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公開日 2025/06/06 06:35
日本の製紙メーカーも初出展

【HIGH END】AKMはAK4497SとAK4498EX聴き比べデモを実施。振動板素材の新提案などIPSショウの注目ブース

編集部:筑井真奈

ミュンヘン・ハイエンドでは、オーディオショウと合わせて、オーディオ関連産業に関わるサプライヤーのための展示会「IPS(International Parts+Supply Show)」も併催されている。最終プロダクトではなく、半導体やコンデンサー、スピーカーの振動板素材、リモコン、トランス、ネットワークソリューションなどを扱う幅広いサプライヤーが今年も出展していた。




ミュンヘン・ハイエンドと併催されているサプライヤーのためのショウ「IPS」



最新のワンチップソリューションに手応えあり


旭化成エレクトロニクス(AKM)は2年ぶりにミュンヘンに出展、同社のVELVET SOUNDシリーズから、最新DAコンバーターである「AK4497S」と「AK4498EX」の聴き比べデモなどを行なっていた。



旭化成エレクトロニクスのブース


「AK4497S」はワンチップソリューションの最高峰、「AK4498EX」はデジタルとアナログを分離した2チップソリューションという位置付けの違いがある。「AK4498EX」は、デジタル処理部の「AK4191」と組み合わせて使うチップとなっており、2022年に発表されたトップモデルの「AK4499EX」に次ぐモデルとなる。



「AK4497S」と「AK4498EX」の聴き比べという貴重なデモンストレーションを実施


会場に来ていた開発担当の中元聖子さんも、「ミュンヘンに来てよかった、大変大きな手応えを得ています!」と満面の笑顔。AKMのDACチップは世界中のハイエンド・ブランドにて採用されており、ミュンヘンは開発担当者と直接ミーティングし、さまざまな要望をヒアリングできる貴重な機会である。


特に「AK4497S」を待ち望む声も大きかったという。以前の「AK4497」は、2020年の工場火災によって供給が停止されてしまった、いわば幻のモデル。この火災の影響で、それまでAKMを使っていたが、ESSに乗り換えざるを得なくなったブランドも少なくない。しかし今回のAK4497Sではさらに特性を高めての再登場、メーカーからの期待の高さを伺わせる。


また、旭化成の開発担当者の田中さんは、ヘッドホンでAK4497Sの音質を体感できる小型アンプを作成。実際に体験させてもらうと、AK4497Sの解像度の高さやノイズフロアの低さは、ヘッドホン再生でもしっかり伝わってくる。



AKMの開発担当の田中 拳さん


さらに、AKMブースを訪問するお客さんはもちろん、持ち運びできることから他のブースに持ち込んで、実際に体験してもらう、といった積極的な「売り込み」も行っていたという。「近くに(AKMのDACを使っていない)iFi Audioのブースがあったので、直接持ち込んで聴いてもらってきました!」と力強い。音質への高い感度を持つ関係者が集まるミュンヘンだからこそ、新しい関係構築の機会は積極的に捕まえにいきたい。



AK4497Sの音質を体験できるヘッドホンアンプ。基板もすべて田中さん自身で作成している



ガラス成形の技術で振動板に新たな風を吹き込む


また、クラウドファンディングも大ヒット中のマークオーディオ製「ガラス振動板」の開発を手掛けている台湾企業GAITも出展。スピーカー用の大きめの振動板のほか、ヘッドホンやイヤホン用の小型モデルも数多く展示し、技術力の高さを見せていた。



ガラスの3D加工に強みを持つ台湾企業GAIT


GAITはガラスの3D加工に強みをもつ会社で、0.1mm以下という非常に薄いガラスを、自在な形に加工できる技術を持つ。振動板の多くはゆるくカーブした形状であることが多いが、分割振動を避けるためにカーブの角度を細かく変化させているなど、実は複雑な技術によって作り出されているものも多い。振動板素材としてはペーパーや金属の採用事例が多いが、いまガラスが新しい選択肢として注目されている。



GAITの技術を使ったスピーカーユニットの作例


 



ヘッドホンの振動板にもガラスが活用できるとアピール


以前マークオーディオの「Alpair 5G」完成品スピーカーを聴かせてもらったことがあるが、その透明度の高さや清廉とした美しさは非常に印象的であった。GAITの技術は、先日国内取り扱いがはじまったSIVGAブランドのイヤホン「Que UTG」にも採用が発表されており、今後の広がりも楽しみなプロダクトである。


日本の製紙メーカーがミュンヘンに初出展


もうひとつ興味深かったのは、徳島県に拠点をもつ製紙メーカー「阿波製紙」が初めて出展していたこと。彼らの独自素材である「CARMIX CFRTP」という素材が、スピーカーの振動板として活用できるのでは、と考えてミュンヘン・ハイエンドに出展したのだという。



徳島県に拠点を持つ阿波製紙がミュンヘンショウに初出展!


CARMIX CFRTPとは、炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を混抄し熱プレス成形した「炭素繊維強化プラスチック」だという。軽量で内部損失が高く、曲げ強度に優れる特性から、トゥイーターやワイヤレスイヤホンなどへの活用を検討しているといい、実際に九州大学の芸術工学博士・河原教授と共同開発した試作スピーカーも展示されていた。



CARMIX CFRTPを活用した振動板のサンプル。AWA PAPERという文字も見える


そのほか、近年のスピーカーネットワークなどで見かける機会が増えた中国のコンデンサーメーカーBevenbiや、見覚えのあるリモコンが並ぶリモコンメーカーtwelectronicsなども出展、にぎわいを見せていた。



フォイルコンデンサーの新製品などを披露する「Bevenbi」


 



クリプトンのスピーカー振動板でおなじみ、ドイツ・クルトミュラー社のブース


 



見覚えのあるリモコンが並ぶリモコンメーカーのブース


IPSは、さまざまなサプライヤーあってこそのオーディオ市場であるということを改めて教えてくれると同時に、「次にどんなプロダクトが来るのか」という未来予測にもつながる貴重な場でもある。来年、ハイエンドショウがウィーンに移転しても、IPSショウは引き続き開催される。オーディオの未来につながる、新しいテクノロジーの提案が楽しみだ。

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