公開日 2026/07/14 08:21

「日本市場はTCLブランドの試金石」。幹部に聞く今後の国内テレビ戦略、ソニー合弁会社の進捗状況

ソニーとの合弁も「極めて順調」

SQD-Mini LEDを旗印に、日本のテレビ市場で存在感を急速に高めているTCL。同社は日本をどんな市場と見ていて、これから何を仕掛けようとしているのか。そしてもうひとつ、日本のAVファンが気になるのが、ソニーとの合弁会社の行方だろう。

中国・深圳のTCL本社で行われた日本メディア向けインタビューで、TCL実業の幹部に話を聞くことができた。ちなみにTCL実業は、TCLグループの中で、テレビをはじめとする最終製品の企画・販売を担当している会社だ。

インタビューに応じてくれたのは、APBGマーケティング本部総経理の張国栄氏と、スマートスクリーン関連事業部副総経理 兼 グローバルプロダクトオペレーションセンター総経理の左波氏だ。

右:TCL実業 APBGマーケティング本部総経理の張国栄氏 左:TCL実業 スマートスクリーン関連事業部副総経理 兼 グローバルプロダクトオペレーションセンター総経理の左波氏

約2時間半におよんだインタビューから、TCLのテレビ事業と日本での展開、そしてソニーとの合弁を中心に、発言を再構成してお届けする。

なお本稿のほかにも、TCL CSOTの紹介やTCLの液晶技術者のマニアックな解説記事など、いくつかの記事を掲載していく。TCLの日本戦略などのディープな情報をたっぷりと紹介していこう。

日本は「技術の最前線であり、ブランドの試金石」

―― TCLのグローバル戦略の中で、日本市場はどのような位置づけなのでしょうか。

張国栄氏: まず日本は、世界的に見ても規模の大きな先進国市場であり、アジア太平洋地域では最大の先進国市場です。そして、この数十年にわたって日本企業はコンシューマーエレクトロニクスの分野で世界をリードし続けてきました。だから日本市場は、電子機器・電子技術に対する要求が非常に高いですね。

私たちは日本を、技術の要求水準が最も高い“技術の最前線”の市場と見なしています。そういう市場で競争に参加し、消費者の要求にしっかり応えていくことは、企業の技術進化にとって非常に重要なのです。

もうひとつ、日本は私たちにとって、ブランドの真価が試される“試金石”の市場でもあります。ここで認められることが、ブランドイメージを高めるうえで欠かせないのです。市場規模だけでなく、周辺地域への影響力があるからです。

アジア太平洋全体を見渡すと、日本ブランドと日本製品の影響力は、東南アジアをはじめとする周辺市場で非常に大きい。「メイドインジャパン」を信頼している人は今も多いのです。そういう場所でブランドを確立することには、市場そのものを超えた意味があります。

さらに日本は、TCLにとって単体製品の市場ではなく「モデル市場」でもあります。テレビだけでなく、タブレットやサウンドバーなどホームエンタテインメント全体に注力し、多カテゴリーの家電を連携させて展開していく。このポジショニングを中心に、日本でより良い成績を挙げることを期待しています。

日本市場の重要性について語る張国栄氏 

シェア拡大の鍵は「日本専用ハイエンド」「ブランドへの信頼」「安心感」

―― 成熟した日本市場でポジションを高めるために、何が最も重要だと考えていますか。

張国栄氏: まずは日本市場でシェアを拡大すること。そのためには専用性の高いハイエンド製品によって、消費者から中長期的な信頼を得ることが最も重要です。具体的に重要なのは3点あります。

1つ目は、日本の生活シーンに適したハイエンド技術製品によって、代替のきかない製品力を構築することです。日本の消費者はテレビを選ぶとき、日本の住環境、インテリアとの調和、耐久性なども重視しています。私たちの製品開発も、そうした嗜好に寄り添っていきます。

