ガジェット 公開日 2025/04/11 12:02

Google“廉価スマホ”「Pixel 9a」レビュー。前モデルPixel 8aからの進化は?

よりバランスが良くなったミドルモデル
Gadget Gate
編集部:平山洸太
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Googleから、スマートフォンの廉価モデル「Pixel 9a」が4月16日に発売される。価格は128GBモデルで79,900円(以下、税込表記)。スマートフォンが全体的に値上がりしつつある中、価格を7万円台に抑えていることが特徴だ。なお、256GBが日本初展開となり、こちらは94,900円で購入できる。

長らく「ハイコスパ」と言われてきたPixel Aシリーズだが、62,700円(Pixel 7a)→72,600円(Pixel 8a)→79,900円(Pixel 9a)と、着実に値段が上がってきている。はたして、Pixel 8aから価格に見合うほどの進化を遂げられたのか。発売前にGoogleから実機を借りることができたので、比較しながらレビューしてみたい。

■画面が大型化され明るく、デザインはPixel 9世代と同様に

Pixel 9aは、上位モデル同等のAI機能を安価に体験できることを目的にした、Pixel Aシリーズの最新モデルだ。プロセッサーには、上位モデル「Pixel 9」(128,900円から)や「Pixel 9 Pro」(159,900円から)と同様に、最新のTensor G4チップを搭載。これによって、同社AIアシスタントGeminiと会話できる「Gemini Live」や、「編集マジック」をはじめとした画像編集機能、オフラインで文字起こしが使える「レコーダー」アプリなど、様々なAI機能が利用できる。

まず外観からPixel 8aと9aを比較してみると、Pixel 9aのほうがやや大型化していることがわかる。スペック的にはPixel 9aのほうが、高さが2.6mm、幅が0.6mm大きくなっている。厚さは8.9mmで変わっていない。

なぜ筐体が大きくなったかというと、画面サイズが6.1インチから6.3インチに大型化したことが原因だろう。表示される面積が大きくなったので、ウェブブラウジングや地図アプリでもコンテンツが見やすい。横(短辺側)の表示幅が広がったので、フルスクリーンでYouTubeを再生した際にも、より大きく表示できるようになった。

個人的に良いと感じたのは、4辺のベゼル(額縁)の幅がすべて均一になったことだ。Pixel 8aは下側だけ少し厚みあるデザインだった。一方、Pixel 8aのほうが上と左右のベゼル幅は狭いので、どちらが良いかは好みが分かれそうだ。ちなみに、上位モデルのPixel 9/9 Proでは、4辺均一かつ薄いベゼルを実現している。

またディスプレイについては、Pixel 9aは最大輝度1,800 ニト(HDR)/2,700ニト(ピーク輝度)の「Actuaディスプレイ」を採用。Pixel 8aから35%明るくなったとしている。最大輝度に設定して比べてみたが、少しだけPixel 9aのほうが明るいことがわかる。最大120Hzのスムーズディスプレイも引き続き搭載。デフォルトではオフになっているので、滑らかなスクロールを体験するには、オンにしてあげる必要がある。

ほかのPixel 9シリーズと同様ではあるが、Pixel 9aはアルミニウムの側面フレームがフラットな形状になった。Pixel 8aは丸みがあったので、持ちやすさとしては前モデルのほうが好みのユーザーも多いかもしれない。個人的にはPixel 9aのデザインのほうがシャープで好みだが、ここも人それぞれだろう。

背面パネルの素材は樹脂となっており、ガラスを採用する上位モデルと比べると、触った際のチープ感は否めないが、個人的にはそこまで気にならなかった(Pixel 8aも同様)。ディスプレイ内蔵の指紋認証は、Pixel 9/9 Proと同様の超音波式でなく、暗い場所でロック解除した際に眩しい光学式を継続。ほか、防塵・防水性能はIP67からIP68に強化された。

■“薄くなった”カメラ部分

大きく変わったといえるのが、カメラ部分が飛び出ていない「フラットデザイン」を採用しているという点だ。スマートフォンのカメラが高性能化していくなか、カメラ部分も大型化していくというのが長らくトレンドだった。最近ではエントリーからミドルモデルを中心に、カメラの飛び出しを抑えたモデルも増えてきている。

Pixelスマートフォンは、Pixel 6シリーズから、カメラ部分を横に配置した「カメラバー」デザインを採用してきた。前モデルのPixel 8aでもカメラバーを採用していたが、Pixel 9aはバー形状ではなく、“水滴”からインスピレーションを得たデザインを新たに採用した。

Pixel 9aはフラットデザインとしているものの、実はカメラの部分が少しだけ飛び出ている。ほとんど出ていないレベルではあるが、完全にフラットというわけではない。とはいえ、机に置いてスワイプや操作をしても動かず安定するので、あまり問題はないかもしれない(ちなみに、左上の角を押したときだけカタカタする)。動かないという意味では、カメラバーのPixel 8aも机の上で操作しやすかったりする。

もし気になる方は、ケースを装着するという選択肢もある。純正ケースを装着してみたところ、ケースのほうがカメラの出っ張りよりも厚みがあるため、机においた際に完全にフラットにできる。なお、ケース装着でフラットになるのはPixel 8aも同様ではある。

カメラは広角と超広角の2眼構成を継承。広角のメインカメラは4800万画素(F1.7/画角82度)、超広角カメラは1300万画素(F2.2/画角120度)となっている。

メインカメラについては、6400万画素から4800万画素に下がった一方で、レンズの絞り値はF1.89からF1.7に明るくなっている。超広角はPixel 8aと全く同じスペックだが、新たに接写できる「マクロフォーカス」に対応。自撮り用のインカメラは1300万画素となる。

