公開日 2016/05/30 10:00

【速攻レビュー】オーディオテクニカ「ATH-CKR90」:攻めの姿勢が生んだ新時代のイヤホンサウンド

あの“世界初”モデルが更なる進化を遂げて登場

CKRらしさを持ちつつ音の厚みや太さが向上

では試聴に移ろう。トップエンド「CKR10」と共にCKRシリーズのシグネチャーサウンドを確立する役割も担っていたであろう初代「CKR9」とは異なり、今回のこちらはより普遍的なサウンドも提示する役割か − そのような印象も受ける、トータルバランスに優れた音づくりというのが大まかな印象だ。

ハウジングはアルミ削り出し。アルミニウムスタビライザーも使うことで、不要共振を抑え忠実な音再生を実現する

初代はイヤホンでは考えられないほどの空間的広がりを備えており、そのスペースを活かして音を広く配置しつつ、大口径デュアルドライバーの威力か低音の横の太さも縦の沈み込みも充実していた。

対してCKR90は、十分に広がるが厚みや密度はこちらの方が豊かだ。一方でCKRらしいすっきり感も引き継いでいるので、音数の多い曲でも狭苦しく混雑させることはなく、情報量も豊かだ。

初代が音のエネルギーを大きく広げ抜けさせる一方、こちらは広げすぎず密にして厚みや太さを高めているという印象だ。同口径の「DUAL PHASE PUSH-PULL〈Hi-Res Audio〉DRIVERS」を採用する「CKR100」とは、音の個性でも住み分けできるだろう。

音の特徴の概要を踏まえていただいた上で、続いては具体的な紹介に移ろう。

まずはRobert Glasper Experiment「I Stand Alone」。ジャズピアノ・ミーツ・ヒップホップというサウンドの曲だが、特にそのヒップホップ側の感触がよい。ぶっといが締まりもあるバスドラムやベースがどんと縦(下)にも沈み込んでくれる。低重心だがもたつかないグルーヴも心地よい。

音の抜けや乾いた空気感という部分はCKR9の方が引き出してくれるが、音のエネルギーの密度感はこちらの方が高い。リズムのガツンとした部分をより楽しめる。

またCKR90は高域にほのかなエンハンスがあり、高域の明るさやカチッとした感触の表現が得意だ。そこは音源との相性次第で得手不得手の要因にもなるが、この曲との相性は良好。粗めのサンプリングを模したかのようなこの曲この録音のシンバルの質感を、「ここはやっぱりこういう音で聴きたいでしょ?」とばかりのいい感じの音で届けてくれる。

もうひとつはペトロールズ「表現」。シティポップ的なオシャレさや軽やかさとファンク的でもあるグルーヴを兼ね備える曲だが、その両面をバランスよく届けてくれる印象だ。中高域の明確さでギターのカッティングのパキッとした抜けや艶などを、低域から超低域のしっかり感でリズムセクションのいわゆる「這うようなグルーヴ」を届けてくれる。

というかこれに限らず、ハードロックからメタルまで含めてロック全般との相性は良好と感じた。

  ◇  


「ATH-CKR90」は“Sound Reality”シリーズのなかで最も挑戦的なモデルであり、同世代の他のモデルともCKR9とも異なる個性を備えている。シリーズの他のモデルが好みに合わなかった…という方も、それらとは別枠と考えて、ぜひ試聴してみてほしい。

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