DEVIALETの新たな体験拠点「クオーツ心斎橋店」オープン。店内の音作りに込められたこだわりとは?
編集部:川嶋隆寛フランス・パリ発のオーディオブランドDEVIALET(デビアレ)の新たなオフィシャルストア「DEVIALET クオーツ心斎橋店」が大阪・心斎橋にオープンした。
関西屈指の商業エリアである心斎橋に位置するクオーツ心斎橋は、デザインやライフスタイルに関心の高い来店者との接点を持ちやすい場所でもあり、DEVIALETが掲げる『音と空間の融合』を訴求するうえでも象徴的な拠点となる。オープンを記念し、6月4日から6日にかけて、DEVIALETの世界観を体験できるイベント「DEVIALET STUDIO SHINSAIBASHI, OSAKA」が開催された。
イベントには、DEVIALETのAPAC Regional Directorを務めるMartin KU氏が来日。ブランドの歩みや技術思想、グローバルでの展開、さらに同社が進めるライセンス事業について紹介した。また、会場では室内演奏が行われたり、国内代理店を務めるTHT Japanの代表取締役である高橋和哉氏とインテリア&プロップスタイリスト・窪川勝哉氏によるトークセッションも実施された。
大阪・心斎橋に誕生した、DEVIALETの新たな体験拠点
DEVIALET クオーツ心斎橋店は、製品を展示・販売するスペースに加えて、実際にDEVIALETのサウンドを体験できる試聴室を備えている。
店内の試聴室には、PhantomシリーズをはじめとするDEVIALETのスピーカーやサウンドバーが設置され、音楽再生だけでなく、映像コンテンツを含めたイマーシブな音響体験を確認できる。
壁面や天井には、見た目の美しさと音響面の機能性を両立させるため、ファブリック系の素材が用いられており、空間そのものもDEVIALETのブランド思想を反映している。
Martin KU氏によれば、DEVIALETのオフィシャルストアはパリの本社側でデザインが監修されており、クオーツ心斎橋店もその考え方に基づくものだという。
音のためだけに無機質な部屋をつくるのではなく、デザイン性を保ちながら、必要な吸音や音場づくりを行う。このバランス感覚はまさにDEVIALETというブランドを象徴している。
Martin KU氏が語った、DEVIALETのブランドと技術思想
さて、イベント冒頭では、Martin KU氏がDEVIALETのブランド紹介を行った。DEVIALETは2007年にフランス・パリで創業したオーディオブランド。現在はグローバルで7拠点、約300名規模の体制を持ち、そのうち35%以上が研究開発に従事しているという。
販売拠点は世界で1,700以上に広がり、その約3分の1がアジア地域にある。アジアにはオフィシャルブランドストアも約20店舗を展開しており、今回のクオーツ心斎橋店もその新たな一拠点となる。
KU氏はDEVIALETが「ハイエンドオーディオやプロフェッショナルオーディオに匹敵する音質を、家庭で扱えるコンパクトな製品へ凝縮する」ことを目指してきたブランドだという点を強調していた。創業以来、長年にわたって研究開発を重ね、250件を超える技術特許を保有していることも紹介された。
2010年にはアンプでコンシューマ市場に登場し、2015年には現在のブランドを象徴するスピーカー「Phantom」を投入。その後、イヤホン、ポータブルスピーカー、サウンドバーなど、さまざまなカテゴリーへ展開を広げてきた。さらに2024年には新しいOS/プラットフォームを導入し、同社にとっての『第二章』が始まっていることを説明した。
オペラ座、FENDI、Hisense。音響技術はライフスタイル領域へ広がる
DEVIALETの特徴は、テクノロジーを前面に出す一方で、フランス発のラグジュアリーブランドとして、アートやデザイン、ファッション、ライフスタイル領域との接点を積極的に築いてきたことにもある。
プレゼンテーションでは、パリ・オペラ座とのパートナーシップが紹介された。オペラ座内にはDEVIALETのストアが設けられており、19台のPhantomによってオーケストラのような音場を構成しているという。
また、各製品ラインには「Opéra de Paris」エディションが用意されており、金箔部分にはオペラ座の修復にも携わる職人による手仕事が取り入れられている。
そのほか、シャンパーニュブランドのKRUG、宇宙開発企業ArianeGroup、FENDIなどとの協業事例も紹介。DEVIALETは単にスピーカーを販売するだけでなく、特定の空間やブランド体験に音を与える存在として、グローバルに活動していることが示された。
