現代に蘇った“ウルトラセブン”を徹底聴き比べ!特撮&オーディオファン歓喜のイベントレポート
1979年にLPで発売された「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」。そのサウンドが2025年12月に新リマスターとしてリリースされたことを記念して、「ウルトラ」音楽の魅力を改めて体験してもらおうという試聴会が、秋葉原のオリオスペックで開催された。
アートワークも含め当時の姿を完全復刻
「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」は、「ウルトラマン」の音楽を担当した宮内國郎氏と、惜しまれながらも2024年にこの世を去った冬木 透氏による「ウルトラセブン」の楽曲を収めた名盤だ。
昨年末、この作品がキングレコードからSACDハイブリッド盤で登場した。アートワークに使用される写真を含め、デザインも当時の姿を完全復刻、当時のオリジナル・アナログテープをマスターに使い、現代技術によるリマスタリングが施されている。
同時に音楽ストリーミングサービスのQobuzでもハイレゾ音源(192kHz/24bit、ステレオ)の配信をスタート、SACD、CD、ハイレゾという様々なフォーマットで楽しめるようになっている。
その「ウルトラ」音楽の魅力を体験してもらおうという試聴会が、秋葉原のオリオスペックで開催された。同社はオーディオPCやサーバー・ワークステーション、ストレージ(さらにお酒も)などを取り扱っているセレクトショップだ。
国産オーディオ機器で聴く最新リマスター
同社では一昨年の秋に「『伊福部昭SF特撮映画音楽の夕べ』実況録音盤」をLPとSACDで聴く試聴会を開催しているが、その企画が特撮ファンに限らずオーディオ愛好家にも評判だったそうで、今回はオーディオマニアではない方にも、国産ハイエンドオーディオ機器で「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」がどんな風に楽しめるかを知ってもらいたいという思いで企画を進めたとのことだ。
試聴会は二部構成で、どちらも事前申し込み・抽選制だったが、かなりの応募があったそう。特撮ファン、音楽ファンがいかにこのタイトルに関心を持っているかが伺える。
司会は、『「伊福部昭SF特撮映画音楽の夕べ」実況録音盤』試聴会と同様にオリオスペックの佐藤智将氏とキングレコードの中山良輝氏のおふたり。中山氏は20代という若さながら「ウルトラ」シリーズにも造詣が深く、今回もキングレコードに保存されている当時の貴重なレコードを多数発掘、会場にディスプレイしていた。
さらにゲストとして元キングレコード・ディレクターの藤田純二氏、リマスターを担当したキング関口台スタジオ エンジニアの辻 裕行氏、キングレコード ディレクターの松下久昭氏も登壇、1979年のLPレコード制作時の貴重な裏話や今回のSACD(DSD)リマスターの音作りについての解説も聞けるとのことで、こちらを楽しみにしていたファンも多かったかもしれない。
メディアによる貴重な聴き比べ
第一部は、「『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』から始めるストリーミング・オーディオ入門」と題し、話題のストリーミングサービスQobuzを中心に試聴が行われた。
上記の通り本作は192kHz/24bitのハイレゾで配信が行われている。今回はストリーミングサービスでの音質差や、物理メディアの音と聴き比べようという狙いだ。
さらに第二部は、「『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』制作当時〜最新リマスタリングの証言&試聴比較」とのことで、第一部以上に深い内容のイベントが展開された。
こちらは物理メディアが中心ということで、1979年のLPと今回発売されたSACD/CDハイブリッド盤のCDレイヤー(44.1kHz/16bit)、SACDレイヤー(DSD2.8MHz)、PCMハイレゾダウンロードファイル(192kHz/24bit)の違いを検証している。
ちなみに今回準備されたオーディオ機器は以下の通り。オリオスペック佐藤氏のこだわりもあって日本ブランドの製品でシステムを構築、LPからハイレゾ、SACDまで最高の音質で楽しませてくれた。
アナログテープからていねいにリマスター
