解消するため、端子周辺を少し掘り下げたことで、端子が奥までしっかり刺さるようになっている。USBポートが並ぶ背面部を取り外し可能にしたことも、Raspberry Piの着脱を容易にするための配慮だ。

担当デザイナーがRaspberry Pi用ケースを手掛けることは初めてという事情もあり、ディテールの改良にはかなり苦労したが、結局はプロデューサーである筆者自らが3Dモデリングソフトを使い、3Dプリンタで出力したものを確認、その結果をフィードバックするという方法で乗り切った(プロの機構屋さんのチェックが入るのでご安心を)。だから修正時の指示はミリ単位以下、端子用開口部の正確さが格段に向上したのは思わぬ副産物だ。

サードパーティー製拡張ボードに対応した交換パネル(前面/側面上部の小さな金属板)も、交渉と検証のすえ数種類ラインナップする段取りを整えた。現在のところ製品名は明かせないが、「あのボードも載るのか!」と喜んでいただけるはずだ。

サードパーティー製拡張ボードに対応した交換パネルも、数種類ラインナップできる見込みだ

合わせて開発したDACボード(仮にDAC01と呼ぶ)は、入念な不具合の洗い出しと音質面の調整を続けているが、ほぼ最終段階に到達している。パーツの見直しと回路の変更も実施しているため、もし再び試聴の機会を設けることができたら、ヘッドホン祭の時との音の違いに気付いていただけることだろう。

ここからが今回の本題「I2Sで384kHz/32bit再生」だ。DAC-1は、DACチップにTIのPCM5122を採用しており、現時点で公式なスペックとして謳えるのは「PCM 192kHz/24bit」となるが、PCM5122のスペックシートには「PCM 384kHz/32bit」と掲載されている。このギャップについて事情を説明しておきたい。

まず、現行のARM向けLinuxカーネル(Raspbianはv4.4ベース、そこから派生したVolumioも同様)は、I2S出力できるオーディオ信号(PCM)が最大192kHz/24bitだ。Kernel.orgで最新安定版v4.11.4のソースコード(root/include/sound/pcm.hなど)を眺めればわかるが、サンプリングレートは最大192kHzとして定義されており、これを超えることはできない。ボード上でレート変換処理でも行わないかぎり、Raspberry Pi向けGPIO接続型DACボードのスペックは192kHz/24bitで頭打ちにならざるをえない。

しかし、Raspberry PiのGPIOはハードウェア的には最大384kHz/32bitのI2S信号を扱うことができるため、LinuxカーネルやDACのドライバなどソフトウェア側の対応さえ整えば、192kHz/24bitの壁を越えることができる。ちょうど1年前に掲載されたTerra Berryのレビュー記事でも触れているが、192kHz/24bitを超えるサンプリングレートに対応するためのパッチが開発チームに提出されており、それは実現可能な段階に到達しているのだ。

デフォルトのカーネル(I2Sの上限は192kHz/24bit)でDXDを再生すると、ダウンサンプリングされて出力されてしまう

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