Aura「LCC 1」はヘッドホンアンプも超一流!ハイエンドヘッドホンで徹底クオリティレビュー
両機は、同社の “linear classicsシリーズ” という新シリーズに属し、本シリーズ第1弾としてLCP1が、2026年の1月下旬には続く第2弾としてLCC1が発売される。そして筆者が注目したのは、LCC1がフルバランスのヘッドホン出力を搭載していることだ。
現在のオーディオシーンは、熱心なヘッドホンファンが本当に多い。以前は、ヘッドホンとスピーカーリスニングの交わりは希少で、“畑ちがい”のオーディオだったが、最近では、ヘッドホンリスニングからスピーカーリスニングに傾倒するものも少なくない。
LCC1とLCP1は、デザインと音質の秀逸さに加え、スピーカー/ヘッドホンの両方のリスニングを対応する、「前例」などの類に縛られない自由な発想を感じたのだ。
そこで本稿では、LCC1によるヘッドホンリスニングのクオリティ、そしてLCC1とLCP1を組み合わせたスピーカーリスニングのクオリティレビューをお届けしよう。
アルミ押し出し材によるステンレスパネル、あまりの美しさに息を飲むデザイン
Auraは、1989年、マイケル・トゥ氏によって英国の港町、ワーシングで創業したAura Design社によるオーディオメーカー。
英国には薄型のアンプやCDプレーヤーを作る会社が多かった。同社初のコンポーネントである「VA 40」は、薄型のシャーシを持ちつつも、ロンドンの著名デザインスタジオ「ペンタグラム」に属するケネス・グランジ卿がデザインを手がけた、鏡面仕上げによるクローム・フィニッシュのフロントパネルが特徴的、ボリュームとセレクターと電源スイッチのみの装飾という、見事なデザインによりヒット。
その後のAura Design社は、一度事業を終了する危機にも面したが、国内輸入代理店ユキムがブランドを継承して再出発。ユキム時代になってから発売された製品群は、現在高い評価を受けており、2023年からは国内生産に移行している。
LCC 1は、2026年の1月下旬に発売を予定している、ステレオプリアンプ兼ヘッドホンアンプのハイグレードモデル。いわばデスクトップから据え置きオーディオの中核として使える、純粋なアナログ専用設計のコントロールアンプである。
実機を目の前にして、あまりの美しさに息を呑む。Auraらしく全高が抑えられたシャーシで、外装は非常に凝った構成、フロントパネルはアルミ押し出し材を使い、その中央にはステンレス製のパネルが嵌め込まれている。
ステンレス部は、レーザーで数mmの深さに削られた窪みに精密に嵌合され、フラットな外観を演出。さらにステンレスパネルにはクロームメッキ処理と研磨が施され、光沢のある質感が高級感と存在感を与えているが、加工精度に定評ある燕三条での金属加工企業と職人の手によって仕上げられたものだ。
メイン基板にディスクリート回路構成を採用し、ヘッドホンでは高出力・高駆動力を確保
メイン基板はディスクリート構成による表面実装基板で、トランジスタ/MOSFET を多数使ったディスクリート回路と組み合わせ、さらに上部リッド(トップカバー)から吊り下げる方式を採用。同社が過去モデルで用いてきた方式で、振動や共振を避けると同時に、“開放的で素直な音調” を得る目的だという。
電源部には、スイッチング電源ではなく、トロイダル・トランスが採用されている。これはlinear classics シリーズの根幹たる思想であり、スイッチング電源によるノイズを徹底排除し、アナログ回路に適した安定で低雑音な電源供給を可能にするための選択だ。ボリューム部は、アナログ・ボリュームとしている。
入出力端子は、XLR/RCAのアナログ音声入力、MMカートリッジ対応のPHONO入力、XLR/RCAのアナログ音声出力、ヘッドホン出力は6.3 mm シングルエンドと 4.4 mm バランス出力を備えている。ヘッドホンアンプ部は、実質的に「MOSFETフルバランス回路によるヘッドホンアンプ+プリアンプ」の形をとっている。
つまり、集積回路を使わずにトランジスタ/MOSFET をいちから組み上げたディスクリート構成を採用し、高出力/高駆動力を確保。これにより、いわゆる高インピーダンスヘッドホンや平面駆動型ヘッドホンなど、駆動の難しいヘッドホンでも余裕を持ってドライブできる能力を備えているのだ。
ヘッドホンアンプの音質を徹底レビュー! 鳴らすのが難しいハイエンドヘッドホンとの組み合わせも検証
早速、LCC 1によるヘッドホンリスニングをレビューしていこう。今回の取材では、近年のハイエンドヘッドホンの標準ブランドに成長したHIFIMANから、平面磁界型とダイナミック型のハイブリッドドライバーを搭載した密閉型モデル「ISVARNA」、オーディオテクニカのフラグシップ開放型ヘッドホン「ATH-ADX7000」を組み合わせて試聴。両ヘッドホンとも各社の別売4.4mmバランスケーブルを用いて接続した。
HIFIMAN「ISVARNA」/ 弾力感と立ち上がりを両立させたキックドラムが秀逸
まず、HIFIMANのISVARNAで聴く。洋楽ポップスから、ビルボードチャートで上位のサブリナ・カーペンター「Manchild」を再生。イントロは、弾力感と立ち上がりを両立したシンセのキックドラム表現が秀逸。フルレンジ平面型ドライバーと低域用ダイナミックドライバーという2つの駆動系を搭載する「Manchild」の良い部分が表現できている。
続いて、藤井風のアルバム『Prema』から「Casket Girl」を再生してみると、ハイスピードな音調で、音離れが良い。
オーディオテクニカ「ATH-ADX7000」/ ハイスピードとS/Nの良さで音楽を魅力的に表現
続いて、オーディオテクニカ「ATH-ADX7000」を組み合わせて試聴。本モデルはインピーダンスが490Ωとかなり高く、ヘッドホンアンプにとって難関といえる存在だ。試聴前は「果たして鳴らせるのか?」と若干の心配もあった。
しかし実際に聴いてみると、サブリナ・カーペンターおよび藤井風は、開放らしいステージの広さで、現代の楽曲らしい逆位相の成分を多用したエレクトリックシンセサイザーの表現が秀逸。そしてクセの少ないATH-ADX7000のキャラクターも表現している。
もちろん、さらに超弩級の高価格帯のヘッドホンアンプのような圧倒的な支配力からは一歩引くが、それ以上にハイスピードでS/Nの良さという、本機のアドバンテージが音楽を魅力的に表現してくれる。
