公開日 2026/02/18 06:35

あの“JPLAY”がなんとiOSに帰ってきた!? UPnP対応再生ソフト「JPLAY for iOS」をテスト!

開発担当のマーチン・オスタポウィッツ氏にもインタビュー
田村智理
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「知的でクリーンな音調」JPLAYが送るUPnPソフトウェア

この名前をみて、「懐かしい」と思うか、「え?プレーヤーなんて出したの?」と思うかで、コンピューターオーディオの世界観にどのくらい触れてきたのかがわかる気がする、そんな老舗でもあり個性派でもあるポーランドのオーディオブランドJPLAY社から興味深い音楽再生ソフトウェアが登場した。それが「JPLAY for iOS」だ。

iOS専用のUPnPソフトウェア「JPLAY for iOS」。記事執筆時点でAndroid版の提供はなし

結論からいうと、UPnP系のオーディオ再生ソフトウェアの久しぶりの新顔として既存のアプリのシェアを奪いかねないほど、よくできたソフトだ。ソフトウェア企業としてのスタートを切り、現在はオーディオ用UPnPサーバー等も手掛けている企業でもある同社ならではの細かい配慮が随所にあり、QobuzやTIDALとの連携もスムーズ。最後発のディスアドバンテージを吹き飛ばす優れた音楽再生ソフトであることに疑いはないだろう。

2週間無料トライアルも用意されているので、iOSデバイスを持っている読者は一度は試してみてほしい。

JPLAY for iOSの公式サイト。JPLAY for iOSの価格は、サブスクリプションプラン「JPLAY Premium」で49.99ドル(1年)もしくは買い切りプラン「JPLAY Lifetime」で199ドル

JPLAY for iOSの音質的な特徴は、他社製ソフトウェアや音楽ストリーミングサービスが提供する純正ソフトウェアと比較した相対的な印象ではあるが、総じて、柔らかさや情緒性よりも、情報の整理性、透明度、時間軸方向の正確さを重視した「知的でクリーンな音調」と表現するのが適切だろう。

録音の質やミックスの意図をそのまま提示するタイプのサウンドであり、ソースやシステムの違いを正直に反映するモニターライクな性格も併せ持っている。その特徴は端的にいうと、付帯音の少なさと低域方向での情報量の増加に現れる。

背景が非常に静かで、不要な滲みや付加的な響きが抑えられているため、音像の輪郭が明瞭で、特に低域の立ち上がりから減衰に至るまでの動きが把握しやすい。

低域は量感を誇張するタイプではなく、解像度と見通しの良さを優先したチューニングで、沈み込みが深く、かつ分離が良いため、ベースラインやバスドラムのピッチや質感の違いが明確に聴き取れる。結果として、低域が「厚く」なるというよりも、「深く、整然と伸びていく」印象を受ける。

音場表現についても、いわゆるウォームで包み込むような拡散型の広がりではなく、定位の明瞭さと空間の見通しの良さを重視した方向性で、各楽器の位置関係が整理され、前後・左右の奥行きがクリアに描かれる。音がふわっと膨らむのではなく、輪郭を保ったまま空間が形成されるため、全体として引き締まった印象のサウンドステージとなる。

音楽はリラックスして聴きたい、あるいは豊かなホールトーンを演出していきたい、ある種の音楽的情緒性がオーディオには必要という嗜好には向かないが、理性的で知的な、現代的な高音質体験の快感が欲しい場合には有力な選択肢になることだろう。

ティアックのネットワークプレーヤー「NT-505-X」のUPnP操作アプリとして使用

JPLAY for iOSは単独でスマートフォンの再生ソフトとしても利用できる

思想的に“尖った”ソフトとして登場したJPLAY

かつてNet Audio誌の編集に関わっていた編集担当氏からこのソフトのレビュー依頼をいただいたとき、筆者は思わず「お、懐かしいですね」と盛り上がってあれこれと氏に語ってしまった。

そのくらい、JPLAY社は個性的であり筋の通った面白い企業というのが筆者の理解だ。同社は2011年に欧州で創業し、マーチン・オスタポウィッツ(Marcin Ostapowicz)氏が代表を務めている。

