公開日 2012/11/19 11:25

「没入し体験するテレビ」“VIERA”「TH-L55WT5」を観る

【特別企画】VGP2012受賞モデル
取材・執筆/大橋伸太郎
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画質本位の「旗艦機」の実力をとことん堪能

今春からパナソニックは55V型の液晶方式大画面テレビに参入。TH‐L55WT5(WT5シリーズ)はその第3のモデルであり、画質本位の掛け値なしのフラグシップ、液晶方式の「本命」として姿を現した。同社の手がける液晶大画面への期待には大きいものがあった。IPSα方式ならではの映像の緻密さが50Vクラスの大画面領域に踏み出したらどのような映像を実現するか、また、パナソニックの分厚い映像技術の蓄積が大画面液晶のクオリティをどのように変えるか、注目していたユーザーは多いはず。
 
本機のIPSα方式55V液晶パネルは、製造工程が見直され液晶分子の配向の乱れがなくなり、黒浮きが大幅に改善された。元来IPSは精細感と視野角に優れるが、本機ではコントラストも格段に高めることで、大画面にふさわしい画質を実現したと言えよう。元々視野角に優れるIPS方式だが、斜め上下方向の解像度落ちを改善する位相差板の搭載でさらに見易さが高まっている。この4倍速パネルに8相バックライトスキャン(LEDは16分割ローカルディミング)を組み合わせた結果動き解像度は液晶方式最高水準のAPDC方式800画素/秒。映像エンジンには、「新デュアルコアPro4プロセッサー」を新採用。特筆したいのが1080pピュアダイレクトの搭載。同社DIGAと接続した場合、DIGA側でデジタル映像の4:2:0圧縮信号を4:4:4に復元、本機は4:4:4のまま30bit信号処理を表示する。これにより高い色解像度と広色域の映像が楽しめる。
 
スマホ連携も強化され、使いやすさも同時に追求

ビエラはDLNA規格に対する取り組みも早かった。このWT5はWi‐Fi子機を内蔵し、ケーブルレスで接続できるだけでなく、USB‐HDD内の番組を別室のビエラへ転送できるサーバー機能も兼ね備えている(お部屋ジャンプリンク)。クラウドサービスへの着目でも他をリード。「ビエラ・コネクト」で利用できる映像アプリは現在54に達している。さらに注目されるのは、民放5社及び電通が運営するVODサービス「もっとTV」に業界初対応していることである。リモコン上に専用ボタンが設けられワンプッシュで該当放送局の番組一覧が表示される。さらにスマホ連携も強化されており、専用アプリをダウンロードすれば、Wi‐Fiを通じ、スマホを本機のリモコンとして使用できるだけでなく、スマホ内の動画や画像、音楽を本機で再生可能となる。
 
視聴に移ろう。大きく、瑞々しく、息づくような大画面…。目の前にある本機はベゼルを極限まで細く(9.8o)したことで、映像が切り取られて浮かんでいるように見える。最初に見た映画は『ヘルプ』。50年代のアメリカ南部の町を舞台に中流階級の娘が社会の旧弊に気付き、黒人メイドの地位向上を訴える物語。この映画のポイントは色彩にある。単に人種の肌の色を対照させるのなら白黒で撮るという選択肢もあったはずだ。白人家庭の色彩の氾濫は、豊かさの頂点にあった白人社会の「奢り」の象徴である。本機で観ると単純な原色と見えたものがくすみや翳りのある中間色であったりする。1080pピュアダイレクトの4:4:4、30bit処理により、単純な色相の液晶テレビで観たら気付かないであろう色彩に隠された映画のメッセージまでくみ取れるようになった。
 
次に、『タイタニック3D』を観る。本機は新APD技術でスキャン速度が高速化されクロストークを抑えた明るい画質を達成している。色彩バランス変化が少なく階調も堅持する。視聴距離約2H程度まで近づいて視聴し、吸い込まれるような立体感を確認した。映像の周辺部に現れやすい映像の不整合も本機の場合ほぼ完全に制圧されている。
 
本機は液晶方式のテレビとして待ち続けた甲斐のあった、他方式の長所も併せ持つハイブリッドの大器である。明るくブリリアントだが同時に艶っぽさと良い意味での「濁り」を表現できるのである。筆者が特に感激したのは、パナソニックのテレビらしい大らかな包容力があること。2Dでも3Dでもそれは変わらない。本機は「没入し体験するテレビ」なのである。



PANASONIC
液晶テレビ TH-L55WT5
【SPEC】●サイズ:55V型 ●受信放送:地上・BS・110度CSデジタル×3 ●主な接続端子:HDMI×4、D4×1、ビデオ×2、USB×3(USB3.0対応) ●消費電力:134W(待機時約0.1W) ●外形寸法:1236W×804H×335Dmm ●質量:約19.5kg(スタンド含む)

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