• ブランド
    特設サイト
公開日 2022/10/05 06:30

アップル「AirPods Pro」とボーズ「QC Earbuds II」、比べるほど際立つ方向性の違い

【連載】西田宗千佳のネクストゲート 第11回
西田宗千佳
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

「QuietComfort Earbuds II」。カラーはブラック。価格は3万6300円(Boseオンラインショップの場合)
ボーズの最新完全ワイヤレスイヤホン(TWS)、「QuietComfort Earbuds II」(QC Earbuds II)が発売になった。ボーズが力を入れて作った製品だけに、確かにかなり魅力的なTWSに仕上がっている。

ちょうど第2世代AirPods Proが出たばかりということもあり、両者の比較が気になっている人もいるのではないだろうか。今回はそのあたりも含め、実際に使いながら考えてみよう。

9月23日に発売になった「第2世代AirPods Pro」。価格は3万9800円(アップル直販の場合)

耳への「付け心地」にも2社の違いが



TWSがヘッドホン/イヤホンの主力市場になって、すでに数年が経過している。その起爆剤になったのがアップルの「AirPods」であるのは間違いない。当然、オーディオメーカーとしては競合を考える必要に迫られ、各社が積極的な製品展開を行ってきた。

「QuietComfort Earbuds II」の箱は黒。白のAirPods Proとは好対照だ

ボーズもそんな会社の1つだ。特に同社は「ノイズキャンセル」機能で支持されてきた企業でもあり、TWSでもノイズキャンセルで負けるわけにはいかない。これまでも決して劣っていたわけではないが、さらに機能を磨いた新機種として出てきたのが「QuietComfort Earbuds II」というわけだ。

ケースのサイズ的にはAirPods Proより少し大きいが、手のひらに入る程度のサイズ感、という意味ではあまり大きな違いはない。イヤホン本体は、耳から飛び出る部分が棒状で小さく見えるAirPods Proに対し、幅が広く大きめではある。

左がQuietComfort Earbuds II、右がAirPods Pro。横幅はAirPods Proの方が大きく、縦の長さではQuietComfort Earbuds IIが長い。結果としてQuietComfort Earbuds IIの方が大きくは感じる

耳へ入れた時の安定度でいえば、QuietComfort Earbuds IIの方が高いと感じた。ただし、その分耳への負担というか「装着している感」は、AirPods Proの方が軽くなっている。

QuietComfort Earbuds II本体。耳への圧迫感が多少あるが、AirPods Proより安定感がある

左がQuietComfort Earbuds II、右がAirPods Pro。サイズ自体はそこまで差がないのだが、耳から飛び出す「棒」の長さはAirPods Proの方が長い

両者の違いは「存在感・安定感の強いBose」と「あくまで自然さを重視するアップル」という、両社のキャラクターの違いがはっきりと出ている印象を受けた。このことは後述する「音質」にも影響してくる要素だ。

Boseは騒音を消す「快適さ」、アップルは「自然さ」



まず、やはり競争の軸である「ノイズキャンセル」から。単純に「騒音が消える」という意味では、QuietComfort Earbuds IIの方が上手く消えていると思う。第2世代AirPods Proも初代に比べるとノイズキャンセルが強化されているが、比較的高い音や人の声は強くキャンセルしない傾向にある。それに対してQuietComfort Earbuds IIは、全域でノイズキャンセルが強目にかかる。

一方、これは個人差もありそうなのだが、QuietComfort Earbuds IIは少し耳への圧迫が強く、静かな環境では逆にホワイトノイズも気になった。このノイズキャンセルについての違いは、おそらく両社のポリシーの違いなのだと思う。

QuietComfort Earbuds IIの装着イメージ(Image:Bose)

ポリシーの違いは、「外音取り込み」(QuietComfort Earbuds IIでは「アウェア」という名前になっている)からもわかる。ノイズキャンセルに使う外界音取り込み用のマイクを活かし、周囲の音をヘッドホン利用中にも耳に届ける「外音取り込み」機能は、多くのヘッドホン・イヤホンに搭載される機能になっている。

この機能の方向性が、AirPods ProとQuietComfort Earbuds IIでは大きく異なっている。第2世代AirPods Proは、とにかく「自然」だ。外音取り込みがオンの状態で使うと、まるでイヤホンをつけていないかのように感じるほどだ。

それに対してQuietComfort Earbuds IIは、やはり「マイクで聴いている」感が強い。一方、外音自体が耳障りでない音量にチューニングされていて、声はむしろはっきり聞こえる。

耳障りな音を自動的に小さくする、という要素は第2世代AirPods Proにもあるのだが、アップルの考え方は「耳に悪影響を及ぼす大きな音(85dB以上)のみ小さくする」という考え方になっている。それに対してQuietComfort Earbuds IIは、数値で示されないのではっきりとはわからないものの、そこまで大きな騒音でなくても小さい音にし、耳に届けているようだ。

