公開日 2026/04/08 13:24

バーでの試聴会で広げるアナログオーディオとの出会い。KOIKE Linesと中電のユニークな試み

イベントレポート&インタビュー
季刊・アナログ編集部:塚田真由子
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アナログオーディオの面白さをより多くの方に知ってもらうべく、シェルリード線ブランドのKOIKE Lines(コイケライン)とカートリッジブランドの中電がタッグを組んで、東京都内や神奈川県内のリスニングバーでイベントを定期的に開催している。

さまざまなブランドが一堂に会するオーディオイベントもある中、なぜ両ブランドはバーでのイベントを積極的に行っているのだろうか?

そこで、3月半ばに開催されたイベントにお邪魔するとともに、KOIKE Linesの小池義之氏と中電の代表・齋藤力也氏に、イベント開催の意図を伺った。

横浜市関内にあるバー「Listening Bar Antibody」で開催されたオーディオイベント「シリーズ『溝を読む』vol.2 MMカートリッジ編」の様子。写真はKOIKE Linesの代表・小池義之氏

若い方が集まるバーでのイベントを積極的に開催

イベントが開催されたのは神奈川県横浜市関内にあるバー、Listening Bar Antibody。店主の島 直希氏がKOIKE Linesのリード線を愛用していたことがきっかけで、小池氏と齋藤氏は2ヶ月に一度、定期的にオーディオイベントを開催するようになったという。

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イベントの舞台となったのは、Listening Bar Antibody。スピーカーは店主の島氏の自作によるもので、平面バッフル形式を採用している
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店内ではKOIKE LinesとBar Antibodyとのコラボによるリード線「KLA-25210 Quartetto(カルテット)_A」を販売している。導体は102 SSCで、四つ編み構造を採用する

訪れた日は両者コラボイベントの9回目にあたり、「シリーズ『溝を読む』vol.2 MMカートリッジ編」と題したイベントが開催されていた。

イベントではまず、MM型カートリッジが発電する仕組みについて小池氏がわかりやすく解説するとともに、MM型の代名詞として知られるシュア社初のMM型カートリッジ「M3D」(1958年)や、米国エンパイアの1970年代のロングセラーモデル「4000D/T」(1974年頃)、グレースがNHK放送技術研究所と共同開発した「F-8」シリーズ(1960〜70年代)、さらにMM型の派生形としてオーディオテクニカ VM型「AT-15Ea」(1977年頃)をマイルス・デイヴィス・クインテット『クッキン』、ジョエル・ロス『Who Are You?』などで再生。1950〜70年代のMM型の名機を比較試聴できる貴重な機会となった。

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シュア「M3D」
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グレース「F-8」シリーズ

小池氏はフォノイコライザーがアナログ再生に必要な理由や、針の交換方法、適正針圧、負荷抵抗と負荷容量など、MMカートリッジの基礎知識についてわかりやすく解説。

そのなかでも特に興味深かったのは、針の種類の違いによる試聴である。丸針や楕円針、ラインコンタクト針、シバタ針、マイクロリッジ針など先端形状の違いや特色について解説した後、いよいよ中電のカートリッジのお出ましとなる。

接合ダイヤ丸針を採用した「MG-3605」や、接合ダイヤ楕円針の「MG-3675」、無垢ダイヤラインコンタクト針の「MG-36BPH」、サファイヤ針の「MG-2895G」(現在は生産完了)などを試聴。いずれもリード線にはKOIKE Linesのハイエンドモデル「Quartetto High-end grade」が使用されていた。

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CHUDEN「MG-3605」。接合ダイヤ丸針を採用
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CHUDENのモノラルカートリッジ「MG-360MN1」

 次に、KOIKE Linesとのコラボによって開発されたモノラル用シェルリード線「KLM-36MONO」を直列接続したモノラルカートリッジ「MG-36MN1」を試聴。

残念ながらモノラル盤ではなかったものの、力強くパンチのある音に客席からは感嘆の声が上がっていた。さらに、中電が現在開発中であるという無垢丸針モデルを試聴できるというサプライズも。

 小池氏のわかりやすい解説もあってか、約2時間のイベントは、小池氏や齋藤氏への質問が相次ぎ、盛況のうちに終了した。

小池氏の解説に熱心に耳を傾ける参加者の皆さん

音楽好きの方にオーディオの世界を知ってほしい

 両氏への質問が途切れた頃を見計らい、まず、KOIKE Linesの小池義之氏にイベント開催の意図や想いを伺った。

KOIKE Linesの代表・小池義之氏。「音質を超え、高い音楽表現力の世界へ」をモットーに、リード線をハンドメイドで製作している。希望に応じてカスタムメイドのリード線の製作にも応じている

―― 小池さんはBar Antibodyをはじめ、東京・八王子の「SHeLTeR」、東京・大塚の「地底-chitei-」などのバーでイベントを開催していますが、イベントを開催するようになったきっかけをお聞かせください。

小池 SHeLTeRの店主・野蔦さんも、地底の店主・enoさんも、Antibodyの店主・島さんも、KOIKE Linesのリード線を使ってくださっているお客様だったんです。

私は元々、オリジナルのリード線をネットオークションなどで販売していたのですが、約10年前に高円寺にあるレコード店「EAD RECORD」で販売するようにってから、いまのブランド名「KOIKE Lines」を名乗るようになりました。

その頃、月に一度くらい、EAD RECORDの店内で試聴会を開催していたんです。それがきっかけでとんとん拍子にバーなどのお店でイベントを開催するようになりました。

Antibodyでは島さんがお店を開店してから、定期的に試聴会やオーディオイベントを開催するようになりました

実は京都や大阪でもイベントを何回も開催しています。京都ではKOIKE Linesユーザーの企画でカフェ「MOLE(モール)」(最寄りは京都市役所前)でイベントを開催したのがはじまりです。

その後、紹介で「Music Bar 1g」(昨年12月末で一時閉店、新店舗開店準備中)、カフェ「WESTEND COFFEE ROASTERS」(最寄りは西京極駅)などで開催しました。さらに、紹介が紹介を呼び、金沢のミュージックバーでも6月にイベントを開催することが決まりました。

 ―― そのようにして草の根的にイベント開催の輪が広がっていくのが素晴らしいですね。大規模なオーディオイベントもあるなか、なぜ小池さんはバーでのイベントに積極的に参加しているのでしょうか?