2つ目は、日本市場でのブランド構築です。ブランドの本質は、日本市場との感情的なつながりであり、生活の文脈を理解することです。住環境やインテリア、専門的なオーディオビジュアルの評論家との連携も含めてローカライズを進め、ハイエンドのユーザーを中心に「専門性の高い高級AVブランド」というブランド認知を確立したいです。

3つ目は、安心感を高めることです。日本の消費者は安定、安心、保証を非常に重視します。だからこそ私たちは、今年のMini LEDテレビから、3年保証の提供も始めました。ブランドへの信頼を築くのは持続的なプロセスだと感じています。これらに向けて努力を続けていきます。

日本市場の「特殊性」を、TCLはこう見ている

―― テレビに求める価値という点で、日本市場にはどんな特徴があると見ていますか。

左波氏:私は日本に何度も行ったことがありますが、それでも日本の消費者への理解とコミュニケーションはさらに深める必要があると思っています。その上で、他の地域と異なる点を挙げましょう。

第一に、日本の消費者は画質に対して非常に高い要求を持っています。考えてみれば、いま私たちが使っている映像技術の多くは、日本から生まれたものでした。だからこそテレビに対しても、再現性や高画質への要求が高いのです。

しかも日本は、高画質を維持するための放送方式が特別で、エンコードやデコードのフォーマットが他の地域と違います。日本で販売する製品には、日本特有の方式に合わせた表示の最適化が必要になります。

第二に、住環境が他の国と違います。東京で見た部屋は比較的コンパクトで、地方は相対的に広い。また日本の多くの建物は、材料において耐震性が強調され、自然由来の環境に優しい素材が好まれます。私たちの製品も、そうした住まいに調和するものとして開発を続けたい。

第三に、オフライン店舗での見せ方です。広告や店頭表現の方式が、他の国と全然違うのです。こうした「違う市場」に対して、製品も、マーケティングもプロモーションも、他の国とまったく変えて運用しています。テレビで言えば、日本にはSQD-Mini LEDの凄さをしっかり表現できる高画質モデルを厚めに投入しています。

日本には何度も行ったことがあると左氏。日本のアニメを見て育ったそうだ

―― 一方で、日本市場での課題は。

張国栄氏: 一番大きなチャレンジは、やはり日本でブランドと消費者の信頼関係を築くことです。これは長期的で、最も難しい課題だと思います。次に、ローカルのエコシステムの壁があります。日本では大手販売店とブランドが強く結びついていて、そこには垣根が存在します。新規参入者が割って入るには時間が必要です。そして3つ目は組織の構築です。日本では例えば人の採用のサイクルが他の国よりずっと時間がかかりますし、中国企業と日本の文化をどう本当の意味で融合させていくかというチャレンジもあります。

「安価な大画面」からの脱却。QDからSQDへ、積み重ねた技術史

―― これまでTCLは低価格帯が中心のブランドと見られてきましたが、Mini LED大画面の展開でブランドイメージが少しずつ変わってきたように思います。現在のポジショニングをどう考えていますか。

左波氏:TCLの核心は、単なる低価格ではなく、体験価値を提供していくことです。同じ価格帯であれば、より優れた製品体験を届ける。よりよいスマートライフをもたらすことが重要だと考えています。

テレビについては、画質を引き続き向上させ、アップグレードを継続的に行っていきます。私たちは過去20年間、液晶パネルを作り続けてきました。その上に量子ドット(QD)技術を導入し、2017年には初代のMini LEDテレビを投入しました。バックライトの制御を改善し、明るさを高める効果もある技術です。

重要なのは、私たちのMini LEDが、私たちのQD技術と組み合わせられた技術だということです。一世代ずつ絶えず蓄積して発展させていく。そして2025年、SQDを発売しました。カラー表現を向上させ、BT.2020もしっかりカバーしました。

