公開日 2026/05/26 20:45

<NHK技研公開>イマーシブ映像の制作/視聴システムが多数披露。体験展示 “ヒグマVR”も

ヘッドマウントディスプレイや15K 360度カメラなど最新技術が公開

NHK放送技術研究所(NHK技研)が各種研究成果を一般に披露する「技研公開2026」が、5月28日(木)から5月31日(日)の4日間にわたり開催される。

28日からの一般公開に先立ち、プレス向け見学会が実施された。その中から本稿では、VRや360度映像などイマーシブメディアに関する技術展示をレポートする。

薄型化で “疲れにくい” ライトフィールド方式ヘッドマウントディスプレイ

VR関連ではまず、先日開発発表を行っていた、ライトフィールド方式を採用した薄型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を展示。実機でのデモを行っている。

薄型化したライトフィールド方式のHMDが展示

このHMDは、ライトフィールド方式を採用することで、長時間装着していても視覚的な疲労を抑えることができる点が大きな特徴だ。

一般的なVRゴーグルは、左右の目に少しずれた映像を見せる「視差」によって立体感を作り出しているが、この方式は「視差によって知覚している映像」と「実際に目でピントを合わせている位置」の不一致が引き起こす視覚的な疲労が課題とされていた。

そこで、物体から放たれて目に到達する光線の集まりを再現する技術「ライトフィールド」を駆使し、実世界で物を見るときと同じように、見たい位置に目のピントを合わせることができるHMDが開発された。これによって、長時間装着していても、視覚的な疲労を抑えることができるという。

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ライトフィールド方式HMDに表示した要素画像群を、接眼レンズのピントを調整して立体的に見せるデモも実施されていた

ライトフィールド方式のHMD自体は以前から開発が進められていたが、従来は内部で中間像を作り出すための間隔が必要なため、装置自体のサイズが大きくなる傾向にあった。今回公開されたモデルでは、中間像を介さず直接3次元映像を目に届ける新しい光学系の開発に成功。内部の奥行きを従来比で79%削減する大幅な薄型化を実現したことがトピックとなる。

さらに、従来より狭い画素ピッチのディスプレイを採用し、レイトレーシング技術による要素画像の高速生成を組み合わせることで、高精細な3次元映像をリアルタイムに表示できるとのこと。今後は光学系の改善を進めて3次元映像の高精細化と視野角の拡大を図り、2035年ごろの実用化を目指すという。

15K映像での360度カメラによるイマーシブコンテンツ制作

イマーシブコンテンツを制作する機材も開発。効率的・機動的なイマーシブ映像制作につながるという「ライブ出力対応15K 360度カメラ」などが展示されている。今回の展示では、リアルタイムの映像処理に対応したのが大きな進化点だという。

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 簡易的にVRで360度カメラを体験できる展示も

こちらは15K解像度の360度カメラと、撮影した15K 360度映像の任意位置を切り出してライブ出力できるシステム。まずカメラは2枚の小型8K×8Kイメージセンサーと二眼屈曲光学系の組み合わせによって薄型化を実現。前後に配置されたレンズ間の距離を短くすることで、2つの映像の合成が容易になり、つなぎ目の目立たない15K 360度映像の撮影が可能だという。

出力システムでは、撮影した映像をその場でHMDなどに表示し、実際の視聴環境に近い映像を確認できるとのこと。高精細な15K 360度映像から注目したい部分を切り出して、2Kなどの番組制作に活用することもできる。さらに今後、2029年までに実用的な30K 360度カメラの開発を目指すとしている。

 サグラダ・ファミリアのイマーシブ映像体験

 

実写と3Dアバターとの合成も容易に

実写映像に3DCGアバターを合成するバーチャルプロダクション「可搬型リアルタイムアバター合成システム」も開発。固定8Kカメラによる広角実写映像にアバターを合成し、必要な部分を切り出して番組を制作できるというもので、カメラの向きを1回調整するだけで簡単にセットアップできる点も特徴のひとつ。

実写と3Dアバターが同居するコンテンツがより制作しやすくなるシステムも提案

カメラ固定のため、リアルとバーチャルの位置合わせも容易で、特殊なセンサーなどは不要。このため、マルチカメラ風3DCG合成演出を少ない機材で実現できる。

自然な掛け合いを可能とするアバター操演者支援機能も備えているとNHKは説明。操演者はHMDを装着し、3DCGアバターの動きや表情を操作。その際、視界には台本やスタジオセットが表示され、リアルとバーチャルの自然な掛け合いをサポートする。

アバターの操演者は、HMDで台本やスタジオセットなどを確認できる

そして、8K映像中の必要な部分(ROI)を切り出して2K解像度で出力するためのスイッチャーも装備。直感的な操作でROI 間の切り替えやパン・ズームなど、多彩なカメラワーク演出ができるとのこと。

 ひとりで8K映像から2K解像度出力の切り抜きスイッチングが行える

こちらはすでに実用段階に入っており、今後は収録番組からライブ番組まで、そしてスタジオ制作から中継制作まで、さまざまな番組に活用していくという。

“ヒグマVR” などの体験展示も

イマーシブメディアを来場者が分かりやすく体感できるデモも用意。小型8K×8Kカメラで撮影したイマーシブ映像を、16面湾曲ディスプレイで表示するコーナーなどを展開している。

 『ドラマ10 コンビニ兄弟』の世界観を味わえる展示

昨今はクマによる被害が社会問題になっていることを受けて、ヒグマについて学ぶVR体験デモも用意。こちらでは、複数の写真からフォトグラメトリで作成したヒグマのフンや足跡の3Dモデルを目の前で観察できる。

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 VR上でヒグマのフンや足跡の3Dモデルを動かしながら学べるコンテンツ

また、動物園のヒグマを間近で撮影した両眼視差のある360度映像によって、ヒグマの大きさなども実感できるとのこと。なお、コンテンツにはすべて専門家の解説が付いている。

ヒグマ撮影で使用した360度カメラ

 

同時開催「TECH EXPO」では8K深海撮影システムなど展示

本年は技研公開と合わせて、放送現場ならではのアイデアや創意工夫から生まれた機材や技術を紹介するイベント「NHK TECH EXPO」も同時開催された。上述のイマーシブコンテンツとは少し趣が異なるものの、こちらでも8K映像に関する展示が行われている。

それが「8K深海撮影システム」。その名の通り深海の生き物や景観を撮影するためのもので、潜水艇の内部からフルリモートで8Kカメラを制御できる撮影システムを開発。深海用の高耐圧ドームポートによる映像の歪みに対し、専用の補正レンズを開発し、8Kクオリティの映像記録を実現した。

潜水艦外に露出する8Kカメラ。水圧に耐えるため半球状にする必要があり、補正レンズで8Kのクオリティを担保している

このシステムでは、カメラマンが乗る潜水艇と、8Kカメラを収めた防水ハウジングを光ケーブル1本で接続し、カメラ制御/レンズ制御/8K映像の各信号を多重化して伝送。映像収録を潜水艇内部で行うことで、記録媒体の交換や機材トラブルへの迅速な対応ができるようにした。また、海洋生物撮影の経験をもとに、被写体とレンズの距離を5mと想定し、最高画質を得られるように設計しているとのこと。

 光信号ケーブル1本で8K映像信号を潜水艦内部へ伝送

 

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