実際に静止画を撮影して比べてみたが、一見した際の色味や解像感は、Pixel 8a、Pixel 9a、Pixel 9 Proのいずれも変わらず、輝度差があっても白飛び/黒潰れしていない画像が得られる。レンズやセンサーのスペックは3モデルで異なるが、AIを用いたコンピューテーショナルフォトグラフィをGoogleが訴求しているだけあって、ソフトウェアが写真に与える影響が大きいのだろう。

拡大して等倍で比較しても、昼間でも夜景でも、風景写真における違いはごくわずかだった。違いが現れたのがデジタルズームをしたときの解像性能。もともとの画素数が高いためか、2倍から最大の8倍にいたるまで、Pixel 8aのほうがPixel 9aよりも細部まで解像できていた。

検証に使った機材では、Pixel 9シリーズ(9aと9 Pro)のほうが、Pixel 8aよりもシャープネスが強めにかかっている傾向だった。特にデジタルズームの際、Pixel 8aの方がぼやけているのに文字が読める場所でも、Pixel 9aはギザギザとしたエッジ描写で文字も識別できなかったりする。もっとも、これは細部まで拡大した場合の違いで、普通に楽しむ分には気にならないだろう。

夜景についてはセンサーサイズが大きい分、Pixel 9 Proの方が、ほかのAシリーズ2台よりもノイズが少なかった。ただしAIを使った「夜景モード」で撮ることで、その差もグッと小さくなる。普通に楽しむ分にはPixel 9aでも十分だろう。ただし望遠を使いたいなら、光学ズームの望遠カメラをPixel 9 Proのほうが圧倒的に有利だ。

また上述した通り、Pixel 9aは超広角カメラがマクロフォーカスに対応したため、花などに寄って大きく撮影できるようになった。小さいものを頻繁に撮りたい方は、Pixel 8aから乗り換える理由にもなるだろう。

■バッテリーもパフォーマンスも強化された

Pixel 9aのバッテリーについて、Googleは「Pixelで最も良いバッテリー」と説明している。バッテリー容量は、Pixel 8aの4492mAhから5100mAhに大型化。より大画面の上位モデル「Pixel 9 Pro XL」の5060mAhよりも大容量のバッテリーを搭載している。

今回は長時間の検証は行えなかったが、Pixel 9aとPixel 8aで同じYouTube動画をフルスクリーンで再生し、3時間ほど連続再生して比べてみた。100%の状態から開始して検証したが、Pixel 9aでは93%、Pixel 8aでは80%までバッテリーを消費した。Pixel 8aのバッテリーが多少劣化している可能性もあるが、かなりの差となった(ディスプレイの明るさは50%程度、目視で同じ明るさに見えるように微調整)。

充電方法については、USB-C端子からの急速充電と、Qiによるワイヤレス充電が可能。上位のPixel 9 Pro/9 Proとは違い、急速ワイヤレス充電、およびワイヤレスでのバッテリーシェアには対応していないので気をつけたい。

パフォーマンスについても比較してみたが、ブラウザ(Google Chrome)を立ち上げるスピード、開いたページが表示されるスピードとも、Pixel 9aの方が高速だ。ちなみに、Antutuベンチマーク(v10.4.8)で計測したところ、Pixel 9aでは1193934点、Pixel 8aでは1070589点となった。

なお、Pixel 9 Proでも同様のベンチマークを行ってみたが、こちらは1294259点と、さらに高い結果となっていた。Googleの説明では、Pixel 9aも9 Proは、クロック周波数も含めて同じTensor G4チップを搭載しているとのこと。Antutuベンチマークは数値がブレがちなので、あくまで参考程度に留めていおいてほしい。なお搭載チップは同じだが、メモリ容量はPixel 9aが8GB、9が12GB、9 Proが16GBと差別化されている。

■Pixel 9aは、より使いやすくなった高バランスのスマートフォン

最新チップを搭載して性能を順当に進化させつつ、より見やすくなったディスプレイ、より長時間持つようになったバッテリー、画質を維持しつつ出っ張りを抑えたカメラなど、全体的に「より使いやすい」スマートフォンに進化したと感じた。もちろんFeliCaにも対応しているので、おサイフケータイも利用できる。

Pixel 8aからの進化点としては細かいかもしれないが、こういった使いやすさは、長く使っていくうえでは重要なポイント。Googleも長く使えるように耐久性を高めたと説明しているし、7年間の各種アップデート(Pixel Dropといったソフトウェア、OS、セキュリティ)も保証されている。バッテリーの劣化が気になる方は、Pixel 9/9 Proと同様に、80%の充電上限を設定して劣化を抑えることもできる(Pixel 8aは非対応)。

競合のアップルも廉価モデル「iPhone 16e」を投入しており、通常の「iPhone 16」や「iPhone 16 Plus」と同様にA18チップを搭載するなど、Pixel 9aとiPhone 16eはコンセプト的には近しい。ただ、iPhone 16eは99,800円(税込)からと、Pixel 9aよりも2万円ほど高額だ。Pixel 9はiPhone 16と近い値段まで上げられているが、その中でAシリーズの値上げ幅を抑えてくれたことに感謝したい。

スマートフォンのスペックも成熟しつつあり、ゲーム性能を求めたり、最高のカメラ性能を求めないユーザーであれば、いまやミドルモデルでも必要十分になりつつある。そんな状況のなか、8万円以下で最新のAI機能を試すことができ、さらに十分なカメラやディスプレイの性能をもったPixel 9a。前モデルから使いやすさも向上し、よりバランスの良いモデルとして注目されそうだ。

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