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「HDMI2.2」で伝送帯域は96Gbpsに、新ケーブル規格「ULTRA96」も登場。HDMI技術の最新動向をレポート
HDMI技術のライセンス管理やマーケティングなどを行っているHDMI Licensing Administrator(HDMI LA)は、HDMI技術の最新情報や市場動向を説明する記者会見を開催。CEOのロブ・トバイアス氏が来日・登壇した。
関税問題がエレクトロニクス市場に大きく影響
市場動向として最初に取り上げられたのは、2025年の米国関税引き上げが世界のエレクトロニクス市場に与えた影響についてだ。
中国からの輸出品はじめ家電製造国に大幅な関税が課されただけでなく、課税時期や税率も不透明であったことから、各メーカーの長期的な製造計画やサプライチェーン計画が大きく乱されることとなった。
メーカーにおいては関税コストを自社で負担して利幅を削るか価格に転嫁するかの二者択一を迫られ、消費者においては買い控え、買い替えサイクルの先延ばしが見られるようになっているという。
この影響もあり、2025年から2026年にかけてのエレクトロニクス売上高は、世界全体で2 - 3%成長と非常に低調となることが予想されるとトバイアス氏。
特に2026年については「不安定な関税情勢とインフレの影響により、物価上昇が主因となる極めて緩やかな成長にとどまると予測される」と報告した。
その中で比較的高い成長率を示している分野が、eコマースでの販売や、一部のB2B販売、AIや没入型技術を組み込んだ一部の製品カテゴリー。
またディスプレイ業界では、新世代のパネル技術に向けた多額の投資が行われており、これらが市場を牽引する可能性があるとしている。
トバイアス氏は日本の家電市場に絞ったデータも報告し、「明暗が混在している」と表現。
国内の電子機器出荷台数は一部において減少が見られ、特にテレビの出荷台数は、横ばいないしごく僅かな成長にとどまり、2030年には847万台となることが予測されるという。
その一方、AI、スマートホーム技術、5G、エコ製品需要などから全体的には着実な成長を遂げる見込みだといい、2030年には市場規模が25兆円に到達すると述べた。
市場全体がこうした状況にある中、HDMI対応機器の普及状況に目を向けると、現在までに2,000社以上がHDMIのライセンスを採用し、年間で約10億台のHDMI対応機器(ケーブルは含まず)が出荷されているとトバイアス氏。
コロナ禍の影響で2023年にいったん出荷台数が落ちたものの、PCやテレビ関連製品を中心に持ち直し、コロナ禍以前の水準に復調しているとのことだ。
「HDMI2.2」は伝送帯域/画音同期をパワーアップ
トバイアス氏はHDMI技術に関する直近のトピックとして、2025年6月に正式発表した「HDMI2.2」規格をあげる。
HDMI2.2でアップデートされたのは、大きく分けて2点。ひとつは、次世代HDMI固定レートリンク(FRL)技術により、最大96Gbpsの帯域幅を実現したことだ。
HDMI2.1の48Gbpsから2倍に拡張されたことで、4K480、8K240、12K120といった高解像度/高リフレッシュレートの圧縮伝送に対応。非圧縮では10また12bitの8K60 4:4:4、4K240 4:4:4の伝送を実現した。

これほどの高スペックをサポートする意義についてトバイアス氏は、「今後の技術革新を見越して、前もってサポートしておくことこそが重要」と考えを述べる。
実際、HDMI機器普及の原動力となっているゲーミング分野が高解像度/高リフレッシュレートのハイスペック追求をリードしているほか、テレビ分野でも4K240対応の動きがあるという。
そうした今後の新製品の受け皿として、HDMI規格が前もってスペックアップを済ませておくべき、ということだ。
HDMI2.2のもうひとつのアップデートが、「Latency Indication Protocol(LIP、リップ)」という技術のサポートだ。
これは映像と音声のズレを防ぐ、いわゆるリップシンクに関する技術。特にAVアンプやサウンドバー、ゲーム機など複数の機器が組み合わさった環境で、映像/音声を効果的に同期することが可能だという。
LIPが効果を発揮するためには、接続する機器そのものがLIPに対応している必要があるが、既存の機器もソフトウェア・アップデートにて後から対応させることができるという。
また96Gbpsの伝送幅はなくともLIPだけをサポートすることも可能だそうで、トバイアス氏は今年6月に台湾で開催される「COMPUTEX TAIPEI 2026」にてLIP対応製品をお披露目するメーカーが居るかもしれない、と期待を寄せていた。
上述の新技術を含め、HDMI2.2の全機能をカバーする新しいHDMIケーブルの認証規格も策定された。それが「ULTRA96」だ。
現在、認証テストのプログラムを策定する最終段階に入っており、策定されれば製品認証の手続きが開始。認証を受けたケーブルは、専用のラベルを貼付されて発売されることになる。早ければ、2026年第1四半期にもULTRA96 HDMIケーブルが市場に登場する見込みだそうだ。
また、ULTRA96という名称は、最大96Gbpsをサポートすることを明示する手段としてHDMIポートや説明書、パッケージなどへの記載が認められており、「メーカー各社に積極的な使用を推奨する」とのこと。
HDMI技術の革新とともに、HDMIブランドの保護にも力を注いでいるとトバイアス氏。「HDMI」という名称の使い方や、HDMI対応を掲げる製品がきちんと規格に準拠しているのかを厳しく監視することで、HDMI技術を利用するメーカーの企業価値も、製品を購入する消費者からの信頼も支えていきたいと述べた。
市場を大きく動かすのは「AI」と「新型パネル」
今後のHDMI技術や関連製品の展望についてトバイアス氏は、やはり「AI」がひとつのキーワードになると語る。
具体例をあげれば、ゲーミング分野においてはAIを活用してアップスケーリング/フレームレート向上を図る「ディープラーニングスーパーサンプリング(DLSS)」が登場し、最新の高性能ハードウェアを用意せずとも映像体験を高められるようになっている。
また、AIによるゲームの難易度や進行内容の自動調整、プレーヤーの上達のためのコーチングなども現実のものになりつつある。
テレビ/ディスプレイにおいても、AIによる高画質化処理や、ユーザーの好みを学習した最適化、コンテンツのレコメンド機能などを搭載した製品が市場に投入されている。
こうしたAI技術をHDMI技術に直接取り入れたり、機能として規定することはないが、上述のように前もってHDMI規格のスペックアップを図っておくことで、今後の技術革新にもスムーズに対応していくとしている。
また、AIのほかにトバイアス氏が注目するのが、パネル技術の進歩だ。年始に米ラスベガスで開催された「CES 2026」には、ミニLED/マイクロLEDを中心に様々な先進技術を採用したテレビが各社からお披露目された。
こうした新技術を採用した製品が市場に投入されれば、それ自体の画質に注目が集まるのはもちろんだが、同時に既存の有機ELテレビや量子ドット液晶テレビの価格が下がることも想像できる。
こうした動きが2026年の市場を牽引していくことになるのではないか、とトバイアス氏はまとめ、HDMI技術においても96Gbps広帯域の活用や、伝送安定性の強化、HDMI認証プログラムの改善などに取り組み、将来的な新しいテクノロジーをサポートすると締めくくった。






















