【インタビュー】“カメラ新世界”へ導くニコン。動画制作や若年層など新たな需要にも訴える魅力溢れる商品群
DGPイメージングアワード受賞インタビュー ニコンイメージングジャパン
発売前より圧倒的な注目を集めたフルサイズミラーレスの新スタンダード「Z5II」、クラスを超えた実力を誇るAPS-Cミラーレス「Z50II」、さらに、シネマ向けシリーズ “Z CINEMA” のニコン第1弾モデル「ZR」など、カメラが前にする新しい世界を呼び込むニコンの商品群。市場創造へと意気込む商品群と取り組みについて、ニコンイメージングジャパン マーケティング本部長・堀内 淳氏に話を聞く。

株式会社 ニコン イメージング ジャパン
執行役員 マーケティング本部長
堀内 淳氏
プロフィール/東京都小金井市出身。2011年 ニコン入社、2021年7月よりニコンイメージングジャパン広報宣伝部、2025年10月より現職。趣味は撮影、スポーツ観戦。座右の銘は「疾風に勁草を知る」。
フルサイズミラーレスの新しいスタンダードを目指した「Z5II」
―― DGPイメージングアワード2025におきまして、「Z5II」「Z50II」「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」が総合金賞に、「ZR」が審査委員特別賞に輝きました。おめでとうございます。まずは「Z5II」の開発の狙いやここまでの市場の反響についてお聞かせください。
堀内 フルサイズのエントリーモデル「Z5」が非常に長きにわたりお客様にご愛顧いただいていますが、AFの追従性や暗所の画質に課題も指摘されてあり、お客様の声に丁寧に耳を傾け、フルサイズミラーレスの新しいスタンダードとなるカメラを目指して開発陣一同取り組みました。
アピールポイントは大きく3つあります。1つ目は飛躍的な進化を遂げたAF性能です。約77万円する上級機「Z9」と同じ最新世代の画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載し、9種類の被写体を検出して追尾します。狙った被写体がオートで即時に認識され安心感があります。
2つ目として、課題とされていた暗所での撮影時のノイズも大幅に改善されました。感度性能に優れた裏面照射型CMOSセンサーを搭載しており、フルサイズらしいキレイな映像を撮ることができます。
そして3つ目に挙げるのが色表現の多彩さです。最近は若い方を中心にフィルム調やちょっと淡い表現など、色表現に個性を出したいという強い要望がありますが、人気のクリエイターが作成した画作りである「イメージングレシピ」がカメラ上部にあるピクチャーコントロールボタンから簡単に選べ、個性のある色表現がしやすくなりました。
ニコンユーザーを中心に古いデジタル一眼レフカメラや「Z6」「Z7」「Z6II」「Z5」など初期のフルサイズミラーレスからの買い替えが目につきますが、小型のAPS-Cサイズのミラーレスカメラからステップアップして購入される方も増えております。お客様の層がより広がり、多くの若い方にも使っていただけているのは本当にうれしい限りです。
また、性能が高く、コストパフォーマンスに優れていることから、これまで少し上位のモデルを使用されていた方が「Z5II」へ買い替える例も見受けられます。
若年層の購入比率がどんどん高まる「Z50II」
―― 審査会では「Z5II」と双璧とも言える高い評価を集めたのが、発売前により大きな話題を集めた「Z50II」です。
堀内 「スマートフォンで撮影していて写真を撮ることにすごく興味を持った」「映像表現にとても関心がある」「カメラに興味はあるけど使いこなせるのか不安」、そうした方々に安心して使っていただける使いやすさを目指しました。
カメラデビューのお手伝いができるのはもちろんのこと、「Z9」に搭載する画像処理エンジン「EXPEED 7」が「Z50II」にも採用されています。撮る楽しみが広がる、また、個性ある表現が簡単にできるいろいろな仕掛けがあり、ご好評いただいています。
初心者から徐々にうまくなっていくと、使いたい機能が入っていなくてがっかりすることがあるのですが、「Z50II」には長く使う中で必要になる機能まで幅広く備えています。「お客様がうまくなった時にこの機能があったら絶対に喜ぶに違いない」というご愛用いただくユーザーに対する開発者の強いこだわりが込められています。
最近は特徴ある画作りの写真に憧れて、「私もこんな写真を撮ってみたい」とカメラを始められる方が増えています。イメージングレシピは、「いつもインスタで見ているクリエイターの写真が自分でも撮れる」「憧れていた表現が手にできる」と若い方を中心に大変ご満足いただいています。新しいカメラの楽しみ方ですね。
―― 交換レンズでは「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」が総合金賞に輝きました。
堀内 我々にとって24-70mm F2.8というレンズは、開発・設計者が最高の技術の粋を集めた中心的存在のレンズで、それのさらなる進化を期待していました。それだけに、初めて手にしたときの驚きは大きかったですね。
今回、AFが非常に速くなり、「ニコン史上最速かつ高精度なAF」と謳っています。本レンズ以外では超望遠の単焦点レンズにしか入っていないシルフキースウィフトボイスコイルモーター(SSVCM)をAF駆動用アクチュエーターに採用し、動きの速い被写体の決定的な瞬間を確実に捉えることができます。
