今こそ推したい!ロングヒットを続けるワイヤレスヘッドホン。「Sonos Ace」は音質もノイキャンも一級品
Sonosブランド初となるワイヤレスヘッドホンとして、オーディオビジュアルファンの注目集めた「Sonos Ace」が、筆者も審査に参加しているオーディオビジュアルの総合アワード「VGP2026」にて、またもや部門金賞に輝いた。
初エントリーされた「VGP2025」では部門金賞と特別賞「コンセプト大賞」を受賞し、続く「VGP2025 SUMMER」でも部門金賞を獲得したため、今期の部門金賞受賞によって、3期連続で金賞を獲得するという快挙を成し得た。
発売からおよそ1年半が経ち、新製品として注目される時期は過ぎ、逆に周囲を新製品に囲まれる状況ではある。しかしだからこそ、それら新製品と並べても機能性の面で未だ見劣りしないことに驚かされる。そして登場時点でその巧みさに感心させられた、美しさと使いやすさを兼ね備えたデザイン。その完成度は時を経ることでより強く実感されるものだ。
サウンドにおいても、競合新製品との対比により、このモデルならではの美点もより明確になったと言える。また発売から現在までの間、アップデートによる機能の安定や向上、追加も行われており、愛用ユーザーの満足度も高いことだろう。今も推したい、今こそ推したい、そんなロングヒットヘッドホンであるSonos Aceの魅力に、改めて迫ってみたい。
複合振動版で歪みを抑えつつ適度な感度を確保した40mmダイナミックドライバーを搭載
ダイナミックドライバーは40mm口径で、TPU層とPeek層による3層ラミネート振動板を採用。適切な口径設定と複合材振動板によって歪みを抑えつつ適切な感度も確保し、音質とノイキャン性能、その両面の土台となっている。マイクは合計8基を搭載し、それらの活用で通話性能とノイズキャンセリングを向上させている。
Bluetooth周りはSBCやAACの基本コーデックに加え、aptX AdaptiveとaptX Losslessもフォローする。さらにUSB Type-Cによる有線デジタル接続でのロスレス伝送にも対応し、ハイレゾストリーミングへの適性もバッチリだ。加えてApple MusicとAmazon Music Unlimitedの空間オーディオの再生にも対応している。
独自機能「テレビ音声スワップ」でサウンドバーと連携、「TrueCinema」機能も実装
ブランド独自の機能「テレビ音声スワップ」にも注目したい。「Sonos Arc Ultra」などのSonosのサウンドバーで映像コンテンツを再生中に、ヘッドホン本体にあるコンテンツキーボタンをロングプッシュ。するとサウンドバーで再生されていた音がヘッドホン側にバトンタッチされるという機能だ。映画視聴中に家族が先に就寝となった際など、スピーカーからヘッドホンへの切り替えをスムーズに行うことができる。
しかもその際の視聴コンテンツがDolby Atmos作品なら、その立体音響をヘッドホンでも再現。アップデートによって追加された「TrueCinema」機能も使えば、何とあなたのその部屋でスピーカーシステムを鳴らした、その聴こえ方をヘッドホンで再現することまでも可能だ。スピーカーでもヘッドホンでも違和感のない、シームレスなオーディオ体験を実現している。
ミニマルな美しさと実用的な操作性を兼ね備えたデザインも、このヘッドホンの魅力として欠かせない要素だ。余計なディテールは省き、フォルムやラインの美しさ、ピュアな単色の質感、金属パーツの輝きを際立たせている。


ミニマル志向でありながら、操作系にはデザイン上のノイズを生み出さないタッチコントロールではなく、直感的な操作性を重視してフィジカルボタンを採用。その上でそのボタンもデザインのアクセントとして取り込み、前述の美しさを完成させている。装着感も極めて良好。優美なフォルムや柔らかな色合いとも揃った、ソフトな感触に耳周りが包まれる。
音色がスムーズでナチュラル、女性ボーカルの再現ではリアリティが際立つ
サウンドの魅力も改めてお伝えしていこう。まず前提として、再生するコンテンツ本来の音色、情報量、帯域バランス等を損なうような独自の解釈は加えない、忠実再生タイプの音作りだ。
だが無個性なのかというと、もちろんそうではない。写実画にも画家や画材の個性が反映されるように、このヘッドホンの音からも同社らしさは感じられる。具体的には音色のスムーズさであり、全体を通してのナチュラルな聴こえ方だ。
iPhoneからAAC接続で、星街すいせいさん「もうどうなってもいいや」(Apple Music)を再生。情報量が多くエッジも効いた楽曲だからこそ、それに対してのSonos Aceならではのアプローチが特にわかりやすい。何より魅力的なのはボーカルの適度な湿度感だ。そのしっとりとした感触によって、このエレクトリックなサウンドの中での歌声、人の声の生々しさが際立つ。
そのボーカルを取り囲む他のサウンドの存在感も自然。超現実的なまでの明瞭感にはせず、しかし意識を向けて聴き込めば細部まで描き込まれている。主役たるボーカルの背景として半歩引かせつつ、感情の嵐を表現するかのような怒涛の情報量は損なわない、絶妙な聴かせ方だ。
この楽曲らしさを、このヘッドホンらしく描き出している。総じてそのように言えるだろう。音楽とオーディオの関係性として理想的かもしれない。なお接続をUSBデジタル有線に切り替えた際の変化としては、前述の印象はそのままに情報量がちょい足しされる印象。利用シーン毎に無線と有線を切り替えても違和感はないだろう。
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