「自然さ」と「快適さ」という面で、やはり2社は同じような機能でも、向いている方向が違うように感じた。

音質も異なるキャラクター、「空間オーディオ」の価値で評価が分かれる



では「再生される音楽の音質」はどうだろうか? どちらの製品も、いわゆる「ハイレゾ」には対応していない。音声伝送に使われるコーデックは、両者ともSBCおよびAAC。この点は過去の両社製品から変わりはない。だがTWSの利用シーンを考えると、ハイレゾでなければならない場面は少ない。圧縮伝送であっても「そのシーンで快適に良い音が聞けるか」という点が重要だ。そこは両モデルともに十分クリアしている。

率直にいえば、音質の点で第2世代AirPods ProとQuietComfort Earbuds IIは「甲乙つけがたい」と感じる。正確には「キャラクターが違うのでどっちが上とは言いがたい」というところ。QuietComfort Earbuds IIはボーズらしく低音が豊かで、広がりがある音。第2世代AirPods Proは全体に自然で、中域から広域の煌めき感が豊か。どんな楽曲を聴くかによって相当に好みが分かれそうだ。

ただ第2世代AirPods Proは、Dolby Atmos楽曲を中心とした「空間オーディオ」へ対応していることが大きい。ヘッドトラッキングを使った位置認識に加え、iOS 16では個人の顔や耳の形状に応じた最適化も行われている。そのため、第2世代AirPods Proは特に、iPhone+Apple Musicの組み合わせで使ったとき、音の広がり感という点で大きな違いが生まれる。QuietComfort Earbuds IIは、このポイントについてはちょっと不利だ。

アップルは「空間オーディオ」を訴求している(Image:Apple)

アップル製品特化か、それとも「万能性」を選ぶのか



第2世代AirPods Proは、iPhoneなどのアップル製品と組み合わせた時に、やはり最大の価値を発揮する。例えば、iPhoneで音楽を聴いた後にMacで再生を切り替えたり、Apple TVで使いたいと思った時など、Bluetoothのペアリングを自然に適切な機器へと切り替えてくれる。この快適さは、なかなか他のデバイスでは味わえないものだ。

ただ、それはやはりアップル製品同士でのことだ。好みの音にいじって楽しむ、Androidでも使うという要素があるなら、QuietComfort Earbuds IIは第2世代AirPods Proよりも良い点が多い。

これはセットアップについても同様だ。アップルはiOS/iPadOS向けに特化しており、AirPodsのセットアップをOSの機能に組み込んでいる。一方でQuietComfort Earbuds IIはOSプラットフォーマーが作っているわけではないので、そういうわけにはいかない。

ただし今はアプリ(Bose Music)をインストールすれば、そこから設定が行えるようになっている。アプリを入れさえすればどのプラットフォームでも簡単に行えるという言い方もできる一方で、「アプリを必ずインストールする必要がある」ともいえるわけだ。

Bose Musicの画面。音量調整や各種設定、ペアリングして使う機器の切り替えなどはこのアプリから行う

ペアリングを含めた設定は、iPhone・Androidともに「Bose Music」というアプリから行う

アプリが必要ではあるが、QuietComfort Earbuds IIはアプリからイコライザーを使って、音質をかなりいじれる。第2世代AirPods ProもiOSからならば、ある程度変更も可能だが、あくまでちょっとした補正といった趣である。

イコライザー機能があるので、音の感じはある程度好きなように変更できる

そういった点を含めても、「アップル製品同士に特化した際に最大の価値を発揮する第2世代AirPods Pro」と、「そこまで機能的付加価値はないが、どの製品と組み合わせても高い価値を提示するQuietComfort Earbuds II」は、向いている人が違う製品、といえるだろう。

そして、そのあたりの違いは、充電に使う端子がLightning端子(AirPods Pro)か、USB Type-C端子(QuietComfort Earbuds II)かという、細かなところにも表れているのだ。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 Beats、ブランド史上最小の完全ワイヤレス「Solo Buds」。ケースにバッテリー非搭載
2 2023年後期朝ドラ『ブギウギ』の総集編放送。GW期間中にNHK総合とBSプレミアム4Kで
3 Apple Musicも聴ける高コスパ ネットワークプレーヤーeversolo「DMP-A8」。音質と使いこなしを徹底検証
4 オスカー受賞『ゴジラ-1.0』4K UHDをフラゲ!特典盛りだくさんのパッケージ開封の儀
5 女子プロゴルフ「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」、5/2からの放送・配信予定
6 英・コード製プリメインアンプの実力恐るべし!「Ultima Integrated」をB&W「800 D4シリーズ」で徹底検証
7 【moraアニソンTOP10】本当に令和? 「ツバサ」「Get Wild」がまさかのランクイン!
8 Amazon Prime Videoの人気8チャンネルが2ヶ月間99円に!GW期間中キャンペーン
9 Dolby Vision&Atmosでゴジラの圧倒的迫力と世界屈指のVFXを堪能!4K UHD BD版『ゴジラ-1.0』徹底レビュー
10 (nb)の耳を塞がないイヤホン「Open+」、発売日が5/17に決定。割引キャンペーンも
5/2 10:40 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー192号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.192
オーディオアクセサリー大全2024~2025
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2024~2025
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.21 2023 WINTER
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.21
プレミアムヘッドホンガイド Vol.31 2024 SPRING
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.31(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2024年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2023受賞製品お買い物ガイド(2023年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2023年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX