公開日 2018/12/31 09:30
ヒントはロシアの装飾品 ー CHORDが小型かつ美しいオーディオ製品を手がける理由
J・フランクス氏/R・ワッツ氏に話を聞く
11月16日から18日に開催された「2018 東京インターナショナルオーディオショウ」(TIAS 2018)に合わせて、CHORD ElectronicsのCEOであるジョン・フランクス氏、DAC開発を手がけるロバート・ワッツ氏が来日した。今回、TIASで披露された最新製品への取り組み、さらには同社の製品開発における姿勢、世界のオーディオ市場に対する見解までを両氏に伺うことができた。
■小型で精緻なボディに最上の音を湛えたCORAL。ヒントはロシアの装飾品にあった
CHORD製品を輸入するタイムロードのブースでは、この12月から国内投入される新製品が披露された。旗艦DAC「DAVE」と対になるパワーアンプ「Etude」、デスクトップでDAVEに迫るサウンドを提供することを狙ったDAC/ヘッドホンアンプ「Hugo TT 2」、Hugo TT2と同サイズの筐体にBlu Mk2と同等のアップサンプリング技術を備えた“アップスケーラー”「Hugo M Scaler」の3機種だ。
いずれのモデルもCHORDならではの独創的なデザインのコンパクトボディに、同社の技術を凝縮し、フルサイズモデルを凌駕するサウンドと性能を備えている。こうしたアプローチは重厚長大なハイエンドオーディオとはある意味で対極にあるが、DAVEをはじめそのサウンドがオーディオファイルの間で最高の評価を得ていることはご存じの通り。さらに驚くべきは、CHORDが1999年に発売した「DAC64」の時点でこうしたスタイルを完成させていたことだ。
各製品の詳細については、すでに各製品のニュース記事や、今年夏に先行して実施された製品発表会レポートでもお伝えしている。
今回改めて伺いたかったのは、近年のポータブルオーディオやデスクトップオーディオを予見したような同社のスタイルは、いかにして実現したものなのかということだった。ジョン・フランクス氏はその端緒について語ってくれた。
DAC64やそれに先行したフォノイコライザー「Symphonic」からスタートし、現在ではDAVEやBlu MKII、そして今回登場した「Etude」などを擁するCORALシリーズは、同社のフラグシップ・シリーズだ。いずれのモデルも曲線を取り入れた印象的な意匠のアルミ削り出し筐体を備えている。サイズは幅約34cm×奥行き約15cmで、専用スタンドに重ねて設置することができる。
フランクス氏によれば、このCORALシリーズの直接のインスピレーションになったのは、「インペリアル・イースター・エッグ」(英語圏ではFabergé egg)と呼ばれるロシアの装飾品なのだという。90年代に世界中のオーディオショウに参加するために各国を飛び回っていたジョン・フランクス氏は、偶然にもロシア国内の博物館でこの有名な装飾品を目にした。
イースターエッグとは復活祭を祝う際に用いる表面を飾り付けた卵のことだが、インペリアル・イースター・エッグはその名の通り、ロシアの皇帝に納めるために作られたもの。表面には宝石や金を用いた精緻な装飾が施されており、その美しさで知られている。
「このインペリアル・イースターエッグのように、小さいながら精密で美しく、持ち主に愛でられるようなオーディオ機器を作りたい」。ジョン・フランクス氏はそう考えて、インスピレーションをCORALシリーズへと具現化した。建築が好きでそれをアンプのデザインのモチーフにしていたという同氏らしいエピソードだ。そして、そのコンパクトな筐体に回路も技術も集積して、音質も最高のものを提供することを目指したのがCHORDならではと言える。
■ヘッドホン祭で見たファンから衝撃を受けて「Hugo」を開発
今回披露されたHugo TT 2やHugo M Scaler、日本では現時点で未導入のパワーアンプ「TTOBY」は、ポータブルDAC/ヘッドホンアンプ「Hugo」をデスクトップ用途へと発展させたラインナップである。
HugoはCHORDにとって大きな転換点になったとジョン・フランクス氏もロバート・ワッツ氏も口を揃えるが、Hugoが生まれたきっかけは、フジヤエービックが主催する「ヘッドホン祭」だったという。来日してヘッドホン祭の会場を訪れたフランクス氏は、若者達がポータブルプレーヤーやDACを重ねて持ち歩く姿に衝撃を受けたと語る。そして、彼らが携帯するようなサイズで、最高峰のものを作りたいと考えた。
当然ながらHugoのサイズは、CORALのそれよりさらに小さく、そしてポータブル用途だ。開発が難しいことは予想できたが、小型化は可能だと直感していたという。フランクス氏とワッツ氏は彼ら自身が今ふり返っても驚くという速さ、わずか1年足らずでHugoを完成させた。Hugoが実現したWTAフィルターのタップ数(デジタルフィルターの基本要素をタップと呼び、タップ数が多いほど高い再現性が実現できるとする)は当時の同社フラグシップを凌駕するものとなった。Hugoは驚きと賞賛を持ってポータブルオーディオの世界に迎えられ、さらなる小型化と低価格を実現したMojoと共にそのCHORDはポータブル領域においても一角を担うことになった。