創業当初はWindows PCの音質改善を標榜するOS設定最適化用ソフトウェアを販売し、その後JCATシリーズとしてオーディオ機器向けUSBケーブル、LANケーブルなどのアクセサリー領域に手を広げつつ、オーディオ専用USBカード、LANカードなどへとオーディオ愛好家向けのDIY向けハードウェアを発売し、近年はついに自社製ミュージックサーバーの “XACTシリーズ” を発表するなど、着実な歩みを続けている。

今年15周年を迎える同社は、実は隠れた老舗ブランドと言って差し支えないだろう。同社がWindows版「JPLAY」を発売した当時は、USBオーディオやネットワークオーディオという分野は完全に黎明期であった。昨今のようにストリーミングが流行っているわけでも、当たり前のようにハイレゾ音源が販売されているわけでもなく、ファイル形式の音源を再生する形態としては現在のありようと変わるところはないものの、メーカーもユーザーも圧倒的にノウハウが不足しており、完全に手探り状態であった時代といえよう。

そのようなコンピューターオーディオ黎明期にあって、コンピューターやネットワーク機器から良い音がするのかというDIY精神で自作PCをオーディオ向けに改造するというトランスポートやミュージックサーバーを自作するというムーブメントの流れをうけて誕生したのがWindows版JPLAYである。このソフトの特徴をざっくり説明するとWindows OSの設定を変更してオーディオ再生向けに特化してくれるというものだ。

Windows専用の高音質ソフトとして展開していた「JPLAY」。OPPO「Sonica DAC」が時代を感じさせる……

Windows版JPLAYはその後「JPLAY Classic」と改名し、現在は「JPLAY Femto」と呼ばれる最新バージョンが販売されているが、当初からチューニングがピーキーであることで知られており、PC自作にかなり明るい人でないと、最もオーディオ再生に特化した「ハイバネーション・モード」と呼ばれる設定は一般的な市販PCでは実用的に使うことがほとんど無理と評されるほどの、思想的に徹底した「尖った」企業というイメージを印象付けたソフトウェアだった。

JPLAY社を主宰するマーチン・オスタポウィッツ氏が他の共同創業者と同社のビジネスを始めた際、もともとソフトウェアエンジニアのバックグラウンドを持っていなかったこともあり、オーディオファンとしての感覚や体験を重視したソフトウェア開発を行っていったように思われる。

同社は音楽再生に関わらないソフトウェア的な処理をできるだけ短縮し、遅延(レイテンシー)を最小化するとともに、プロセッサーへの負荷を下げることが、デジタルオーディオ再生環境全体のノイズを減らすことにつながるという思想を掲げている。しかし、こうした同社の思想はオーディオファン向けのシステムではその音質的な変化を体験したり共感できたりする一方で、静特性を測定する環境ではその変化を観測することが難しいので、しばしば論争を招いてきた。

筆者がJPLAY社を個性的であり筋の通ったブランドだと感じるのは、こうした論争の渦中にあって、測定で変化を観測する手法が確立されていないタイプの音の変化体験、すなわちユーザー体験を重視する姿勢を変えることがなかったことにある。

特にデジタルオーディオやソフトウェアの世界においては、0か1か、白黒はっきりつけたいという論調が多いように思うが、同社は一貫して耳あたりがよく誰からもツッコミを受けにくいように当たり障りのないぼかしかたをせずに、創業当初からの製品開発ポリシーを堅持している。デジタル的に記録されたアナログの電気信号の世界においては、従来のオーディオ製品開発のアプローチが不思議と有効ではあるけれども、将来同社がその謎を解き明かしてくれるかもしれない。

2011年のWindows版JPLAYの発表後、同社は2013年から「JCAT」という新しいハードウェアのシリーズで、自作PC向けの拡張カードの販売を開始した。JCATは「JPLAY Computer Audio Transport」の略で、コンピューターオーディオの再生品質の向上はソフトウェアとハードウェアの両方の品質向上が必要不可欠と考えたためだという。