小池 試聴室でスピーカーやアンプに対峙して聴くイベントもよいですが、コーヒーやお酒を飲みながらいい音で音楽を楽しむような気軽なイベントにしたかったんです。

――  イベントに集まる若い方に向けてどのようなことを発信していきたいですか?

小池 このようなバーに来る方のなかにはオーディオを知らない方もいらっしゃいます。若いDJの方もいますが、そういう方たちにオーディオという別の世界があるということを知ってもらいたいですね。

音楽が好きな方にとって、いい音で聴きたいというのは本望だと思うんです。だから、音楽好きな人たちがいい音で聴くことができるようにサポートしていきたい。そのために引き続き必要なオーディオの知識や情報を発信していきたいですね。

―― 今後、開催してみたいテーマはありますか?

小池 ヘッドシェルのネジの違いによって音がどう変わるのかというイベントを開催してみたいですね。マニアックかな(笑)。

 続いて、中電の齋藤力也氏にもお話を伺った。

中電の代表・齋藤力也氏。OEM供給中心の事業形態から2018年に自社ブランドを展開。力強い音作りと低価格化を実現し、人気を集める

―― そもそも小池さんとバーでのイベントに参加するようになったきっかけは?

齋藤 KOIKE Linesの小池さんとは6年くらい前からの付き合いで、弊社のMG-36シリーズのリード線を作っていただいたりもしていますが、イベントに一緒に参加するようになったのは3、4年くらい前からですね。小池さんにイベントの案内をいただいたら、できる限り参加しています。

―― バーでのイベントに積極的に参加する理由をお聞かせください。

齋藤 大規模なオーディオイベントには参加しないような若い方に、弊社のカートリッジを知ってもらいたいからなんです。

それに、リスニングバーには若いDJの方が多く集まるのも理由のひとつですね。

弊社が設立されたのは1996年で、今年で創業30周年になります。設立当初はレコード業界が冷え切っていた頃だったので、売上の半分以上はDJ向けモデルが占めていたんです。我々が生き残って来られたのもDJの方々が支えてくれたからと言っても過言ではありません。

小池さんにたまたま声をかけていただき、バーでのイベントに参加していますが、こうして参加しているのはDJの皆さんへの恩返しの気持ちもありますね。

――バーのイベントで若い方と接してみて、印象に残った出来事はありましたか?

齋藤 リスニングバーに集まる方を見ていると、音に対して非常に真剣に向き合っている方が多いなと思いますね。

バーの店主の方も音楽を気持ちよく聴く空間を提供したいという想いが強いから、音質や再生するレコードにも妥協がない。楽曲に合わせて組み合わせるカートリッジを工夫しているのを見ると、カートリッジブランドとしては冥利に尽きますね。

――今後、開催してみたいイベントはありますか?

齋藤 昭和歌謡を再生するレコードコンサートをたまに開催するんですが、お客様のなかには、レコードを見たことがない、レコードを再生したことがないという中学生、高校生の方もいるんです。

今後はそういう方がレコードや音楽と触れ合う楽しさを知ってもらうイベントを開催したいですね。

若い方にとっては自分でレコードに針を下ろすという体験が何よりも楽しいと思うんです。何なら、レコードを一緒に買うところからイベントを企画してみたいです(笑)。

EAD RECORDの試聴会からはじまり、東京、神奈川、京都、石川へと徐々に広がっていったKOIKE Linesと中電の取り組み。店のカウンターをハブ(結節点)として育った人とオーディオのつながりはじわじわと、しかし着実に広がっている。小さなオーディオイベントの大きな可能性を垣間見た。

なお、Lietening Bar Antibodyでは、KOIKE Linesナビゲートによるリード線試聴会を4月11日(土)に開催する予定だ。イベントの詳細は以下の通り。ご興味のある方は足を運んでみてはいかがだろうか。

■『DJ Session feat. KOIKE Lines』

【日時】2026年4月11日(土)17:00-19:00
【料金】Charge 500円+1ドリンク
【会場】Listening Bar Antibody
神奈川県横浜市中区相生町2丁目34-2梅原ビル3F

【概要】
「たった数センチのパーツで、音はどこまで変わるのか?」その違いを、DJプレイの中で体感できるイベント。今回は4月に発売するKOIKE Linesの新作リード線2種を使用。ジャズを中心としたレコードで音の変化と魅力をじっくりと味わうことができるという。

【試聴リード線】
・The British Sound
OFC線にUK製銅入りハンダを使用して製作したリード線。英国風の小洒落た質の良いサウンドを奏でる。

・Rilassati(=イタリア語で「リラックス」)
OFC単線にドイツ製銀入りハンダを使用して製作したリード線。ワイドレンジで単線とは思えない空気感と見通しのよさが特徴。

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