このHugoの成功を、CHORDはこれまで手がけていたハイエンドオーディオにフィードバックさせることにも成功した。ロバート・ワッツ氏は「Hugoの開発成果があったからこそ、DAVEを実現させることができたのです」と語る。DAVEに続いて、Hugoをデスクトップサイズとして、DACとしてもヘッドホンアンプとしてもさらに進化させたHugo TTも登場した。そして今回、このHugo TTが「2」へと進化を果たした。
■小型で精緻なボディに最上の音を湛えたCORAL。ヒントはロシアの装飾品にあった
CHORD製品を輸入するタイムロードのブースでは、この12月から国内投入される新製品が披露された。旗艦DAC「DAVE」と対になるパワーアンプ「Etude」、デスクトップでDAVEに迫るサウンドを提供することを狙ったDAC/ヘッドホンアンプ「Hugo TT 2」、Hugo TT2と同サイズの筐体にBlu Mk2と同等のアップサンプリング技術を備えた“アップスケーラー”「Hugo M Scaler」の3機種だ。
いずれのモデルもCHORDならではの独創的なデザインのコンパクトボディに、同社の技術を凝縮し、フルサイズモデルを凌駕するサウンドと性能を備えている。こうしたアプローチは重厚長大なハイエンドオーディオとはある意味で対極にあるが、DAVEをはじめそのサウンドがオーディオファイルの間で最高の評価を得ていることはご存じの通り。さらに驚くべきは、CHORDが1999年に発売した「DAC64」の時点でこうしたスタイルを完成させていたことだ。
各製品の詳細については、すでに各製品のニュース記事や、今年夏に先行して実施された製品発表会レポートでもお伝えしている。
今回改めて伺いたかったのは、近年のポータブルオーディオやデスクトップオーディオを予見したような同社のスタイルは、いかにして実現したものなのかということだった。ジョン・フランクス氏はその端緒について語ってくれた。
DAC64やそれに先行したフォノイコライザー「Symphonic」からスタートし、現在ではDAVEやBlu MKII、そして今回登場した「Etude」などを擁するCORALシリーズは、同社のフラグシップ・シリーズだ。いずれのモデルも曲線を取り入れた印象的な意匠のアルミ削り出し筐体を備えている。サイズは幅約34cm×奥行き約15cmで、専用スタンドに重ねて設置することができる。
フランクス氏によれば、このCORALシリーズの直接のインスピレーションになったのは、「インペリアル・イースター・エッグ」(英語圏ではFabergé egg)と呼ばれるロシアの装飾品なのだという。90年代に世界中のオーディオショウに参加するために各国を飛び回っていたジョン・フランクス氏は、偶然にもロシア国内の博物館でこの有名な装飾品を目にした。
イースターエッグとは復活祭を祝う際に用いる表面を飾り付けた卵のことだが、インペリアル・イースター・エッグはその名の通り、ロシアの皇帝に納めるために作られたもの。表面には宝石や金を用いた精緻な装飾が施されており、その美しさで知られている。
「このインペリアル・イースターエッグのように、小さいながら精密で美しく、持ち主に愛でられるようなオーディオ機器を作りたい」。ジョン・フランクス氏はそう考えて、インスピレーションをCORALシリーズへと具現化した。建築が好きでそれをアンプのデザインのモチーフにしていたという同氏らしいエピソードだ。そして、そのコンパクトな筐体に回路も技術も集積して、音質も最高のものを提供することを目指したのがCHORDならではと言える。
■ヘッドホン祭で見たファンから衝撃を受けて「Hugo」を開発
今回披露されたHugo TT 2やHugo M Scaler、日本では現時点で未導入のパワーアンプ「TTOBY」は、ポータブルDAC/ヘッドホンアンプ「Hugo」をデスクトップ用途へと発展させたラインナップである。
HugoはCHORDにとって大きな転換点になったとジョン・フランクス氏もロバート・ワッツ氏も口を揃えるが、Hugoが生まれたきっかけは、フジヤエービックが主催する「ヘッドホン祭」だったという。来日してヘッドホン祭の会場を訪れたフランクス氏は、若者達がポータブルプレーヤーやDACを重ねて持ち歩く姿に衝撃を受けたと語る。そして、彼らが携帯するようなサイズで、最高峰のものを作りたいと考えた。
当然ながらHugoのサイズは、CORALのそれよりさらに小さく、そしてポータブル用途だ。開発が難しいことは予想できたが、小型化は可能だと直感していたという。フランクス氏とワッツ氏は彼ら自身が今ふり返っても驚くという速さ、わずか1年足らずでHugoを完成させた。Hugoが実現したWTAフィルターのタップ数(デジタルフィルターの基本要素をタップと呼び、タップ数が多いほど高い再現性が実現できるとする)は当時の同社フラグシップを凌駕するものとなった。Hugoは驚きと賞賛を持ってポータブルオーディオの世界に迎えられ、さらなる小型化と低価格を実現したMojoと共にそのCHORDはポータブル領域においても一角を担うことになった。
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