インターフェースの中核となるUSBとLAN用のカードの発売後、その世界的な人気を受け、2022年についに同社初の単品コンポーネント製品であるXACTシリーズを発表し、現在に至っている。

JCATのPCオーディオ用USBカード(国内ではオリオスペックにて取り扱いがある)
 

プロセッサーへの負荷を下げる従来のポリシーを踏襲

今回のJPLAY for iOSはしばらくハードウェア開発に注力していた同社が久しぶりにソフトウェアに戻ってきたもので、しかも音楽再生ソフトウェアとなれば、コンピューターオーディオの世界を楽しんできた者としては今度は何をもたらしてくれるのかとワクワクしてしまうのは仕方がないことだろう。

ソフトのレビューをするにあたって、今回のJPLAY for iOSを開発した経緯について、マーチン・オスタポウィッツ氏にインタビューを行った。

同氏によれば、XACTシリーズと組み合わせることで、JPLAY社が理想とする再生環境を全体として提供するためにこのソフトウェアの開発をスタートさせたという。

XACTシリーズのオーディオサーバー「S-1 EVO」

また、JPLAY for iOSはUPnPのコントローラーとして機能するが、その開発にあたっても音楽再生に関わらないソフトウェア的な処理をできるだけ短縮し、遅延(レイテンシー)を最小化するとともに、プロセッサーへの負荷を下げるという従来の開発ポリシーに則り、UPnPでの音楽再生時における通信を極限まで減らすことを音質改善のキーとして考えているという。

iOS版を単独で発表したのは、ソフトウェアによる動作環境の最適化がJPLAY社の技術の一つの核であるところ、デバイスが無数にあるAndroid端末を前提とした開発が困難である一方で、iOSデバイスはある程度仕様が統一されておりiOSデバイスの挙動を把握することが比較的容易であったためだという。

直感的操作で使用できるUIも魅力

使用方法はとても簡単だ。まずiOSアプリストアから、JPLAY for iOSをダウンロードする。このソフトは多言語対応しており、日本語にも対応している。筆者が確認した限りでは、日本語として不自然なところはほぼないと言ってよく、使ってみて日本語の意味がわからないということはないだろう。

Placeholder Image
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iPhoneにも対応

これまでは、日本語の翻訳精度が低すぎて使う気になれないソフトウェアも散見されてきたが、近年の生成AIによる翻訳精度の向上で大半の海外製アプリは実用面でほぼ問題ないレベルになってきているので、今後海外製音楽再生ソフトウェアを使うハードルは一気に下がってくるのではないかと筆者は感じている。海外メーカーでソフトウェアの多言語対応ができないところは今後セールスにも悪影響があるのではないだろうか。

初回起動時にはステップごとにガイドが表示されるので、ガイドで案内された順番に進めていこう。

「レンダラーを選択」画面では、JPLAY for iOSをインストールした端末が「This Device」と表示され、それ以外のUPnPレンダラーがあれば、それも表示されるので、音声信号を送りたい先をまず選ぶ。選んだら、画面下の矢印をタップして遷移する。

レンダラーの選択画面。ここではリンの「Sneaky DS」とティアックの「NT-505-X」が選択できる

「ライブラリーの選択」画面では、ネットワークで利用可能なデバイスおよびサービスを選択する。ここでは、UPnPメディアサーバーのほか、音楽ストリーミングサービスとしてQobuzとTIDALを選択することができる。QobuzとTIDALはアイコンをタップするとそれぞれのサービスにリダイレクトされ、ログインが促されるので、ログインをすることで端末がサービスから認証される仕組みだ。IDとパスワードを入力するだけなので、特に操作に迷うことはないだろう。

QobuzとTIDALにもソフトウェア上で連携できる

ソフトウェアのユーザーインターフェースは定番の配置になっており、操作に迷うことはあまりないだろう。かつ設定の「カバー」メニューからかなり柔軟にレイアウトを変更することができるので、各人で好みに合わせてカスタマイズすれば良いだろう。テーマファイルの作成も可能だ。

QobuzもTIDALも両方登録した場合、デフォルトではそれぞれホーム画面にはおすすめ楽曲、ミックス、プレイリストが並列的に表示される。もちろんこの表示項目もカスタマイズ可能だ。アルバム、楽曲、アーティストなどのリストも両サービスの横断検索が可能で、もちろんローカルのUPnPサーバー内のデータもID3タグベースで検索することができる。

TIDALを選択したところ

また、楽曲の情報取得にも対応しており、アルバム情報やアーティスト情報などストリーミングサービスが提供する情報も外部に遷移することなくアクセスすることができる。

楽曲再生画面

レンダラーの設定画面はギャップレス再生の有効/無効のほか、他社製UPnPレンダラーとの組み合わせでUPnPコントローラー側が調整したほうが良い設定項目が複数用意されていて、使用する上で動作がスムーズでない場合には利用すると良いだろう。筆者環境では特に設定を変更する必要はなかった。

ギャップレス再生などの設定も可能

おもしろいのはレンダラーのコンフィギュレーションページへのリンクが用意されている点で、いちいち専用アプリ経由で見にいく必要がないのは地味ながら便利だろう。

ネットワークプレーヤーのコンフィグもアプリ上から確認できる

おそらくJPLAY for iOSをユーザーが初めて使った際に戸惑うことがあるとすると、ボリューム操作ではないかと思われる。JPLAYは音質最優先設計であることから、JPLAY for iOSをインストールした端末のソフトウェアボリュームは基本的に最大値で固定になり、ビットパーフェクトが維持されるようになっている。

デフォルトでの音量操作はアプリ上で表示されるボリュームのスライドバーまたはボタンで上下させる必要があるが、この設定は変更することができるので、設定の「オーディオ出力」から任意のレンダラーを選び、設定画面の「音量」の項目の「iOSデバイスの物理ボタンで音量を調整」を有効にすればよい。

Qobuz純正アプリの場合にはソフトウェアボリュームが有効で、基本的にUPnPレンダラー側のボリュームは別途設定していじらないことが前提となる。だが、特にアンプ内蔵のオールインワン製品を使っている場合にはUPnPレンダラー側のボリュームを直接操作した方が直感的な場合もあるし、ローカル音源でDSDファイルが混ざっていると音量操作の際に意図しないトラブルが発生することも考えられるので、JPLAY for iOSのような仕様のほうがオーディオ再生品質を重視するなら合理的だろう。UPnPコントローラー側で他社製UPnPレンダラーのボリューム機能を直接掌握して操作するのはなかなか便利だ。

JPLAYのアプリは基本的にインストールしたあとは音質に関する設定は特にないので、そのまま気兼ねなく使うことができる。唯一音質に影響しそうなのが、レンダラーの設定画面から変更することができる「時間を更新」設定だ。

初期設定は10で、1から12000までの値が推奨されている。これはUPnPコントローラーがUPnPレンダラーの再生状況を取得するポーリング動作の間隔を調整する項目で、LAN内に余計なパケットが飛ぶ頻度がさらに少なくなる。筆者の環境では激変というわけではないが12000のほうが聴感上好ましい結果が得られたので、特段再生に支障がなければ12000を試してみてもよいだろう。

JPLAYの開発思想を現代のネットワークオーディオに展開

JPLAY for iOSは、黎明期の「尖った」JPLAYを知る筆者にとっては、ある意味でとても「JPLAYらしい」ソフトウェアだった。JPLAYというブランドが長年積み重ねてきた思想と経験を、現代のネットワークオーディオ環境において最も現実的な形で提示したソフトウェアだと言える。

操作性、対応サービス、安定性といった実用面での完成度を十分に満たしつつ、なおかつ音質的アプローチでも独自の存在感を示している点は特筆に値し、すでに他の再生アプリに満足しているユーザーにとっても、一度試してみる価値は十分にあり、コンピューターオーディオの現在地を確認するための一つの基準として位置づけられる存在だろう。

使いやすさと音質、そして思想のバランスが取れた本作は、UPnP再生ソフトの一つの完成形として、長く使われる存在になる可能性を秘めており、今後のアップデートや機能拡張も含めて、その成熟の過程を追い続ける価値のあるソフトウェアではないだろうか。

 

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