公開日 2021/05/12 06:41

呼び覚ませ俺たちのリズムエモーション!8cmシングル比較試聴でTWO-MIX25周年BESTの進化を体感!

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【特別企画】

リマスタリングのポイントを当時のCDと比べて実感!

ではそのリマスタリングの威力は、実際にはどのようなものでどれほどのインパクトなのか?聴き比べてみよう。

しかし聴き比べるには比べる対象が必要。そこで用意したのが……

短冊シングル!

輝く懐かしの8cm!

「新機動戦記ガンダムW」OP主題歌としてヒットした1st&2ndシングル「JUST COMMUNICATION」「RHYTHM EMOTION」の8cm短冊!この2作品について、「当時の音」と「リマスタリングの音」を聴き比べてみようというわけだ。

聴き比べ始めるやいなや、「JUST COMMUNICATION」のイントロ数秒でもう、矢内氏談の「空間をぜんぶ使おうと思って。サイドの楽器とかは相当上げてます」が伝わってきた。

右耳側で細かなリズムを刻むハイハットシンバルや、左耳側でシュァアッ!と持ち上がってくるジェットサウンドは、音量だけではなく明瞭度もアップ。左右に振られたそれらの存在感が高まることで、空間の広がりがより際立つ。

そして「JUST COMMUNICATION」「RHYTHM EMOTION」共通のポイントとしては、永野氏が当時から「僕らはリズムを最初に組んでそのグルーヴを感じながら曲全体を作っていく」と言うほどにこだわっていたというリズムの低音部分。その主役であるシンセベースが、リマスタリングによってよりマッシブでハード、筋肉に力を入れて硬くしたような感触に仕上げられている。

これはグルーヴを強靭にする狙いに加えて、谷内氏が「ボーカルを少し前に出しています」と述べている部分との兼ね合いでもあるのかもしれない。永野氏が「高山さんの声質ってボーカルの音量を下げてもオケに負けないんですよ」と評するそのボーカルが、今回のリマスタリングでは当時より前に出されているわけで、それだけだとベースラインの存在感がボーカルに負けすぎてしまう。そこでベースの音色をくっきりと力強くすることで、音量だけではないトータルの存在感としてボーカルに埋もれないようしてあるのでは?と推測できる。

谷内氏が「普通のベースラインよりもっと下の帯域のローまで出ている」と述べている超低音は、全体の空気感として終始重要。であるがここでは、その超低音を特に感じやすい部分として「RHYTHM EMOTION」の間奏部分を挙げておきたい。

2分45秒付近からベースラインがスケールに沿って下降していき、音程としてはF1、周波数としては40Hz前後の低さにまで到達。これは普通のエレクトリックベースでも出せる範囲だが、ここで使われているのはサイン波に近い音色のシンセベースだ。

サイン波に近いので基音の上に重なる80Hzや200Hz、880Hzなど前後の倍音成分は、多くは含まれず、シンセベースなのでピッキングアタックといった要素も薄く、40Hz前後の基音だけが純粋に響いている様子に近い。その40Hz周辺やそのさらに下の周波数が、今回のリマスタリングでより豊かに響いていることを体感できるのが、この間奏ブロックだ。

逆に言えば、その低さの周波数まで再生できるイヤホンやスピーカーで聴かないことには、このブロックのリマスタリング効果を十分に体感することはできない。

試しにパソコンやスマホのスピーカーで再生してみてほしい。するとベースラインがすごく薄らとしか聴こえてこないか、あるいは、パソコンやスマホの機種によってはそもそもベースラインがほとんど聴こえてこなかったりもするはずだ。谷内氏の「大きなスピーカーやカナル型イヤホンなら聴こえるんですけど、普通のスピーカーでは再生できないほど低い帯域まで鳴ってる」との言葉の意味も実感できるかと思う。

このように、比較試聴してみて改めて、今回のリマスタリングの効果は明白!だと実感。しかし同時に、超低音の部分に代表されるように、その効果をより明確に実感するにはオーディオ再生環境の力も要求されることもわかる。

そもそもハイレゾって何?

リマスタリングの意義や実際の効果はなるほど!とご理解いただけただろうか。ではもうひとつのキーワード「ハイレゾ」の方は?

「ハイレゾ」とは、端的に言ってしまえばデジタル音源のスペックの話だ。

CDには44.1kHz/16bitというスペックのデジタル音声信号が記録されている。デジタルデータの量としては1,411kbps=毎秒1,411kbitで、5分の曲の容量は50MB程度。

一般的なサブスクでは、その1,411kbpsを例えば256kbpsとかに圧縮して1/4ほどの容量にすることで、回線への負荷やデータ通信料金を節約。256kbpsの場合、5分の曲の容量は12MB程度。

対してハイレゾで一般的なスペックは96kHz/24bitで、毎秒のデータ量はCDの3倍を超える4,608kbps。そのデータ量の豊富さが音質の高さにつながる。

ハイレゾ音源はデータ量が圧倒的に豊富

4分19秒の「JUST COMMUNICATION」の場合、CD音源ファイルは約46MBに対して、ハイレゾ音源ファイルは約150MB。

写真や動画など映像データで想像してみてほしい。例えば1,920×1,080ピクセルの写真の非圧縮のRAWデータをCDスペック音源とすると、そのRAWデータをJPEGでデータ圧縮したのが一般的なサブスク等の圧縮音源。圧縮に伴いディテールの潰れやノイズ感が生まれてしまうのは写真でも音声でも同じだ。

ハイレゾは?というと、そもそもの解像度が1,920×1,080ピクセルを超えている写真や映像のようなもの。3,840×2,160の4K解像度映像の音声版と言えば、情報量の多さやリアリティの豊かさ=ハイレゾならではの高音質をイメージしてもらえるかと思う。

注意点としては、ハイレゾ音源をそのハイレゾスペックをフルに活かした再生するにはハイレゾ対応のオーディオ再生機器が必要になること。3,840×2,160ピクセルの写真や映像を1,920×1,080ピクセルのディスプレイで見ても意味がないのと同じだ。

次ページTWO-MIX25周年ベストをハイレゾとCDで比較試聴!

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