ガジェット 公開日 2026/05/15 16:39

なぜJackeryのポタ電は“リコールゼロ”を維持できるのか?深センのラボ&工場で見た品質追求の裏側

信頼性を高める先端ラボ「Jackery 実験室」に潜入!
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編集部:平山洸太
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モバイルバッテリーをはじめとした発火事故の多発をうけ、いまバッテリーの安全性に大きな注目があつまっている。そんな中、ポータブル電源でトップクラスの世界シェアを誇るJackery(ジャクリ)が、同社製品の安全性を高めるための実験施設や、自社工場における製造体制をメディア向けに公開した。

Jackeryはポータブル電源のリーディングブランドとして、日本では進出してから7年連続でナンバーワンの販売台数を維持するメーカーだ。日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、韓国、そして中国など50の国と地域で製品をラインナップ。中国では「电小二」(Dianxiaoer)ブランドとして展開する。

会社(華宝新能源)としての設立は2011年で、2012年にはアメリカ・カリフォルニアでJackeryブランドが誕生。2016年に初のポータブル電源、2018年に初のソーラーパネルを投入し、これまでに数多くの製品を送り出してきた。また、全世界で23の公式サイト、40のECショップを運営し、1万以上のオフライン店舗で取り扱われている。

そんなJackeryが本社を構えるのは、 “中国のシリコンバレー” とも呼ばれる、中国の深セン市だ。後述する実験室や工場といった関連施設も同じ市内にある。工場では、年間180万台のポータブル電源、年間100万台のソーラーパネルを自社で製造している。

■世界中の事業部を揃えた本社オフィス

Jackeryの本社はオフィスビルの3フロアを占め、ここで全世界のマーケティングやプロジェクト、公式サイトやECサイト(Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングなど)の運営・管理、チャットサポート等を担っている。ちなみに、日本法人のJackery Japan(東京・中央区晴海)は、オフライン営業、現地マーケティング、電話サポートや修理を担当しているという。

さて、オフィスの中には、日本、アメリカ、ヨーロッパ(主にドイツ、イギリス、イタリア)、韓国、中国といった、国ごとの事業部が設けられている。日本は米国に次ぐ2位の売上規模で、Jackeryとして重要な市場だそうだ。日本は台風や地震といった災害大国のため、アウトドアだけでなく防災のニーズが強いという。またホルムズ海峡の問題もあり、直近ではユーザーからの問い合わせも増えているとのこと。

なお、ニーズは国ごとに違うという。ヨーロッパでは電力価格上昇や環境意識の高まりから、エネルギーの自給自足や節電への関心が高く、ベランダ向け太陽光蓄電システム(日本未展開)も人気だ。アメリカはハリケーンや山火事などの災害があり、アウトドアの需要もあるが、日本と違い大型のモデルが売れるという。一方で中国は災害が少ないため、 “生活を豊かにする” 方向で訴求をしているそうだ。

直近では、瓦型のソーラーパネル「SolarSaga Barrel Tile」による蓄電システムなど、新しい取り組みにも積極的だ。さらに当面の投入予定はないというが、太陽光を追従するロボット「Jackery Solar Mars Bot」、小型の風力発電システム「Jackery Air-W」など、グリーンエネルギーを活用するための研究開発も行っている。

■信頼性を高める先端ラボ「Jackery 自社実験室」

Jackeryは当初より、「すべての家庭で自家発電できること」を目標に、持続可能なエネルギーが身近になる世界を目指してきた。次々と新たな製品にチャレンジしているが、その根底にあるのが「安心安全の製品づくり」へのこだわり。世界トップクラスのポータブル電源の販売量を誇りながら、いまだに同社製品が原因のリコール事故は1件もないそうだ。

同社はオフィスと工場のほかに、安全性をテストするための施設「Jackery 自社実験室」を2022年に設立。ポータブル電源メーカーで唯一のラボとして、全ラインナップのポータブル電源のテスト(553項目)、ソーラーパネルのテスト(87項目)を実施している。こちらも深セン市内にあり、広さは3,000平米となる。

実験室では、業界基準よりも厳しい品質管理基準(2024年に公表)を満たしているかを検査する。発売前の製品が全てテストされるのは当然だが、発売済みのモデルについてもロットごとに製造後に抜き出し、出荷前のテストを行うという。

取材では、8項目のテストを見学することができた。まず防水試験では、専用の設備でポータブル電源(防水モデル)に水噴射し、あらゆる方向から問題ないかチェックする。今回はヨーロッパ向けの防水モデルが置かれており、約3分間の噴射でIPX5の基準を満たすか確かめていた。