さらに高橋氏からは、DEVIALETのライセンス事業についても説明があった。たとえば自動車領域では、BYD系ブランドDENZAの車室内音響にDEVIALETの技術が活用されている。
また、テレビ領域ではハイセンスとの協業も進んでおり、2026年モデルの上位機種には「Tuned by Devialet」のロゴが入るモデルも登場した。薄型テレビの高画質化が進む一方で、内蔵スピーカーの音質向上は依然として重要なテーマであり、そこにDEVIALETのチューニング技術が生かされているのだという。
高橋氏は、DEVIALETの技術について、コンパクトな筐体から重低音を引き出す構造、アナログの力強さとデジタルの精度を融合するアンプ技術、ドライバーユニットを最適に制御する技術などを紹介。Phantomのユニークな造形は音響技術の成果でもあることが改めて語られた。
生演奏でも確認できた、DEVIALETスピーカーの空間再現力
イベント中盤では、ヴァイオリンの神崎悠実氏、ピアノの小柳祥子氏による室内演奏も行われたのだが(初日のみ?木理枝子氏)、電子ピアノの音がDEVIALETのPhantom ULTIMATEから出力されていた。ヴァイオリンの生音と、Phantom ULTIMATEを通じて再生される電子ピアノの音が同じ空間の中で重なり合うかたちとなった。
実際の演奏にDEVIALETのスピーカーが組み込まれることで、音の立ち上がりと音像の自然さ、そして空間への広がりを来場者が体験できるプログラムとなっていた。
ヴァイオリンの直接音に対して、DEVIALETから再生されるピアノの音が過度にスピーカーの存在を主張することなく、演奏空間の中に自然に溶け込んでいた点が極めて印象的だった。
Phantomシリーズの特徴であるコンパクトな筐体からの豊かな低域再生や、空間全体を満たすような音の広がりは、音楽再生だけでなく、こうしたライブ的な用途においても有効であることを感じさせた。
オーディオ製品の試聴体験会というと、録音音源を再生して音質を確認する形式が一般的だ。だが、生演奏の一部としてスピーカーを用いることで、DEVIALETが目指す「空間に音をつくる」思想が、より直感的に伝わるものとなっていた。
高橋和哉氏と窪川勝哉氏が語る、オーディオとインテリアの関係
後半には、THT Japanの高橋氏がモデレーターとなり、インテリア&プロップスタイリストの窪川勝哉氏によるトークセッションが行われた。テーマとなったのは、DEVIALETのプロダクトがインテリア空間の中でどのように機能するか、である。
窪川氏は、従来のオーディオ、特に5.1chサラウンドのように複数のスピーカーやケーブルを室内に配置するスタイルは、インテリアとの相性が難しい場合があると指摘。
その一方で、DEVIALETのPhantomはラウンドしたフォルムを持ち、スタンドを用いることで空間の重心を上げることができるため、部屋の中に動きやアクセントをつくりやすいと評価する。
また、直線と直角で構成されることの多い住空間において、曲線を持つプロダクトは空間に柔らかさやリズムをもたらすと、FLOSのフロアランプ『ARCO』を例に取りつつ語った。
さらに、近年のモデルで採用されているマットな質感や深みのあるカラーについても、照明の反射を抑え、家具や空間と調和しやすい点を評価。光、音、香りは空間の印象を大きく左右する要素であり、音もまたインテリアを構成する重要な要素だと述べた。
DEVIALETのプロダクトは一見すると、従来のスピーカーらしからぬデザインを持つ。しかしその造形は、音響技術、設置性、空間との関係性を一体で考えた結果として生まれたものだということが、トークを通じて浮き彫りになった。
「聴けばわかる」ブランドだからこそ、体験拠点の意味は大きい
Martin KU氏は、日本市場について「信頼を得るには、実際に聴いて、理解してもらうことが重要」と語った。
海外で話題になっているから、あるいはデザインがいいからという理由だけでは、日本のオーディオファンやユーザーの信頼は簡単には得られない。だからこそ、一人ひとりに聴いてもらい、体験を通じて納得してもらう場所が必要になる。
DEVIALET クオーツ心斎橋店は、まさにそのための拠点といえるだろう。Phantomの圧倒的な低域再生、Dioneによる映像音響、そしてDEVIALETが持つデザイン性とライフスタイル性を、実際の空間で確認できる。
関西エリアでDEVIALETを本格的に体験できる場所が生まれたことは、ブランドにとっても、オーディオファンにとっても大きな意味を持つ。単なる製品展示ではなく、音、映像、空間、デザインを総合的に体感できる場所として、今後の展開に注目したい。
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