トップページへ戻る

レビュー

HOME > レビュー > レビュー記事一覧

公開日 2016/12/30 14:50
開発者へのインタビューも収録

Bricasti Design「M1 SE」を聴く ー 現代のリファレンスたる音質を備えたDAC

岩井 喬

前のページ 1 2 3 4 5 次のページ

オーディオ評論家・岩井喬氏が2016年に試聴した数多くのオーディオ製品の中でも「そのサウンドには衝撃を受けた」と語るBricasti DesignのUSB-DAC「M1 Special Edition」。本機の開発者であるブライアン・ゾルナー氏が来日した際に伺ったブランドポリシーや本機の開発エピソード、そしてそのサウンドを岩井氏がレポートしていく。

Bricasti Designの創業者の1人にして製品開発を手がけるブライアン・ゾルナー氏。手にしているのが「M1 SE」だ。

Bricasti DesignのハイエンドUSB-DAC「M1 SE」開発者に話を聞く

Bricasti Design(ブリキャスティ・デザイン)は2004年、アメリカで創業した新進ブランドである。まだ国内のコンシューマー市場ではそれほど名が知られていないが、プロオーディオの世界では優れたリヴァーブ・マシン(残響成分を付加させるエフェクター)を手がけていることで有名だ。

2016年、同社のハイエンドUSB-DAC「M1 Special Edition」(以下、「M1 SE」)が国内市場にリリースされた。このタイミングに合わせて、創業者の一人であるブライアン・ゾルナー氏が来日。同氏にインタビューを行い、製品開発の背景やこだわり、製品に込めた思いを伺うことができた。さらに気になるM1 SEのサウンドについてもレビューをお届けしたい。

「M1 Special Edition」¥1,389,000(税抜)

業務用デジタル・リヴァーブで圧倒的評価を得るBricasti Design

まず同社誕生の背景についても軽く紹介しておこう。創業者はいずれも、デジタルリヴァーブ・マシンで世界的なシェアを誇るレキシコンの出身だ。レキシコンのこのジャンルにおける存在感は圧倒的で、90年代における代表的なモデル「480L」は国内録音スタジオの9割以上が導入。96kHz/24bit対応にグレードアップした「960L」は、ハードウェアベースの最上位デジタル・リヴァーブとして世界的に評価されている。

ハーマン・グループで海外バイス・プレジデントを務めたブライアン氏と、ソフトエンジニアとして辣腕をふるっていたケイシー・ダウダル氏が、ハーマン・グループ傘下となったレキシコンでの製品開発に限界を感じ、理想の製品作りを目指して独立を決意。かくしてBricasti Designが生まれたのである。

2006年には最初のプロダクトであるステレオ・リヴァーブ「M7」を発表。筆者も同年のInterBEEで参考出展されたM7の音を聴き、かつてのレキシコンの銘機をはるかに超えるシルキーで自然な音色の素晴らしさに驚いた(InterBEE 2006でのブース展示には、M7とレキシコン480L、960Lが用意され、同一音源の聴き較べを実施。多くのエンジニアがM7のサウンドの良さを実感していたようだった)。

岩井氏が所蔵するレキシコンのデジタルリヴァーブのカタログ。こちらの「960L」が紹介されている

このM7は世界各国で高く評価され、ソフトウェアベースで浸透している昨今のリヴァーブ市場の中で、ハードウェア型のハイエンド機として確固たる地位を築いたのである。M7が注目されたのは音質の良さだけでなく、価格面でも前述した比較対象のハイエンド機に比べ1/4〜1/5ほどのプライスで入手できることにあった(960Lはシステム総額約250万円)。

安くともリヴァーブとしての基本性能の高さはそれ以上であり、強力なアナログデバイセズ製“Blackfin”デュアルコアDSP(600MHz)×7基によってレキシコン製品をはるかにしのぐリアルタイム処理(およそ100〜1000倍もの差)を可能とし、緻密な計算から繰り出される自然な残響を実現したのだ。

現在リヴァーブエフェクトの大半はプラグインなどのソフトウェアベースとなったが、他にも様々な処理を必要とするPC上のCPUでの処理にも限界があり、その点を補えるのが高速DSPである。利便性ではソフトウェアに歩があるものの、ハードウェアベースであるからこその安定度、緻密で深みのあるサウンドを実現しており、発売から10年近く経つ現在でもM7がハードウェア・リヴァーブの頂点に立つ理由がそこにあるのだ。

レキシコンやマドリガルの血脈も受け継ぐ

前のページ 1 2 3 4 5 次のページ

関連リンク

新着クローズアップ

クローズアップ

アクセスランキング RANKING
1 女子プロゴルフ「パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント」、4/26からの放送・配信予定
2 売価アップも品薄も問題にしないアキュフェーズの強さに感服 <販売店の声・売れ筋ランキング3月>
3 ソナスの新製品スピーカー「Lumina II Amator」が鋭い立ち上がり <ハイファイオーディオ売れ筋ランキング3月>
4 Prime Video、『ゴジラ-1.0』ほかゴジラ邦画実写全30作品や、Prime独占EP配信の『岸辺露伴は動かない』第4期など5月配信
5 ゲオ、43V型で4万円を切る狭額縁デザインの4K液晶テレビ
6 Anker、最大半額セールを楽天で実施中。完全ワイヤレスイヤホンは割引でさらにポイントアップも
7 『鬼滅テレビ -柱稽古編放送直前SP-』5/4 13時25分から無料配信。公開生放送の観覧受付開始
8 KEF、「LS60 Wireless」など一部スピーカー製品を値下げ。4月25日より
9 スカパー!、スティック型ストリーミング端末「スカパー!+(プラス)ネットスティック」を新開発
10 Netflixで「ご利用世帯の登録」画面が表示された場合の対処法は?
4/26 10:36 更新

WEB