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公開日 2023/02/13 06:35

システムはシンプル、サウンドは超一流。エソテリックの「ミニマルハイエンド」は新時代のオーディオ提案だ

【特別企画】ES-Link Analogによる違いも確認
山之内 正
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最小限のシステム構成で、「ハイエンドオーディオ」の選択肢を増やす



エソテリックが「N-05XD」と「S-05」のペアを「ミニマルハイエンド」と呼び、新しい価値観を提案中だ。どういうことなのか、要点をかいつまんで説明しよう。

エソテリックが新たに提唱する「ミニマルハイエンド」。高品位なプレーヤーとアンプ、それにスピーカーだけの組み合わせは、物量投入型とは違う新しいハイエンドのスタイルを実現する

物量の投入に制約がないフラグシップ級のオーディオ機器は大きく重くなりがちで、置き場所の確保などハンドリングの難しさが悩みの種だ。音にはこだわりつつ、そこまで使い手を選ばないシステムを組めないものか。オーディオ専用ルームではなく、リビングでも真価を発揮できるハイエンドオーディオがあってもいいのではないか。

そこで生まれたのが「ミニマルハイエンド」というコンセプトだ。Grandiosoシリーズなど物量投入の極致のような製品群を作っているエソテリックが急に方針を転換したわけではなく、最小限の構成でカジュアルオーディオとは別次元の音を目指し、ハイエンドオーディオの選択肢を増やすことを狙ったことが新しい。

パワーアンプ「S-05」(990,000円/シルバー・税込)と、ネットワークプレーヤー/DAC/プリアンプまで一体化した「N-05XD」(935,000円/シルバー・税込)の組み合わせがエソテリックならではの「ミニマルハイエンド」の提案。プリ機能までプレーヤー側に一体化することで、パワーアンプは増幅のみに特化できることも音質面でメリットとなる

妥協のない音質追求とシンプルさを両立させるために、まずは従来システムの基本構成を見直した。音質優先の観点からアンプはセパレート型にこだわりつつ、ネットワークプレーヤーとプリアンプを一台にまとめ、そこにステレオパワーアンプを組み合わせる方法を選んでいる。ハイエンドオーディオでは本体と電源の分離や左右独立化によって筐体の数がどんどん増えていくので、ソース機器も含めての2筐体構成は最小限と呼んでいいだろう。

シンプル化してもハイエンドと呼べるのはたしかな理由がある。N-05XDは上級機から独自開発のディスクリートDACを受け継いでいるし、S-05は回路構成を吟味したクラスAアンプを採用。さらに両者を独自の電流伝送方式「ES-Link Analog」でつなぐことで、エソテリックが目指す理想の音に近付くという。

「S-05」の背面と「N-05XD」の背面。通常のバランス伝送(XLRケーブル)に加え、独自の「ES-Link Analog」でも接続可能。XLRケーブルを「逆向き」使用することで接続できるので、追加ケーブルに投資しなくてもそのサウンドを楽しめることも大きなポイント

ES-Link Analog端子を積む機器間でしか使えない手法だが、同社のアンプを手にしたユーザーの大半が実際に電流伝送を選んでいるそうなので、支持は着実に広がっているようだ。具体的な音質上のメリットは記事後半で明らかにしたい。

アンプ性能の余裕がスピーカーの表現力向上に直結することはいうまでもない。優れたアンプは名門ブランドの上位スピーカーを朗々と鳴らし、憧れのスピーカーから真価を引き出す。そもそもミニマルハイエンドでシステムを組む最大の楽しみはスピーカー選びから始まると言っていい。白羽の矢を立てたスピーカーの魅力をどこまで引き出せるのか。そんな視点からN-05XDとS-05の実力を検証することが今回の試聴の目的である。

S-05のアンプブロック部。デュアルモノラル構成で、妥協のないパーツを選定。Grandioso M1X譲りの技術を一体型に落とし込んでいる

ミニマルハイエンドにふさわしいブックシェルフスピーカー2機種を選定



ミニマルハイエンドのコンセプトにふさわしいと筆者が考えるスピーカーを今回は2機種選んでいる。1機種目はソナス・ファベールのOlympicaシリーズからブックシェルフ型の「Olympica Nova I」を選択。アッパーミドルに位置付けられる同シリーズのなかでは身近な存在だが、上位機種の技術を投入することで前作から大きく音質が向上しており、細部に至るまで妥協なく仕上げられた外観は工芸品のように美しい。本格派のイタリア製スピーカーを一度は手にしたいと考えているオーディオファンにお薦めしたい名機だ。