こうして過去の技術から画質をどんどん高めてきた結果、明暗の制御表現は有機ELに非常に近づきました。その上で、明るさも、色も、耐用年数も、コストパフォーマンスも有機ELを上回っています。加えてデザインや工芸、素材にもこだわった製品を提供しています。

TCLのSQL-Mini LEDテレビ。その出来映えに、両氏は強い自信を見せた

なぜMini LEDなのか。画面サイズごとの「適材適所」論

―― TCLはMini LEDをプレミアムテレビの中核技術としてグローバルに展開しています。なぜMini LEDを重視するのですか。

左波氏:私の個人的な考えから話させてください。皆さんはいま、サイズの異なるさまざまなスクリーンを持っていますよね。実は、サイズごとに最適なディスプレイ技術は異なるのです。

たとえば120インチ以上の大型サイズ。これを今までの液晶で満たすことは難しい。大型ガラスは割れやすく、搬入も大変です。だからこの領域は、画素ひとつひとつが独立して発光するマイクロLEDが主役になっていくでしょう。当社には163インチのMicroLEDもあります。こういう大画面はホームシアター、会議室、ロビーなどで使われます。

インタビューが行われた会議室には、実際に同社の168インチ Micro LEDテレビが置かれ、圧倒的な高輝度と大画面を両立していた。なおこちらはJD Mallなどで実際に販売されていた。価格は約2,000万円だ

50インチから120インチは家庭用です。このサイズのテレビは家の中に据え置いて長時間観るもので、より良い画質と音質が求められます。ここは液晶が得意とする領域で、コストパフォーマンスも高い。

そして20インチから50インチはモニターやPCなど個人で使うサイズで、将来的には液晶とMini LEDの組み合わせ、そして有機ELも考えられます。

20インチ以下のモバイルデバイス、つまりスマホやタブレットは、文字や情報の表示が中心で、省電力と軽さが必要です。明るさはあまり高くなくてよく、近距離で見る。比較的、有機ELに向いています。

つまりディスプレイには大事な技術が3つあるのです。マイクロLEDは超大画面のメイン表示技術。有機ELはモバイル向け。そしてテレビの主戦場である液晶を進化させるのが、Mini LEDなのです。

―― その上で、Mini LEDは何を解決する技術なのでしょうか。

左波氏:液晶自体は発光しません。光源が必要です。そしてこの構造には必ず問題が内在します。液晶パネルは光を完全には遮れず、光漏れが起きる。画面の明るいところは明るくできても、暗いところが十分黒くならないのです。

私たちは2012〜13年頃からMini LEDバックライトの研究を始めました。バックライトを細かく分割し、光を必要としているところにはしっかり出して、必要のないところは消す。この十数年の研究で、いまやバックライトは画面の画素領域と精密に同期できるようになり、100万対1レベルのコントラスト比を実現しています。

さらにエリア分割したことで、明るい部分に電源の供給を集中でき、それによって明るさも高められる。ゾーン制御によって明るさとコントラストを高める――これがMini LEDの本質です。現在の最新製品ではゾーン数が1万以上に達し、光の制御の精密さが大きく向上しています。

TCL CSOTのショールームには、世界最大となる、115インチのQD Mini LEDテレビも展示されていた

―― バックライトにRGBのLEDを使う方式もあります。

左波氏:色を良くするアプローチは2つあります。ひとつは量子ドットです。量子材料で純度の高い赤・緑・青を作る技術で、ノーベル賞を受賞した技術ですね。もうひとつがバックライトに赤・緑・青のLEDを直接並べるRGBバックライト技術です。

RGBと量子ドットの最大の違いは、RGBがそれぞれの色を発光させるために3つのライトを必要とすることです。同じ発光エリアに3灯が要る。つまり同じランプ数なら、RGB方式のゾーン数は3分の1になってしまいます。ゾーン数が減れば光制御の精度が下がり、ブルーミング(光漏れによるにじみ)が起きやすくなる。さらに、赤・緑・青のLEDは経年劣化の速度がそれぞれ違うため、使い込むうちに色バランスがずれる問題もあります。

