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レコード再生の未知の世界を検証する

「1954年以降はRIAAカーブ」は本当か? ― 「記録」と「聴感」から探るEQカーブの真意

2018/03/02 菅沼洋介(ENZO j-Fi LLC.)
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いかがだっただろうか。今回、検証に使ったシステムは現代ハイエンドの象徴ともいえる機器やケーブル、アクセサリーを使用しており、帯域バランスのフラットさにのみならず、位相特性も極めて優秀だ。何もない空間から音が発生するのではなく、楽器により空気が振動し音が伝わるという一連の発音体から音が生み出されることが、良い録音だと手に取るように分かる。それだけに、EQカーブが正しくないと位相特性が乱れ、空気感が散逸し、あたかも宇宙空間で音が出ているかの如く現実感が薄れる。

音楽録音というのは、音楽だけではなく当時の人の営み、文化をも残す素晴らしい行為であり、特にオリジナル盤にはそれらが鮮度高く刻まれている。せっかく再生するのであれば、人の存在をつかみ取れるようにしたいものだ。

■正解がないEQカーブ、だからこそ検証する価値がある(編集部)

今回は、ENZO j-Fi LLC.の菅沼氏が、実際の聴感も踏まえながら各レーベルのEQカーブを検証したその結果をレポートいただいた。これまでは何も気にされることなく、RIAAカーブが常識とされていた盤でも、今回の検証では実に興味深い結果となっている。

編集部で調べた限り、世界を見渡してみても今回の検証のような実盤を持ってしてさまざまなEQカーブを試した例はなく、それゆえに本レポートは極めて貴重な資料となりそうだ。

M2TECH「Joplin MkII」(写真中、¥220,000/税別)

M2TECH「Evo PhonoDAC Two」(¥180,000/税別)
 
検証に使ったフォノイコライザーは一般的ではない特注品であるものの、本項で登場するEQカーブはM2TECH「Joplin MkII」と「Evo PhonoDAC Two」などで再現が可能だ。この両機の特徴は、ヘッドアンプで昇圧した後、一度AD変換にてデジタル処理し、デジタル領域にて多数のEQカーブを適用すること。かつてEQカーブの設定に用いられたトーンコントロールによる調整の場合、マニュアルかつその自由度が高すぎるため、位相特性も含めて正確なカーブを探し出すのは難しい。M2TECHの場合は、各EQカーブをプリセットとして用意し、各レーベル独自のEQカーブを呼び出せるため、簡単にオリジナル盤の真価を味わうことができるのも魅力である。

今回の菅沼氏の検証レポートから考えるに、現代の高忠実システムにおいてEQカーブの違いは、単に帯域バランスの違いにとどまらないようだ。実際、EQカーブをかけると周波数特性と共に位相特性も変化する。位相管理に着目した機器だと、この位相特性の変化が音に現れるといっていいだろう。



ピーター・バラカン氏がレコードのEQカーブを検証するイベント
「BARAKAN EVENING VOL.13  カーブにご注意! -MIND THE CURVE!!-」
2018年3月7日(水)に開催!



「音楽の伝道師」として、数々のメディアで活躍するピーター・バラカン氏。そんな同氏が東京・代官山の「晴れたら空に豆まいて」で開催している「BARAKAN EVENING」の次なるテーマはなんとEQカーブ! 使用されるのは、さまざまなEQカーブに対応したM2TECHの製品をはじめとしたTOP WING Cybersound Group取り扱いの製品達。驚く発見も多いイコライザーカーブの世界をバラカン氏と共にぜひ体感して欲しい。
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