ソナス・ファベール「Olympica Nova I」(935,000円/ペア・税込)。木材をリュート形のキャビネット形状に成型、平行面をなくし優美なデザインに仕上げている。メイド・イン・イタリアの「ミニマルハイエンド」にふさわしい仕上がり

もう1機種はイタリアと国境を接するスイスを代表してピエガの「Coax 411」に白羽の矢を立てた。最新世代の同軸リボンユニット「C112+」が450Hzから50kHzに至るワイドな音域を担い、低域はチタン製ボイスコイルを投入した16cmUHQDウーファーが受け持つ。構造を大胆に見直したC112+は適材適所でダンピング効果を高めることで再生音の純度が飛躍的に上がっており、ピエガのリボンユニットならではの魅力をこれまで以上に堪能できるようになった。

ピエガの「Coax Gen2」シリーズ唯一のブックシェルフスピーカー「Coax411」(1,65,000円/ペア・税込)。同軸リボンユニットとウーファーと、アルミのキャビネットがしっかりホールド。スリムでエレガンスなスイス・メイドのデザインも目を惹く

動的な立体表現に十分な説得力があるOlympica Nova I



最初にOlympica Nova Iを聴く。横幅20cmのスリムなスピーカーだが、個性的なデザインがもたらす存在感は上位機種に引けを取らない。ベートーヴェンのスプリングソナタ(フランク・ペーター・ツィンマーマン&マルティン・ヘルムヒェン、FLAC 96kHz/24bit)は艶と潤いが両立したヴァイオリンの音色がなんとも魅力的で、明るく澄んだ旋律が耳を心地よく刺激する。弦楽器の瑞々しい響きはソナス・ファベールのスピーカーに共通する美点の一つで、その長所がツィンマーマンの音色の個性と絶妙に重なって力強さを生んでいる。

Olympica Nova IとCoax 411、2機種のスピーカーを組み合わせて「N-05XD」&「S-05」の実力をチェック

ピアノの活き活きとした表情とリズムの躍動感にも強い印象を受けた。これもOlympica Nova Iの長所なのだが、その潜在能力を引き出すうえで、パワーアンプのS-05が貢献していることは間違いなさそうだ。特にN-05XDとS-05をES-Link Analogでつないだときにその恩恵が大きいと感じる。

電流伝送は出力側が高インピーダンスで送り出し、入力側が低インピーダンスで受けるため、同じ音量で比較した場合、通常の電圧伝送に比べて電流値が約100倍に及ぶ。それだけパワーアンプにかかるストレスが小さくなり、ケーブルの抵抗に起因するエネルギーロスも回避できるので、微小信号の伝送でも忠実度が改善する。エソテリックの加藤氏によると、パワーアンプの入力段に電流/電圧変換回路を追加する必要があるとはいえ、電流伝送がもたらすメリットの方がはるかに大きいそうだ。

ES-Link Analog接続時にはN-05XDの設定から出力に「ESLA」を選択

パワーアンプ側は背面のインプットセレクターで「ESL-A」を接続すればOK

セリア・ネルゴール《Houses》(FLAC 96kHz/24bit)をES-Link Analog接続で聴くと、最弱音でリズムを刻むパーカッションの音色がくもらず、ヴォーカルやシンセサイザーとの対比が鮮やかに浮かび上がる。Olympica Nova Iは強弱どちらの領域でもリニアリティが高く歪みが少ないので、弱音の繊細さと力強い音の描き分けがとてもダイナミックだ。

流麗なキャビネット形状のおかげで空間的な遠近感も抜きん出ているが、それに加えてリズムとダイナミクスの変化を忠実に引き出す動的な立体表現にも十分な説得力がある。演奏の躍動感が強まったように聴こえる背景には、レスポンスの良い音を引き出すアンプの資質が寄与しているのだ。