イベント各回の冒頭では、藤田氏からLP「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」がどのようにして誕生したかについての紹介があった。
そもそもの始まりは、1978年に発売されたレコード「ウルトラマン大百科!」だったそうだ。こちらは「ウルトラ」シリーズのテーマ曲を収めた企画盤だが、それまでこういったレコードがなかったこともあり、予想を超える人気を集めたという。
そこから特撮作品のレコードにニーズがあることが認識され、オーケストラで作品中の音楽を演奏する「交響詩」というスタイルが企画されたとのことだ。
さっそく宮内氏、冬木氏に交響曲として編曲してほしい旨を打診したところ、「おふたりとも快く了承してくれました」(藤田氏)とのことで、1978年12月の収録が実現した。
当日の収録では16トラックのアナログレコーダーが使われ、後日スタジオで2チャンネルマスターテープ(6mm)を仕上げている。ここについてはマスターコントロールファイル(制作過程を記録したメモ)も保存されており、そこには当時の藤田氏のサインも残っていた。
テープの保存状態もよかったようで、先述の通り、今回のSACD/CDにもこの2チャンネルマスターテープが使われている。
「磁性体の大きな剥離などはなかったです。ちょっとベタつきが見られたので、オーブンで2時間ほど焼いて定着させたところ、問題なく再生できました」とマスタリングを担当した辻氏も解説してくれた。
デジタルフォーマットのすべてを同じ工程で制作
今回はこのテープをスチューダーのA820で再生、ドルビーデコーダーのmodel 363を通し、Bettermakerのマスタリングイコライザー、アバロンデザインAD2077マスタリングイコライザー、マセレックの3バンドコンプレッサーで音調整をした後、EMMラボのADC8MK4からDAWのSADIEに入力してDSD 2.8MHzファイルを作成したそうだ。ここでの基本的な工程は、「『伊福部昭SF特撮映画音楽の夕べ』実況録音盤」と同じだ。
なおSADIEではDSD2.8MHzファイルを作成する際に、44.1kHz/24bitのリニアPCMも出力されるので、CD用にはこのデータを44.1kHz/16bitに変換している。Qobuzの音源はDSD 2.8MHz音源を、ピラミックスを使って192kHz/24bitに変換したという。
つまり今回発売されたSACD/CDハイブリッド盤のSACDレイヤーとCDレイヤー、さらにハイレゾ配信の音声はすべて同じマスターテープから制作されているわけで、その上でフォーマットによる音質・音色の違いを楽しむことができる環境が整ったことになる。
そんなSACD/CDハイブリッド盤について、佐藤氏からなぜこのタイミングで発売されたのかという質問があった。
ここについては松下氏から、「冬木先生がご存命であれば、2025年に90歳になられたので、生誕90年記念企画として『交響詩ウルトラセブン』の発売を考えていました。宮内先生も2026年で没後20年ということで、偉大な作曲家二人への追悼盤の想いも込めました 」とのことだった。
フォーマットの個性をしっかり引き出す
さて肝心の「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」の音質はどうだったのか。第一部ではCDクオリティのロスレス配信とQobuzによるハイレゾ配信の比較試聴が行われた。楽曲は、来場者の希望(多数決)により9曲目の「ウルトラホーク発進」に決定。
CDクオリティのロスレス配信でも、一般的なスマホ&イヤホンによる再生に比べるとかなり高品質で、管楽器の微細なニュアンスも感じ取れる。配信でもここまでの音質が再現できることが驚きだ。
しかしQobuzでのハイレゾ配信に切り替えると、オーディオPC以降すべて同じシステムを使っているにも関わらず(音量も同じ)、音の表情、空間の再現性に大きな違いがあった。
一聴してレンジが広く、高域の伸びや低域の充実度がかなり違う。テンポもさらによくなって、ウルトラホークが二子山基地から出撃するシーンが目に浮かぶようだ。
続く第二部では、物理メディアにフォーカスした試聴が続いた。2曲目「科学特捜隊の歌」をCDレイヤーとSACDレイヤーで聴き比べると、こちらもほとんどの参加者が音の違いを感じ取れるほどの違いがある。
CDレイヤー再生では音にメリハリがつく方向で、全体的にクリアな、華やかなサウンドに感じられる。
これに対してSACDレイヤーは、一聴するとCDレイヤーよりも大人しい印象ながら、聴き込んでいくと細かな情報が多く含まれている。空間の密度感も高く、コンサート会場の音に包まれている気分に浸れる。