SQDはこれに対する私たちの答えです。量子ドット層の材料を改良してバックライトの色純度を大幅に高め、さらにTCL CSOTと共同でカラーフィルターも新開発しました。透過率と純度を30%改善しています。

クルマにたとえると、バックライトがエンジン、量子ドット層がトランスミッション、パネルがシャーシ。全体をチューニングして初めて、良く走るクルマになるのです。

「大画面はもう高くない」。グローバル戦略と日本市場のこれから

―― グローバル戦略の中で、日本向けの製品はどう作られていくのでしょうか。X11LとC8Lという2つのハイエンド機の位置づけも教えてください。

左波氏:TCLの戦略は「グローバル一体化」と「地域ローカライゼーション」の組み合わせです。

テレビ自体は大型化がトレンドで、良い画質、良い音響、AIによるスマートな体験。ここはグローバルで統一戦略を取ります。日本は画質への追求が他の国より強い市場ですから、この方向性とよく合います。

生産面では、TCLは世界に4つの製造拠点とサテライト工場を構え、傘下には40を超える現地法人があります。日本では物流やチャネル、マーケティングを日本法人が担い、日本の放送方式・コーデック対応や使用習慣といった固有の要素を組み合わせて、日本市場向けの製品を作っていきます。

サイズの大型化について言えば、日本は他の国に比べてまだスローペースですね。その理由の一つは住環境でしょう。しかし、意識の面は変えられるのではないかと思っています。私たちは日本で中小型サイズも展開する一方、オフラインの売場には大画面を置いて、体験とインパクトを伝えていきます。大画面がより良い視覚体験をもたらすことを、ぜひ知ってほしいのです。

それに、技術と生産能力の向上によって、大画面テレビは実はもう高くありません。これはサプライチェーンの効率化がもたらした良い結果です。X11LやC8Lのような高画質・高付加価値の製品も、日本の消費者市場全体で見れば手が届きやすい価格だと思います。良い技術の製品を、価格を吊り上げて利益を得るためではなく、より多くの消費者に体験してもらうために届けたいのです。

―― 一方、中国国内では節約志向が高まり、若い世代のテレビ離れも指摘されています。

左波氏:中国ではこの5年でテレビの主流サイズが55型から75型に切り替わり、いまは75型がシェア1位、85型が2位です。販売台数は約4,000万台から約3,000万台へと25%近く減りましたが、市場の売上額はほぼ維持されています。そして55型から75型に置き換えたユーザーは、テレビの視聴時間が30%以上伸びました。質の高い映像は大画面で観るのが一番良い体験だと、消費者自身が感じているのです。

ちなみに、海外市場ではコンテンツが豊富なこともあって特大サイズの需要はさらに伸びていて、75型以上の販売台数は全世界で毎年50%以上の成長を実現しています。

AIはテレビをどう変えるか

インタビューでは、AI活用に関する質問も出た。左波氏はテレビ製品におけるAIの活用を、大きく5つの領域に整理して説明した。

左波氏:テレビを例にとると、AIの応用は5つの面で製品を高めています。1つ目はAIによる画質の向上です。画面の処理には既に大量のAIアルゴリズムを使っており、輝度やコントラスト、光と色の制御といった応用で、画質を継続的に高めています。2つ目は音の処理です。AIを使った空間サウンドには特に力を入れており、映像と連動する音響アルゴリズムを磨いています。

3つ目はテレビとの対話です。従来はリモコンで操作していたものを、いまは音声で、テレビと直接会話しながらより便利に操作できます。4つ目はAIによる使い勝手の拡張です。ユーザーのふだんの視聴習慣をテレビが学び、番組を自動でおすすめする。さらにスポーツ観戦では解説の表示や、異なる言語へのリアルタイム変換も可能になっていきます。英語の番組を、日本のユーザー向けに日本語の字幕としてリアルタイムに変換して表示する、といったことです。

