公開日 2022/12/22 06:30
ラックスマン 末吉達哉氏:アナログのモノづくりと協業での経験を重ね、さらなる進化へ
オーディオ銘機賞2023 受賞インタビュー
オーディオ銘機賞2023
受賞インタビュー:ラックスマン
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる“真の銘機”を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」において、ラックスマンのアナログプレーヤー最上位モデル、PD-191Aが金賞を獲得した。さまざまな困難を乗り越えた開発での大きな手応え、これからの意気込みを、同社社長の末吉氏が語る。

ラックスマン株式会社 代表取締役社長 末吉達哉氏
インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■アナログプレーヤー最上位モデル「PD-191A」、SAECと開発したトーンアームで新次元を切り開く

ーー オーディオ銘機賞2023において、御社のアナログプレーヤーPD-191Aが金賞を受賞されました。まことにおめでとうございます。ご受賞に際しての思いをお聞かせいただけますか。
末吉 今回、ラックスマンの最高峰と位置付けるアナログプレーヤーが金賞をいただきまして、非常に嬉しく思っております。アナログプレーヤーにおいてはトーンアームが入手できなくなるなど、困難なこともありましたが、サエクコマースさんと協業し、新たにすぐれたトーンアームを開発することもできました。携わってくださったすべての皆様に感謝しております。
ーー PD-191Aの開発では、さまざまなことがあったかと思いますがいかがでしょうか。
末吉 ラックスマンでは従来から、PD-171AとアームレスのPD-171AL、そしてPD-151の3モデル体制でアナログプレーヤーを展開し、アナログブームの一旦を担っておりました。2019年の初頭頃からPD-171Aの改良モデルの企画が進行し、その中でもっと上を狙いたい思いが生まれ、最上位モデルの開発が進行しておりました。
しかし2020年4月に、我々にトーンアームを供給してくださっていた市川宝石さんが、オーディオ事業の休業を発表されました。トーンアーム供給の見通しがつかなくなったので、残念ながらPD-171Aは生産を終了することとし、新たなトーンアームを入手する手立てを講じることとしました。同時に、進めていた新製品の計画も、進行を早めることにしたのです。
トーンアームに関しては、海外も含めて数社様からお声もかけていただきましたが、採用には至りませんでした。ある時、代理店さんの仲立ちがあって、サエクコマースさんにお話をさせていただくことができました。普及価格のプレーヤーに搭載する既存のトーンアームが非常にいい感触だったので、それをさらに改良して、まずは新製品のPD-151 MARKIIに採用することとなりました。
そういった経緯もあって、PD-191Aではこれとは別に、サエクコマースさんと我々の協業でまったく新しいトーンアームを開発することにしたのです。サエクコマースさんには、WE-4700というダブルナイフエッジ方式のすぐれたトーンアームがありますが、これを我々の製品に採用するにはコストの点で難しい。しかし先方でも、さらにコストダウンしたものを作りたいというご意向があり、我々の希望と合致したのです。
こうしてつくりあげたのが、シングルナイフエッジ方式のトーンアームLTA-710です。開発にあたって我々がもっとも重要視したのは、初動感度の高さです。また、音の方向性やニュアンスといった感性の部分でも先方の共感を得ることができ、うまく噛み合って、自然で伸びやかな表現力を獲得することができました。
ーー PD-191Aでは構造の進化も重要な要素ですね。
末吉 アームの初動感度が高くなりましたので、それに応じて構造も全て見直しました。従来はトップパネルに装着していた振動源はすべてボトムプレートに付け、土台をしっかりとさせ、振動対策を徹底しました。非常に手間がかかりますが、これで聴感上のSNは非常に向上しています。
ただこうしたことで、製造に費やす時間が従来の2倍、3倍になるんですね。音質向上と生産性向上の両立に取り組んでおります。難しいバランスですが、工場の方々の努力でなんとかやっております。
■アナログモデルの開発で蓄積した経験が、これからの新たな製品の開発に活かされていく
ーー 協業も含め、いろいろなご経験がよい商品に結実していったわけですね。
末吉 長い歴史の中で、様々な会社様とご縁をいただきましたが、サエクコマースさんとの協業は非常にスムーズにいったかと思われます。こちらの希望もよく受け入れてくださいましたし、先方のご希望もお聞きして、おかげさまで双方が非常によい関係のもとで開発を進めることができました。この出会いは本当によいご縁と思い、感謝しております。
昨年オーディオ銘機賞で銀賞を受賞いたしましたカートリッジのLMC-5を手がけた際にも、東京インターナショナルオーディオショウでの出会いから協業が実現し、製品を生み出すことができたのです。その経験も、今回に生きていると思いますね。
ものづくりにおいては、これまでももちろん、お客様のご意見や取引先様のご意見を頂戴しながらやってきました。そうしたさまざまな経験は、製品にノウハウとして組み込まれています。ご縁は大切にしなければならないとあらためて強く感じました。