注目したいのが、後に見学した「高温高圧下加速試験」だ。エイジング試験とも呼ばれているもので、温度と圧力をかけることで意図的に経年劣化を起こせるという。設定は劣化させたい年数から逆算するそうで、見学時は温度121°C、湿度100%で96時間という数値になっていた。

エイジング試験を経たポータブル電源も、さまざまな条件で過酷な試験をすることで、「長年使った後でも安全に使えるかどうか」を厳重に確認している。たとえば、低気圧試験(見学時は高度3,000m相当の70kPa)、高低温試験(見学時は45°Cから-20°C)といったテストを実施する。

そのほか、各ポートの抜き差し耐久試験、大容量モデルのキャスター耐久試験も見学できた。またソーラーパネルにおいては、繰り返し折りたたむことで耐久性を検証する屈曲試験、照明(人工太陽光)を当てて充電効率を測定する太陽光シミュレーションも行っている。見学はできなかったが、本体の落下テストや鉄球を落とすための器具も、実験室内には置かれていた。

なお、バッテリーセルへの釘刺し試験といった危険なものについては、周辺に住民がいない場所で行う必要があり、この実験室ではテストできないとのこと。外部委託にはなるものの、こちらも業界より厳しい基準を設けることで安全を確かめているそうだ。

■電源もソーラーパネルも自社製造

安全への取り組みは、自社工場においても同様だ。Jackeryではポータブル電源において、2つの建物に合計4つの製造ラインを保有しており、400〜500人が3シフトで24時間製品を作り続けている。委託せずに自社で作ることで、隅々まで管理して品質を保ちたいという狙いもあるのだろう。

工場では、全ての製品がスタッフによって通電、動作確認されていたことが印象的だった。たとえば電源には62種類の保護機能を搭載しているが、こういった機能が正常動作するかも全数で確かめている。なお、電源の機能チェックは一部を実験室で行ったり、外部の専門機構に委託したりする場合もあるという。

また作り終わったポータブル電源は、パッケージに入れられる前に、3回の充放電テストも全て行われる。電源の初期電量(通常は30%)→100%→0%→100%と充放電を繰り返した後、運送ルールのために30%の残量に調整され、外観チェックとシール貼付、箱詰めを経て出荷に向かう。

この工場が作られたのは実験室と同じく2022年。敷地面積は27,500平米となり、1か月あたり14万台のポータブル電源を製造している。ちなみにこの建物には3つの製造ラインがあり、加えて以前から使っている製造ラインが1つ別の建物に残っているという。

なお工場では、メイン基板(PCBA)の表面実装の自社開発・製造から行っている。今回は見学できなかったが、全自動での精密なバッテリーセルの選別も工場内で実施。バッテリーパックの組み立てから筐体への組み込みまでを完結させることで信頼性を高めている。

ソーラーパネルの工場も自社で保有しており、こちらはポータブル電源の工場とは少し離れるものの、同様に深セン市内に構えている。敷地面積は8,000平米で、2023年に稼働開始した施設だ。年間100万台の生産能力を有しており、深圳でもトップクラスの自動化率を誇っているそうだ。

工場内は撮影禁止だったが、ソーラーパネルの原材料となるセルをレーザーでカットして並べ、ノリのシートで挟んで加熱・圧縮することで、ソーラーパネルにする工程が見学できた。ちなみに工程におけるワンセットは7.5Wで、たとえばこれを15セット並べると100Wのソーラーパネルにできる。ポータブル電源と同様、工程ごとにしっかりと動作確認していたのも印象的だった。

■安全性への投資を惜しまないことで生まれる品質

今回の公開を通して、Jackeryがポータブル電源やソーラーパネルの安全性や信頼性を高めるため、繰り返しの確認を徹底するという姿勢を実感した。安全に使うための高い基準を作成・公開し、これを確実に満たすために投資している様子を見ることができた。

特に実験室はポータブル電源とソーラーパネル合わせて640項目の品質テストを行うため、多くの機材が並べられている。開発中だけではなく、上述した通り、製造した製品についても継続して多岐にわたる検証を行っていることが印象的だった。

当たり前だが、どんなに設計段階で安全性を追求していても、製造中に不具合が起きてしまえば危険になってしまう。ポータブル電源は事故が起きてしまえば、その影響が大きくなる可能性がある製品だ。それをJackeryは自社で徹底してコントロールすることで、大きな投資やコストが必要ではあるが、信頼性を保つために努力しているのだと思う。

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