パースペクティブの広さはCoax 411ならではの魅力



スピーカーをピエガのCoax 411に切り替えたときの第一印象は「小型スピーカーを聴いている感じがしない」というものだった。ヴァイオリンソナタとヴォーカルだけでなく、オーケストラの演奏を聴いてもその印象は変わらない。ピアノも良いが、オーケストラの方がわかりやすく、低重心のエネルギーバランスと、風のようにフワリと動く空気感が見事に両立していることに気付く。

独自の同軸リボンユニットはピエガならではの美点。「C112+」では素材を再吟味しダンプ材なども強化されている

ベートーヴェンの交響曲第5番をサヴァール指揮ル・コンセール・ナシオンの演奏(TIDAL 44.1kHz/16bit)で聴いたのだが、異様なほど残響時間が長い録音にも関わらず、低弦とティンパニどちらも風通しの良い響きが広がる。大量の空気がよどみなく動く感触が、キャビネット容積に余裕のあるフロアスタンディング型スピーカーを連想させる。

ES-Link Analogにつなぎ替えると、空気が楽々と動く感触がさらに強まると同時に、ヴィオラとチェロの粒立ちと音色の瑞々しさが伝わるようになった。コントラバスとティンパニが下から支える低重心のバランスはそのままだが、内声の細かい音符の動きがくっきりと浮かび、リズムとハーモニーの変化が聴き取りやすくなる効果が大きい。この曲でも演奏の躍動感は確実に上がっていて、サヴァールの解釈の聴きどころがもらさず伝わってきた。

次に、N-05XDをRoonの再生端末に指定し、アンネ・ゾフィー・ムターが弾くジョン・ウィリアムズ作品のアルバム《Across The Stars》をTIDALで聴いた。独奏ヴァイオリンは品位の高さとなめらかさがあり、ほどよく潤いをたたえた美音に魅せられる。オーケストラは木管楽器よりも後列側の音場が左右に大きく広がり、スピーカーの外側まで伸びやかな余韻が展開。このパースペクティブの広さと独奏ヴァイオリンの自然な楽器イメージはCoax 411のスリムなラウンドキャビネットの賜物で、このスピーカーを選ぶ理由になりそうだ。

ストリーミングもRoonも楽しめる多機能性にも着目



エソテリックのアプリもミュージックサーバーとストリーミングの音源をシームレスに選曲して再生リストに追加できるが、Roonの使い勝手の良さと機能の充実ぶりにも注目していただきたい。TIDALのマスター音源を選べばMQAのハイレゾ再生が可能になり、ムターの音源ではCDフォーマットと96kHz/24bitのマスター仕様を聴き比べることができた。

エソテリックの専用操作アプリ「ESOTERIC Sound Stream」は操作性も良好。TIDALと連携すればMQAとハイレゾ、CDリッピングデータの聴き比べなども手元デバイスだけで実現できる

そこで気付いたのが、たとえCDフォーマットの音源でも思いがけず良い音で楽しめるという事実だ。もちろんハイレゾとの違いは聴き取れるのだが、CDをリッピングしたデータやストリーミングのロスレスデータ(44.1kHz/16bit)のクオリティ感の高さには驚かされる。Roonを高品質で活用できることもそうだが、ハイエンドグレードのネットワークプレーヤーを選ぶと予期せぬアドバンテージを実感する機会が増える。

Roon Readyとしても活用可能。ネットワーク再生との聴き比べなど使いこなしの幅も広い

ミニマルハイエンドという概念はシンプルなように見えて奥が深い。今回は総額300万円超えの製品を組み合わせているので音が良いのは当然と思うかもしれないが、ハイエンド級のスピーカーから真の実力を引き出すのはそう簡単ではないのだ。妥協なしに選んだスピーカーは10年といわず20年使い続けても飽きがこないものだが、そんなお気に入りのスピーカーの真価を引き出せるかどうかはソース機器とアンプの性能で決まる。N-05XDとS-05は2台のスピーカーそれぞれの個性を柔軟に鳴らし分け、本来の実力を引き出してみせた。

(提供:エソテリック)

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