我々自身もPD-191Aの開発を通じて、今までとは違う視点でものを見られるようになったと思います。当社はどちらかというと、ここ20年から30年は、デジタル製品とアンプ製品のものづくりに注力してきましたし、開発の立場からすると、アナログよりもデジタルの方がSNのよさやノイズのなさといった点で有利という考えがあったと思います。
しかしアナログプレーヤーのPD-191Aでここまでの表現力を得られたことで、アナログのものづくりのノウハウがさらに蓄積できました。今開発の担当者は、アナログに対して大変力を入れています。これが次の製品にもどんどん活かされていくことになりますね。
ーー これまでも困難な状況が続いてこられたと思いますが、商品の供給の部分について昨今の状況はいかがでしょうか。
末吉 部品やICの調達では、納期の見通しができるようになったものもありますが、いまだに見通しの悪いものもあり、昨今の状況は総じてこれまでとあまり大きくは変わりません。供給についてご迷惑をおかけしている部分は、お客様とお取引先様になんとかご理解をいただいているところです。
ーー 一方でイベントなどが復活し、お客様が商品に触れる機会は増えましたね。
末吉 先日は東京インターナショナルオーディオショウを開催することができましたし、事前予約制で多くの方にご来場いただきました。お客様の熱いご期待に接することができ、ありがたいことと思っております。
また円安の影響もあるかもしれませんが、日本の製品を海外で販売したいという代理店の方も多くご来場され、いいアピールの場になったかと思います。海外のお客様から見れば、日本のグレードの高い製品を入手しやすくなっている環境で、我々が活躍できる機会は広がっていると思います。
リアルイベントでお客様に実際にご体験いただくのがプロモーションの基本だと思います。しかしそれを補間する意味でも、ネットも活用していかなければと考えます。リアルとネットの両輪で、お客様に提案して参ります。
ーー これからの展開も楽しみですね。東京インターナショナルオーディオショウでは、ネットワークトランスポートも出展されていました。
末吉 来年の目玉としては、フラグシッププリアンプの「C-10X」を筆頭に挙げたいと思います。パワーアンプの「M-10X」の対をなすもので、春頃に登場する予定です。
ネットワークトランスポート「NT-07」は、想定以上に注目していただきました。音楽を聴くためのメディアはいろいろありますので、アナログもデジタルも、ストリーミングも含めて、すべてのメディアに対応できるようにするのが、我々の使命だと考えております。ぜひご期待ください。
ーー いろいろな楽しみが広がりますね。有難うございました。
受賞インタビュー:ラックスマン
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる“真の銘機”を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」において、ラックスマンのアナログプレーヤー最上位モデル、PD-191Aが金賞を獲得した。さまざまな困難を乗り越えた開発での大きな手応え、これからの意気込みを、同社社長の末吉氏が語る。

インタビュアー 徳田ゆかり(ファイルウェブビジネス担当)
■アナログプレーヤー最上位モデル「PD-191A」、SAECと開発したトーンアームで新次元を切り開く

ーー オーディオ銘機賞2023において、御社のアナログプレーヤーPD-191Aが金賞を受賞されました。まことにおめでとうございます。ご受賞に際しての思いをお聞かせいただけますか。
末吉 今回、ラックスマンの最高峰と位置付けるアナログプレーヤーが金賞をいただきまして、非常に嬉しく思っております。アナログプレーヤーにおいてはトーンアームが入手できなくなるなど、困難なこともありましたが、サエクコマースさんと協業し、新たにすぐれたトーンアームを開発することもできました。携わってくださったすべての皆様に感謝しております。
ーー PD-191Aの開発では、さまざまなことがあったかと思いますがいかがでしょうか。
末吉 ラックスマンでは従来から、PD-171AとアームレスのPD-171AL、そしてPD-151の3モデル体制でアナログプレーヤーを展開し、アナログブームの一旦を担っておりました。2019年の初頭頃からPD-171Aの改良モデルの企画が進行し、その中でもっと上を狙いたい思いが生まれ、最上位モデルの開発が進行しておりました。
しかし2020年4月に、我々にトーンアームを供給してくださっていた市川宝石さんが、オーディオ事業の休業を発表されました。トーンアーム供給の見通しがつかなくなったので、残念ながらPD-171Aは生産を終了することとし、新たなトーンアームを入手する手立てを講じることとしました。同時に、進めていた新製品の計画も、進行を早めることにしたのです。
トーンアームに関しては、海外も含めて数社様からお声もかけていただきましたが、採用には至りませんでした。ある時、代理店さんの仲立ちがあって、サエクコマースさんにお話をさせていただくことができました。普及価格のプレーヤーに搭載する既存のトーンアームが非常にいい感触だったので、それをさらに改良して、まずは新製品のPD-151 MARKIIに採用することとなりました。
