公開日 2024/09/01 07:00

災害大国日本、“もしも”に備えて考えておきたい「オーディオファン的 防災ラジオの選び方」

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第277回】

5.イヤホン一体型ではなく外部イヤホン接続型であること


ポケットラジオの中には、掃除機の電源ケーブルのようなコード巻取り式でイヤホンを内蔵するタイプの製品もある。それはそれで便利なのだろう。

しかしポータブルオーディオ好きであれば、たとえ災害避難時であろうともお気に入りのイヤホンを持って避難するはず。それに耳慣れなくて違和感のあるイヤホンでラジオを聴けば、その余計な違和感がちょっとしたストレスになってしまうかもしれない。

だが耳になじんだイヤホンならそんな心配もないわけだ。自分にとって着け疲れない装着感で聴き疲れない音調で耐久性等の信頼感もある、そんなイヤホンを防災バッグに備えておきたい。

安定安心のShure SE215のイヤーピースとケーブルを装着感重視で交換。USB-C接続スティック型DAC/アンプとまとめてパッキング

ということで、そういったイヤホンを普通に接続して使える、外部イヤホン端子を搭載した製品を選んでおきたい。ただし、イヤホン端子搭載というスペック記載さえあれば安心なわけではない。むしろここからが要注意だ。


6.外部イヤホン端子が3.5mmであること


まずポケットラジオにおいては、2.5mm端子採用の製品も無視できない程度の割合で存在する。2.5mmといってもバランス駆動対応なわけではない。おそらくは単に小型化のためだ。

その2.5mmジャックのラジオに3.5mmプラグのイヤホンを接続しようとすれば変換プラグや変換ケーブルが必要になる。防災バッグの中で邪魔になるサイズのアイテムではないが、接続が煩雑になるのは嬉しくない。有線イヤホンの弱点、ストレスになりがちな要素といえばケーブルの取り回しなのだ。そのストレスを増す可能性のあるものは排除しておきたい。ポタオデ好きの防災ラジオ選びではイヤホン端子3.5mmは必須! と強くおすすめする。

3.5mmプラグを普通に直で接続できる。そんな当たり前の快適さ

だが3.5mmイヤホン端子搭載ならそれでOKではない。いちばんわかりにくい罠が最後に残っている。


7.ステレオイヤホンの左右両方から音が出ること


ラジオ放送はモノラルから始まっており、現在でもモノラル受信のみ対応のラジオ受信機も珍しくない。そして防災ラジオとしてはそれで十分でもある。

しかしオーディオファンお気に入りのイヤホン、当然それは両耳に装着するステレオイヤホンだが、それを使うにあたっては、そのモノラル放送がイヤホン端子からどう出力されるかというのが大きなポイントになる。主なパターンは以下の通り。

ステレオ受信対応機でイヤホン端子もステレオ出力→ステレオ放送もモノラル放送もちゃんとステレオイヤホンの左右両方から聞こえる
モノラル受信のみ対応機だがイヤホン端子はステレオイヤホンにも配慮された仕様→同じくちゃんとステレオイヤホンの左右両方から聞こえる
× モノラル受信のみ対応機でイヤホン端子もモノラルイヤホンへの出力しか想定していない仕様→ステレオイヤホンを接続すると片方の耳の側からしか音が聞こえない。


では、片方の耳の側からしか聞こえないと何が問題なのか。前提として、片耳モノラルイヤホンが付属するラジオも多いことからわかるように、ラジオ聴取では「片耳イヤホンでのながら聞き」スタイルも一般的だ。そして避難時にも、周囲の様子を把握しながらの「ながら聞き」は有効だろう。

その際、イヤホンの左右どちらか片方からしか音声が聞こえない状態だと、ユーザーは左右どちらのイヤホンを耳に着けるかを好きに選べなくなる場合がある。右耳の方が聴きやすいからそちらに装着したい、左耳に装着した方がケーブルの取り回しがしっくりくるからそうしたい、右耳が疲れたから左耳に着け替えたい。片側からしか音声が聞こえなくて、かつイヤホンが左右を入れ替えての装着が難しい形状だと、そういうときにちょっと厄介なのだ。

リケーブル機構があればそれで左右を入れ替えて対応できるが、すると今度はスマホやDAPで音楽を聴くとき左右反転に。そのたびに左右の接続を入れ替えるのも面倒だろう。

であるので、イヤホン端子からの出力のステレオイヤホン対応具合も、オーディオファンの防災ラジオ選びにおいては見落としたくないところだ。

今回筆者が選んだRAD-P300Sは当然、「外部イヤホン端子搭載」「3.5mm」「ステレオ受信&ステレオイヤホン対応」となっており、イヤホン周りの条件も全て明快にクリア。

さてしかし面倒なことに、

モノラル受信のみ対応機だがイヤホン端子はステレオイヤホンにも配慮された仕様→同じくちゃんとステレオイヤホンの左右両方から聞こえる


パターンは仕様として特に記載されていないことも多い。そういった配慮がされていてもいなくても、どちらもただ「3.5mmイヤホン端子(モノラル)」の記載だけだったりするのだ。説明書には詳しく記載されている場合もあるので、説明書がダウンロード可能かを確認してみるとよいだろう。

ちなみに先ほど比較対象に持ち出したRAD-P136Nはモノラル受信&モノラル端子で、説明書には「本機のイヤホン端子はモノラル出力用です。ステレオタイプ(両耳型)のイヤホンを接続すると、片側のイヤホンからだけ音声が出力される場合があります」との記載あり。実際に試してみたところ、筆者の手近にあったイヤホンいくつかとの組み合わせでは、モノラル音声を問題なく左右両側から出力してくれた。

なお参考までに、モノラルジャックにステレオプラグを絶妙に「半挿し」するとステレオイヤホンの両耳に音が出力されるという裏技も、あるにはある。

絶妙に半挿し

普通にしっかり挿し込んだ状態

しかし"絶妙な"半挿しが条件なので、ちょっと身を動かしてケーブルを引っ張ってしまったりするだけでその絶妙な状態が崩れ、片耳状態に逆戻りしたりしがち。この裏技に頼る前提での製品選びはやめておいた方がよい。


8.防災時しか使わないものなので手頃な価格であること


これについては何というかもう逆に、高価で高性能なポケットラジオというものがほぼ絶滅してしまっていた。例えばソニー「SRF-T355」も、ヨドバシ.comでは「販売終了商品 販売終了時の価格:¥8,620(税込)」となっている。そして現在も販売しているネットショップではその3倍ほどのプレミアム価格だ。それはさすがに手を出しにくい。

対してRAD-P300Sは前述のように2,000円前後と、「とりあえず買っとくか」でいけちゃうお値段。ありがたい。

■趣味要素を持ち込んで楽しく準備!



以上が筆者が防災ラジオの製品選びで重視したポイントだ。特にイヤホン端子周りのあーだこーだなどは、一般の方々からすれば「製品に付属のイヤホンを使えばいいだけでしょ」で終わってしまう話であることは否めない。

であるが災害を想定してそれに備えるなんて、基本的には楽しいことではないのだ。だからこそせめて、そこにちょっとした趣味要素を持ち込んで製品選びを楽しんだっていいじゃないか。ラジオに限らず防災アイテム全般、そうやって選んでみるのもありなのではないだろうか。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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