公開日 2018/03/02 11:51

「1954年以降はRIAAカーブ」は本当か? ― 「記録」と「聴感」から探るEQカーブの真意

レコード再生の未知の世界を検証する
菅沼洋介(ENZO j-Fi LLC.)
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE


いかがだっただろうか。今回、検証に使ったシステムは現代ハイエンドの象徴ともいえる機器やケーブル、アクセサリーを使用しており、帯域バランスのフラットさにのみならず、位相特性も極めて優秀だ。何もない空間から音が発生するのではなく、楽器により空気が振動し音が伝わるという一連の発音体から音が生み出されることが、良い録音だと手に取るように分かる。それだけに、EQカーブが正しくないと位相特性が乱れ、空気感が散逸し、あたかも宇宙空間で音が出ているかの如く現実感が薄れる。

音楽録音というのは、音楽だけではなく当時の人の営み、文化をも残す素晴らしい行為であり、特にオリジナル盤にはそれらが鮮度高く刻まれている。せっかく再生するのであれば、人の存在をつかみ取れるようにしたいものだ。

■正解がないEQカーブ、だからこそ検証する価値がある(編集部)

今回は、ENZO j-Fi LLC.の菅沼氏が、実際の聴感も踏まえながら各レーベルのEQカーブを検証したその結果をレポートいただいた。これまでは何も気にされることなく、RIAAカーブが常識とされていた盤でも、今回の検証では実に興味深い結果となっている。

編集部で調べた限り、世界を見渡してみても今回の検証のような実盤を持ってしてさまざまなEQカーブを試した例はなく、それゆえに本レポートは極めて貴重な資料となりそうだ。

M2TECH「Joplin MkII」(写真中、¥220,000/税別)

M2TECH「Evo PhonoDAC Two」(¥180,000/税別)
 
検証に使ったフォノイコライザーは一般的ではない特注品であるものの、本項で登場するEQカーブはM2TECH「Joplin MkII」と「Evo PhonoDAC Two」などで再現が可能だ。この両機の特徴は、ヘッドアンプで昇圧した後、一度AD変換にてデジタル処理し、デジタル領域にて多数のEQカーブを適用すること。かつてEQカーブの設定に用いられたトーンコントロールによる調整の場合、マニュアルかつその自由度が高すぎるため、位相特性も含めて正確なカーブを探し出すのは難しい。M2TECHの場合は、各EQカーブをプリセットとして用意し、各レーベル独自のEQカーブを呼び出せるため、簡単にオリジナル盤の真価を味わうことができるのも魅力である。

今回の菅沼氏の検証レポートから考えるに、現代の高忠実システムにおいてEQカーブの違いは、単に帯域バランスの違いにとどまらないようだ。実際、EQカーブをかけると周波数特性と共に位相特性も変化する。位相管理に着目した機器だと、この位相特性の変化が音に現れるといっていいだろう。



ピーター・バラカン氏がレコードのEQカーブを検証するイベント
「BARAKAN EVENING VOL.13  カーブにご注意! -MIND THE CURVE!!-」
2018年3月7日(水)に開催!



「音楽の伝道師」として、数々のメディアで活躍するピーター・バラカン氏。そんな同氏が東京・代官山の「晴れたら空に豆まいて」で開催している「BARAKAN EVENING」の次なるテーマはなんとEQカーブ! 使用されるのは、さまざまなEQカーブに対応したM2TECHの製品をはじめとしたTOP WING Cybersound Group取り扱いの製品達。驚く発見も多いイコライザーカーブの世界をバラカン氏と共にぜひ体感して欲しい。
詳細はこちらをチェック!

前へ 1 2 3 4 5 6 7

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX