公開日 2018/06/28 08:30

デノン「AVR-X1500H」レビュー。先進機能をフルカバー、音質◎のスタンダードAVアンプ

HEOS機能も搭載

基本的な回路構成や盛り込まれた技術も上位の「AVR-X2500H」に準じるもの(もちろん、回路規模や部品のグレードはやはり上位モデルの方が上回っている)。ヒートシンクやトランスからの信号を受けにくく、信号経路の最短化でピュアな伝送を狙ったレイアウトを採用する。

特筆すべきは、徹底した経路の最短化と最適化を追求するため、アナログ回路設計の自由度を確保するために、JRC(新日本無線)と共同開発したセレクター/ボリューム用チップを個別に搭載している点だ。

AVR-X1500Hの筐体内部

ボリュームとセレクターをディスクリート化することで、ボリュームチップ内のバッファを回避したり、また、トータルでシンプル&ストレートな回路が実現できる。こうした高度な取り組みがエントリーモデルの本機でも採用できるのは、上位モデル「AVR-X2500H」の資産を有効活用しているからに他ならず、価格以上の価値を生み出せる理由と言える。

パワーアンプは当然ディスクリート構成で厳選されたパーツの使用により、エネルギッシュで高品位なサウンドを踏襲。上位モデル「AVR-X2500H」に比べると、電源トランスのサイズやブロックキャパシタの容量が一回り小さいが、これは出力の差を考えると妥当。総じて、「AVR-X2500H」と同等のクオリティーが期待でき、一般家庭での利用で出力を持て余すなら、本機を選択するのが賢明と思えるほどだ。

AVR-X1500Hの背面端子部


ステレオ再生では高密度で端正な低域が音楽を安定して支える

まずはハイレゾファイル再生で、アンプとしての実力を確認。華やいだ空気感が心地良いSusan Wang「How deep is your Love」は、線が少し細く感じるものの、裏を返せば引き締まっているとも言える。ボーカルの定位が明瞭で音像の大きさも適正。2chでも豊かな空間の広がりが感じられ、曲の雰囲気を盛り上げてくれる。

情報量が増えたハイレゾ時代は、CD時代のように力尽くで低域をグングン押し出す必要はなく、収録されている音を忠実に引き出すのがトレンドかつ正解。高密度で抜けた帯域を感じさせない端正な低域が音楽全体を安定して支え、音楽全体がキレイなピラミッド型になると、心地よさが抜群に良くなるもの。キレの良さ、空間の見通しの良さも特筆に値し、プリアンプセクションに注入された数々のHiFi的アプローチが、結果としての音に現れているように感じた。

まずはAVR-X1500Hのステレオ再生能力を検証。CDやハイレゾ音源を再生した

Billy Joel「Travelin’ Prayer」も、筆者のリファレンスのひとつ。のっけから弾むベースが印象的な曲で、進行に従って楽器が増え、ゴージャスに聴こえるか、うるさく聞こえるかが評価の分かれ目。オーディオ機器としての体力が現れる。1分16秒からのバンジョーや、2分11秒からのピアノは、分離が明瞭でそれぞれが主張。特に、2分36秒からのバイオリンが歪みや濁りを感じず、気持ち良く安心して楽しめるのは珍しく、本機の実力はかなりの高水準と見た。

DSDは、Michael Jackson「Billy Jean」(DSD2.8MHz)で確認。冒頭からのドラムは立ち上がりが鋭くインパクトが強烈で、かつ、キレが良く、対比で静寂も高く感じる。エントリーモデルとは思えないドライブ能力、制動力の高さが、DSDならではの連続して押し出すような力強い低域も、解像度豊かに質感の変化を表現しつつ再生してくれるのだ。


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