5つ目はコンテンツの生成です。米国にある当社の研究開発拠点では、AIを使った短編映像の制作を行い、自社のチャンネルに載せています。またテレビ上でユーザー自身がAIで個性的な壁紙や動く映像を作って楽しむ、といった使い方もできます。

コモディティ化への答えは「製品」。今後の課題はマーケティング

―― テレビはコモディティ化が進んでおり、価格競争は今後も厳しくなることが予想されます。TCLはどこを重視して戦いますか。

左波氏:TCLは常に、製品を基盤とする会社です。ユーザーに提供する最も核心的な価値は、良い製品を通じて良い体験をもたらすこと。そのために研究開発と技術開発に投資を続け、生産・製造の面にもより多くのリソースを投じて、良い製品を設計し作っていきます。

一方で、マーケティングについては、これは個人的な考えですが、正直、まだまだ弱いと思っています。グローバル企業の水準に達しているとは言えず、大きな改善の余地があります。

SQDの良さをどう伝える? 「体験軸」と山崎賢人氏の起用

―― SQDの素性の良さは、前日のデモ(別途記事で紹介予定)でよくわかりました。ただマーケティングを考えたとき、RGBバックライトは見た目にもわかりやすい。今後、SQDの良さをどう伝えていきますか。

左波氏:確かに、バックライトの点灯だけを見ればRGBは派手に見えます。人目を引くかもしれません。しかし、それは単なるバックライトの部分の話です。実際に重要なのは画面の美しさであり、エンジンの良さです。

RGBはバックライトを変えただけ。SQDはバックライト、量子ドット、カラーフィルター、アルゴリズムまで完全に変えた、すべてを統合したソリューションです。機器全体として見れば、同じ色域カバーでもSQDの方がより優れた輝度と光制御を実現でき、長期的に使用したときの安定性も高いのです。

その上で、業界の一員として、さまざまな技術が百花繚乱に競走することは歓迎しますし、期待もしています。ただ、ある技術が持続的かどうかは、より多くの人に利益と価値をもたらせるかどうかで決まる。それが歴史の判断基準です。

過去には3Dテレビも曲面テレビもありましたが、消えました。RGBの未来はどうか? 同じように消えるのか? …これについては、時間が経ってから見てみましょう。

TCLもRGB Mini LEDの技術と製品を持っています。その上で、より自信があり、生命力があると考えているのがSQDです。エンドユーザーの価値を一番重視して、製品と技術を選んでいきます。

なお、このSQDの価値を日本でどう伝えるかについては、同席したTCLジャパンの久保田篤氏が日本側の戦略を補足してくれた。

久保田氏:ローカライズにあたっては、社内で相当議論しました。RGB方式の発光の仕組みや色純度、発光効率といった難しい話から入っていくと、お客様は離れていってしまいます。

はっきり言えば、「RGB-Mini LEDだから買う」というお客様はまずいません。だから我々はSQDを体験軸に持っていきます。映画が感動する。スポーツがリアル。それから、日本には「推し」の文化がありますよね。推しが美しく見えます。家族との時間が豊かになります。GeminiによるハンズフリーもC7、C8、X11でやっていきますから、そういうところも大切にしたいと思います。

今回、SQD-Mini LEDの発売にあたって山崎賢人さんをアンバサダーに起用したのも、この軸です。 山崎さんはコンテンツの表現者であり、映画やドラマの世界での表現力が非常に高い。そこからユーザーに入ってきてもらう。BT.2020を100%達成した画面でコンテンツがどう見えるか、という話から入っていくわけです。RGBへの対抗軸は、今回、ある程度示せていると思います。

