<HIGH END>「あらゆるスピーカーをコントロール可能」CHORDのジョン・フランクス氏が語るUltimaアンプ技術の核心
山之内 正CHORD(コード)はウィーン・ハイエンド2026で3つの重要な製品を公開した。ULTIMAシリーズのエントリーに位置付けられるステレオパワーアンプ「ULTIMA 7」、カスタムインストレーション市場向けのスリムなパワーアンプ「BLADE」、そしてアップスケーラー「QUARTET」という強力な陣容だ。
それらの技術詳細について、CHORDの創業者でありCEOであるジョン・フランクス氏に話を聞いた。
“縦型MOSFET”で小型化と大出力を実現
2機種のパワーアンプは同社創設者のジョン・フランクスが難度の高い課題にあえて挑戦した自信作で、今回のショウでデビューを果たしたばかり。発売は今年9月を予定しているという。一方のQUARTETは昨年すでに公開済みだが、今夏以降、いよいよ正式発売となる。
ULTIMA 7はULTIMA PRE 3とデザインを揃えたスリムな筐体を採用しながら、出力素子に縦型MOSFETを用いることで、チャンネルあたり135W(8Ω)の出力を実現したことが技術のハイライトだ。新規採用のMOSFET素子についてフランクスはこう語る。
「MOSFETには横型と縦型の2種類があります。横型はシリコン上に格子状のゲート構造を持ち、上から見るとワッフルのような形状になっています。横型のMOSFETはオン・オフの立ち上がりカーブが穏やかで、オーディオ用途として設計しやすいことが長所です。
一方、横型MOSFETには大電流を流しにくいなどの課題もあるため、今回、私は縦型のMOSFETを使うことにしました。横型MOSFETは水平方向に電流が流れますが、縦型MOSFETは縦方向に流れるという違いあります。横型MOSFETのようにチップ表面に格子を形成する必要がなく、チップを小型化できることも有利な点で、構造上の特徴により、大電流を流せるにもかかわらず、サイズは小さく設計できるのです」
横型(ラテラル型)のMOSFETでは1素子あたり最大16アンペアの電流が流せるのに対して、サイズが同じ縦型MOSFETでは最大320アンペアの大電流を流すことができるという。一方、縦型MOSFETはオン・オフ時の立ち上がり・立ち下がり特性が非常にシャープで制御が難しく、アンプの増幅回路に導入するのはきわめて難しいという。
「私がUltima技術と名付けた、デュアルフィードフォワード・エラー補正技術をアンプに組み込むことで、出力ステージに縦型MOSFETを使うことができるようになったのです。出力ステージを連続的にモニターすることで、すべての動作をコントロールすることができます。
そのおかげで道は開かれ、十分な出力を得るために10個のMOSFETが必要だったのを1個で実現できるようになったのです。私たちの大型アンプと同じ特長を持つ音を小さなパッケージで実現できるようになりました」。
「あらゆるスピーカーをコントロールする能力がそなわる」とフランクスは自信を見せる。「縦型MOSFETを使うことには実は半信半疑だったのですが、その難しい課題にチャレンジし、成果が得られたことに満足しています」と語る。
ULTIMA 7と同様、 カスタムインストレーション市場向けのBLADEもクラスG回路を採用。窒化ガリウム(GaN)素子を用いることで、110W(8Ω)という外観からは想像できない大出力を実現している。
「プロ市場だけでなく、オーディオファンの中にもミニマムなソリューションを求める方がいるので、このトポロジーの採用に踏み切ったのです。クラスGアンプは複数の電源レールが必要なので、クラスABアンプに比べると電源回路が複雑になりますが、得られるメリットの方が大きいと考えています」(フランクス)。
最近完成した新社屋でアンプ開発のプランを練るのがなによりも楽しいと語るフランクスの言葉通り、CHORDのチャレンジはこれからも途切れることなく続いていくことになりそうだ。
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