しかも、持った瞬間に軽いんですよ。また、今回はズームしても鏡筒の長さが全く変わらないインターナルズーム機構を採用しており、とりわけ動画撮影では、ジンバルを使用するときにもバランスがほぼ変わらないために高い評価をいただいています。
映像制作に憧れていた若年層など潜在層の心を掴んだ「ZR」
―― 3つの総合金賞に加えてさらに、「ZR」が審査委員特別賞を受賞しました。
堀内 SNSやYouTubeで動画を制作するユーザーが広がるなか、ニコンとしてもとことん寄り添った商品を作り、提供していきたい。しかし、動画ジャンルでは「Nikon」ブランド単独では存在感を示すことが難しい状況にはありましたが、昨年4月にシネマカメラを作る米国RED社を完全子会社化し、新たにグループに迎えることができました。REDがグループ会社になって以降、さっそくその成果を提供することができました。
「ZR」はREDで採用している収録コーデック「R3D NE」が使用できます。さらにREDのハイエンドシネマカメラと同じカラースペース「REDWideGamutRGB」とガンマカーブ「Log3G10」を採用するため、REDのシネマカメラと併用しても色合わせが大変容易で、プロフェッショナルの方にとって使いやすくなっています。
15 stops以上の広いダイナミックレンジや、最近の動画では「デュアルISO」と言われますが、ベースとなるISO感度を低感度(ISO 800)と高感度(ISO 6400)で切り替え可能な機能を搭載しています。シーンに合わせて最適な設定にすることで、複雑な照明条件下でも映像の品質が維持できます。
―― 店頭でも積極的な取り組みが目につきますね。
堀内 初めてのシネマカメラとなり、仕事で日常に使われる方や一人ですべてのワークフローをこなされている映像クリエイターを想定していましたが、今までのニコンユーザーの方がどんなリアクションをしていただけるかは読みづらい部分もありました。発売後は「映像を一度やってみたかった」という若年層ユーザーが実に多くいらっしゃって、「これで映像動画にチャレンジしてみよう!」とご購入いただいております。

Z6IIIと同等の部分積層センサーを搭載していますので、ローリングシャッター歪みを抑えた撮影が可能で、静止画のカメラとしても使いやすく、静止画ユーザーの方からもご購入いただいています。見た目の印象からもスナップ撮影にちょうどいい大きさで、質感もあり、パンケーキレンズの「NIKKOR Z 26mm f/2.8」をつけるとものすごく魅力的なフォルムになります。
映像ブランド「Nikon」をZ CINEMAでアピール
―― 新しいユーザーを掘り起こす数々の強力な商品が登場しています。市場活性化へ向けた取り組みについてお聞かせください。
堀内 長年ご愛顧いただいているニコンファンの方を大事にしていくのはもちろんですが、一方で、若い方に映像の楽しみをどんどん知っていただき、新しいユーザーにカメラを使っていただく機会を増やしていきたいと考えています。
これから映像やカメラを志す方を応援する取り組みにも力を入れており、そのひとつとして、東京カメラ部様と協業した「東京カメラ部10選U-22フォトコンテスト2025」を開催しました。
ここ数年は応募数が1万点を超え、入選された方にはニコンプラザでの展示会開催の機会を提供しており、「CP+」で登壇をお願いする方もいらっしゃいます。そして、受賞をきっかけに、クリエイターとして飛躍を遂げられる方も出てきています。
一方、若い方からもデザインをご好評いただいている「Zf」では、ファッションブランド「ZOZO」のファッションコーディネートアプリ「WEAR by ZOZO」とコラボして、“自分を表現する色を装う” をテーマにしたコーディネート投稿企画を開催しています。
同時に、「Zf」の世界観を取り入れたファッションの魅力を楽しんでいただけるスペシャルコンテンツ「Zf×ZOZOファッションスタイルガイド」も公開しています。カメラは難しそうだからと敬遠されていた方に、「これ持っているとかっこよさそう」と挑戦してみたくなるカメラとしてアピールします。
2026年1月13日のご購入分までを対象にした「Nikon Creators 応援 オータムキャンペーン2025」を開催中です。今回は「NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S」など超望遠レンズを含む対象製品の購入で最大7万円のキャッシュバックが受けられるキャンペーンを実施しています。
―― それでは最後にカメラ市場の創造へ向けた意気込みをお願いします。
堀内 Z CINEMAシリーズとして発売した「ZR」が今、もっとも話題性のある商品として数多くのご販売店様で大きく取り上げていただいています。11月に幕張メッセで開催された国際放送機器展「Inter BEE」にも出展しましたが、今年は「ZR」の登場により、ここでもお立ち寄りいただけるお客様層に大きな変化が現れました。
映像制作を志している方やワンオペレーションでクリエイターとして映像を作られている方に数多く足を運んでいただき、ニコンブランドのイメージが映像の方向に確実に広がっていると強く感じました。長年ご愛顧いただいているニコンファンに加えて、REDとの協業によるZ CINEMAというコンセプトのもとに、映像ブランドとしてのニコンを広くアピールしていきます。どうぞご期待ください。