ソニーとの合弁が27年開始。「市場には独立したブランドが並ぶ」

最後に、ソニーとの合弁会社の件だ。ソニーのテレビ「ブラビア」などホームエンタテインメント事業を承継する新会社の設立が発表されて以来、日本のAVファンの間では期待と不安が入り混じった議論が続いている。

TCLとソニーは、2026年に戦略的提携の確定契約を締結した。新会社「BRAVIA株式会社」はTCL 51%、ソニー49%の出資比率で、ソニーの一般消費者向けテレビ「ブラビア」のほか。業務用ディスプレイ、プロジェクター、ホームオーディオ製品などの開発・製造・販売を担い、2027年4月の事業開始を予定している。製品には引き続き「ソニー」「ブラビア」の名称が使われる。

両氏はソニーとの合弁会社についても、様々な準備が順調に進んでいると語った

―― ソニーとの合弁会社に、どのような期待をしていますか?

左波氏:関心を寄せていただき、ありがとうございます。合弁は現在進行中で、業務は正常に、非常に効率よく進んでいます。私たちは、双方の強みがそれぞれ発揮されることを信じています。

将来の市場では、独立したブランドを見ていただくことになります。ソニーとTCL、それぞれが独立して発展していく。その上で、TCLの優れた映像技術をソニーも使うことができ、それぞれの製品に最適化できます。もちろんTCL側も、日本の消費者のニーズをより深く理解できるようになります。

―― ブランドを別々に運営することはわかりました。では技術はどう分けていくのでしょうか。たとえばソニーは現在、RGB方式のMini LEDを、TCL CSOTと共同開発しています。一方TCLは、RGBと量子ドットの両方を持っていますね。今後どちらかの技術に寄せていくのか、それぞれ独立して開発していくのか。ブランディングやマーケティングのシナジーも含め、いま決まっていることを教えてください。

張国栄氏:合弁会社に関わる情報の共有は、すべて公式なルートで行っていきます。香港上場のTCL電子(1070)の公告でお伝えしていきますので、そちらにご注目ください。

その上で言えるのは、TCLとソニーの合弁会社の構築は緊密に、かつ順調に進捗しているということです。

現時点で明確なのは、ソニーとの合弁会社とTCLは独立して運営されるということです。マーケティングなども独立して運営していきます。ソニーブランドは合弁会社で、TCLブランドは自社(現在のTCLの日本法人)で、それぞれ展開します。製品もブランドも、それぞれの独立性を保ちます。より詳しい内容は、今後の公告や開示資料にご注目ください。

さらに張氏は、この合弁を日本市場における「大きな機会」のひとつと位置づけたうえで、その座組み自体に踏み込んだ説明をしてくれた。

張国栄氏: 従来、日本と中国の企業の提携では、ブランドライセンスが主流でした。しかし私たちが今回採用したスキームは、ライセンスではなく、合弁(ジョイントベンチャー)です。

合弁にはブランドライセンスより、多くの良いところがあります。ライセンスの場合、取得したブランドに高いプレミアム価格を設定し、数年でそのブランドが持っていたプレミアム価値を回収し尽くしてしまう、ということが起こりがちです。

私たちが目指すのは、ソニーと友好的なブランドマトリクス(ブランドの組み合わせ)を実現するための発展のやり方です。ECの成長やオフライン流通の再編が進む日本市場で多くの機会を作っていくうえでも、この合弁は活用できると考えています。

「技術の最前線・ブランドの試金石」としての日本への注力、サイズごとの適材適所を踏まえたMini LEDへの確信、3年保証や体験軸マーケティングといった日本仕様の攻め方、そして山阜ォ人氏のような有名タレントの起用。TCLの日本戦略は、「安価な大画面」ブランドから「専門性の高い高級AVブランド」への転身をはっきり狙う段階に入った。

そして、その先に控えるソニーとの合弁会社の始動が、日本のテレビ市場の風景をどう変えていくのか。引き続き注視していきたい。

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