さらにQobuzからダウンロードしたハイレゾ音源(192kHz/24bit リニアPCM)と、SACDレイヤー(DSD 2.8MHz)の頂上対決も行われた。
両音源とも音のレンジ感や空間を埋め尽くす密度感はさすがのクオリティで、音楽鑑賞用として充分楽しめる。違いとしては、リニアPCMはCDと同様に音の輪郭が明瞭でコントラストのはっきりした傾向で、SACDレイヤーはよりアナログ的で厚みを感じさせる点くらいだ。
この差はフォーマットの個性を、準備されたオーディオシステムが十全に引き出しているということで、どちらが優れているといったことではないだろう。それくらい「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」の新しい音源は高い品質を実現している。
47年前に録った音が、情報量豊かに蘇る
ゲストの面々もそのパフォーマンスに満足しているようで、イベントの感想を聞かれて以下のようにコメントしてくれた。
「50年近く前に録った音が、より細かく、楽器の特性まで分かるように聴こえたのは、素晴らしいことだと思います。マスターテープの中に入っている情報量を今の技術でどれだけ引っ張り出すかによって、こんなに聴いていて心地いいなって感じになるわけで、今日は非常に楽しい体験をさせていただきました」(藤田氏)
「曲が良くて、演奏が良くて、きっちり録音されていたら、50年経ってもこういう風に楽しんでいただけるっていうことですね。私もクラシック作品をたくさん録音していますけど、50年後もこういう形で聴いてもらえるように頑張らなきゃいけないなって、新たに感じました。本当皆さん方のおかげです。ありがとうございました」(松下氏)
「会場の裏で聴いていたんですけど、音の違いがはっきり分かって面白かったです。この音源をマスタリングスタジオ以外で聴くのは多分始めてですが、機器の性能もあって素晴らしい音だと思いました。仕事では、古い音源を配信用にリマスターする作業がメインになってきています。それも踏まえて、このような音源を、若い人たちにも聴いてもらえる環境が整ってきているのはいいことだという感じがしました」(辻氏)
前回好評を博した「『伊福部昭SF特撮映画音楽の夕べ』実況録音盤」と同様に、「交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン」もオーディオ鑑賞を充分楽しめる品質を実現している。
「ウルトラ」シリーズの音楽が好きな人や、特撮愛好家の皆さんは、配信やSACD/CDハイブリッド盤でその実力を体感していただきたい。より身近で新しいオーディオ体験を楽しめるはずだ。
若い世代の来場者は、蘇った1979年サウンドをどう聴いた?
今回のイベントには20代から60代まで、幅広い年代層の皆さんが詰めかけていた。その中で第二部に参加していた30代の若者の感想を聞くことができたので紹介したい。
「小さな頃から『ウルトラマン』や『仮面ライダー』シリーズのファンでした。今日はその中の貴重な音源が聴けるということで参加させてもらいました。冒頭の、1979年に発売されたオリジナルレコードとSACDとの聴き比べで気持ちを持っていかれました。
今回のイベントのために揃えたという高級オーディオ機器だから再現された部分もあるのでしょうが、47年も前の音源をここまで解像感が高くリマスターできるんだと、と感心することしきりでした。
また、イベントの最後にエンジニアさんが話していた、『当時の録音精度の高さ』という言葉から、物理メディアに記録することの重要さを改めて思い知らされました」
【イベント当日の試聴機材一覧】
アンプ:SOULNOTE A-2 ver.2
SACD/CDプレーヤー:SOULNOTE S-3 ver.2 Reference
ZERO LINKトランスポート:SOULNOTE B-3
フォノEQ:SOULNOTE E-2 ver.2
スピーカー: TAD EVOLUTION TWO (TAD-E2-WN)
アナログプレーヤー:Technics SL-1200G
カートリッジ:Phasemation PP-200
ヘッドシェル:Phasemation CS-900A
オーディオPC:OLIOSPEC CANARINO FILS9
電源ユニット:OLIOSPEC CANARINO DC POWER SUPPLY 12V
















