そういった経緯もあって、PD-191Aではこれとは別に、サエクコマースさんと我々の協業でまったく新しいトーンアームを開発することにしたのです。サエクコマースさんには、WE-4700というダブルナイフエッジ方式のすぐれたトーンアームがありますが、これを我々の製品に採用するにはコストの点で難しい。しかし先方でも、さらにコストダウンしたものを作りたいというご意向があり、我々の希望と合致したのです。
こうしてつくりあげたのが、シングルナイフエッジ方式のトーンアームLTA-710です。開発にあたって我々がもっとも重要視したのは、初動感度の高さです。また、音の方向性やニュアンスといった感性の部分でも先方の共感を得ることができ、うまく噛み合って、自然で伸びやかな表現力を獲得することができました。
ーー PD-191Aでは構造の進化も重要な要素ですね。
末吉 アームの初動感度が高くなりましたので、それに応じて構造も全て見直しました。従来はトップパネルに装着していた振動源はすべてボトムプレートに付け、土台をしっかりとさせ、振動対策を徹底しました。非常に手間がかかりますが、これで聴感上のSNは非常に向上しています。
ただこうしたことで、製造に費やす時間が従来の2倍、3倍になるんですね。音質向上と生産性向上の両立に取り組んでおります。難しいバランスですが、工場の方々の努力でなんとかやっております。
■アナログモデルの開発で蓄積した経験が、これからの新たな製品の開発に活かされていく
ーー 協業も含め、いろいろなご経験がよい商品に結実していったわけですね。
末吉 長い歴史の中で、様々な会社様とご縁をいただきましたが、サエクコマースさんとの協業は非常にスムーズにいったかと思われます。こちらの希望もよく受け入れてくださいましたし、先方のご希望もお聞きして、おかげさまで双方が非常によい関係のもとで開発を進めることができました。この出会いは本当によいご縁と思い、感謝しております。
昨年オーディオ銘機賞で銀賞を受賞いたしましたカートリッジのLMC-5を手がけた際にも、東京インターナショナルオーディオショウでの出会いから協業が実現し、製品を生み出すことができたのです。その経験も、今回に生きていると思いますね。
ものづくりにおいては、これまでももちろん、お客様のご意見や取引先様のご意見を頂戴しながらやってきました。そうしたさまざまな経験は、製品にノウハウとして組み込まれています。ご縁は大切にしなければならないとあらためて強く感じました。
我々自身もPD-191Aの開発を通じて、今までとは違う視点でものを見られるようになったと思います。当社はどちらかというと、ここ20年から30年は、デジタル製品とアンプ製品のものづくりに注力してきましたし、開発の立場からすると、アナログよりもデジタルの方がSNのよさやノイズのなさといった点で有利という考えがあったと思います。
しかしアナログプレーヤーのPD-191Aでここまでの表現力を得られたことで、アナログのものづくりのノウハウがさらに蓄積できました。今開発の担当者は、アナログに対して大変力を入れています。これが次の製品にもどんどん活かされていくことになりますね。
ーー これまでも困難な状況が続いてこられたと思いますが、商品の供給の部分について昨今の状況はいかがでしょうか。
末吉 部品やICの調達では、納期の見通しができるようになったものもありますが、いまだに見通しの悪いものもあり、昨今の状況は総じてこれまでとあまり大きくは変わりません。供給についてご迷惑をおかけしている部分は、お客様とお取引先様になんとかご理解をいただいているところです。
ーー 一方でイベントなどが復活し、お客様が商品に触れる機会は増えましたね。
末吉 先日は東京インターナショナルオーディオショウを開催することができましたし、事前予約制で多くの方にご来場いただきました。お客様の熱いご期待に接することができ、ありがたいことと思っております。
また円安の影響もあるかもしれませんが、日本の製品を海外で販売したいという代理店の方も多くご来場され、いいアピールの場になったかと思います。海外のお客様から見れば、日本のグレードの高い製品を入手しやすくなっている環境で、我々が活躍できる機会は広がっていると思います。
リアルイベントでお客様に実際にご体験いただくのがプロモーションの基本だと思います。しかしそれを補間する意味でも、ネットも活用していかなければと考えます。リアルとネットの両輪で、お客様に提案して参ります。
ーー これからの展開も楽しみですね。東京インターナショナルオーディオショウでは、ネットワークトランスポートも出展されていました。
末吉 来年の目玉としては、フラグシッププリアンプの「C-10X」を筆頭に挙げたいと思います。パワーアンプの「M-10X」の対をなすもので、春頃に登場する予定です。
ネットワークトランスポート「NT-07」は、想定以上に注目していただきました。音楽を聴くためのメディアはいろいろありますので、アナログもデジタルも、ストリーミングも含めて、すべてのメディアに対応できるようにするのが、我々の使命だと考えております。ぜひご期待ください。
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