オブジェクトベース音響による次世代音声サービス研究も

<NHK技研公開>アトモス/DTS:Xの活用で22.2chサラウンドを現行AVアンプでも取り扱い可能に

編集部:小野佳希
2018年05月22日
NHK放送技術研究所が各種研究成果を一般に披露する「技研公開2018」が、5月24日(木)から5月27日(日)まで開催される。これに先立ち、プレス向けプレビューが行われた。本稿では、8K有機ELディスプレイや、22.2ch音声のドルビーアトモス/DTS:X変換などについてレポートする。


■8K有機ELディスプレイは4Kパネル4枚構成から8Kパネル1枚に進化

いよいよ今年12月からの開始が控えている新4K8K衛星放送。今回の技研公開では、 “8Kの次” を見据えているとNHK技研の黒田徹所長は語るが、別項でレポートしている4倍速スロー再生や “フルスペック8K” リアルタイム伝送、8Kリアルタイム中継技術など、それでもやはり8K関連技術は多数展示されている。

例えば、昨年までは4Kパネル4枚で構成していたシート型8K有機ELディスプレイを今回は1枚のガラスシートで実現。88インチの極薄有機ELディスプレイを体験することができる。

シート型8K有機ELディスプレイ

また、有機ELディスプレイに関連し、従来よりも長寿命化を実現する逆構造有機ELデバイスの開発にも着手中。プラスチック基板上にディスプレイを作成する通常の方法では、酸素・水分に弱い有機ELデバイスに欠陥画素が徐々に増えていくが、逆構造にすることで長寿命化を実現するという。

従来構造のデバイス(左)よりも長寿命化するという

そのほか、8Kカメラの高感度化を目指し、新たな固体撮像デバイスの研究も実施。薄くても光を十分吸収できる結晶セレンを用いた光電変換膜を積層した8K CMOSデバイスを試作した。

8K CMOSセンサー試作機

また、地上波による8K放送の実現に向けた研究にも着手。映像・音声符号化や伝送路符号化技術の研究開発を、受信機メーカーや大学と連携して進めており、地デジ放送よりも大幅に性能が向上した暫定的な伝送方式を策定し改良を続けるなどしている。

同研究では、符号化効率を向上するために、前段で雑音除去などを行う装置も開発。符号化による画質劣化につながる不要な成分を取り除くことで画質を改善したという。

そのほか、22.2ch音声信号対応の、MPEG-H 3D Audioを用いたリアルタイム符号化・複合装置を世界で初めて開発。最大1,400kbit/sまでのビットレートに対応するとともに、1/50の圧縮率で放送品質を満たすことができるという。

■アトモス/DTS:Xの活用で22.2chサラウンドを現行AVアンプでも取り扱い可能に

8K放送のもうひとつの魅力としてNHKが打ち出しているのが、22.2chサラウンド音声。22.2ch分のスピーカーをスタイリッシュに埋め込んだリビングで “8Kのある暮らし” を提案したり、22.2ch信号をドルビーアトモスやDTS:Xに変換することで現行のAVアンプ等でも扱えるようにする技術などをデモしている。

リビングでの22.2ch実装イメージを体験可能

なお、ドルビーアトモス/DTS:Xへの変換はオブジェクトオーディオに変換するのではなく、アトモス/DTS:Xでの7.1.4chや5.1.2chなどのスピーカー配置に22.2ch信号を割り振れるようダウンミックスするというもの。将来的にはSTBなどでの提供を想定しているという。

アトモス/DTS:Xへの変換デモ

また、ラインアレイスピーカーとサブウーファーによるシステムや、ステレオスピーカーで22.2ch音響再生を再現するバーチャルサラウンド技術もデモ。ラインアレイスピーカーによるシステムはシャープとの共同開発によるもので、「実用化できるとすれば2020年以降になるだろう」(説明員)とのことだった。

テレビの上下にラインアレイスピーカーを1基ずつ装着しサブウーファーと組み合わせて使用

22.2ch信号を処理するプロセッサー部

なお、こうした22.2ch音声の研究とは別に、オブジェクトベース音響による次世代音声サービスについてのデモも実施。国際標準の音響メタデータで番組内の音の素材の構成や再生位置などを記述し、既存のデジタル音声入出力装置を介して音声信号とメタデータを同期させて伝送させる方式を開発したという。これにより、視聴者は好きなチームへの歓声に背景音を切り替え、実況を小さくして、観客席にいるかのようにスポーツを楽しむなど、自分の好みにあわせて番組音声をカスタマイズできるようになるとした。

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